Rita Nazareth
- PCEインフレの抑制示され利下げ観測補強-市場に一定の安心感
- 円は一時150円99銭まで下落-米2年債利回りは10月以来の4%割れ
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28日の米株式相場は反発。トランプ米大統領とウクライナのゼレンスキー大統領の会談が口論に発展したことで、地政学情勢を巡る懸念でボラティリティーが高まったが、終盤に上値を伸ばして引けた。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 5954.50 | 92.93 | 1.59% |
ダウ工業株30種平均 | 43840.91 | 601.41 | 1.39% |
ナスダック総合指数 | 18847.28 | 302.86 | 1.63% |
S&P500種株価指数は、日中は前日の終値を挟んで上げ下げを繰り返す展開だった。ホワイトハウスでのトランプ氏とゼレンスキー氏の会談は、予定されていた資源取引が署名に至らず、首脳会談後の記者会見も中止となった。トランプ氏はその後、「平和を受け入れる準備ができたら戻ってくればいい」とソーシャルメディアへの投稿で突き放した。
関連記事:米ウクライナ首脳会談は決裂、資源取引で署名至らず-激しい口論の末
UBSグローバル・ウェルス・マネジメントのデービッド・レフコウィッツ氏は「強気相場は続いていると考える」と指摘。「しかし政策の不確実性や貿易摩擦を要因に、今年はボラティリティーが高まる公算が大きいとも当社は警告してきた。従って、短期的なヘッジを検討する価値があると強調してきた」と続けた。
インフラストラクチャー・キャピタル・アドバイザーズのジェイ・ハットフィールド氏は、市場は米国・ウクライナのニュースで揺れたが、トランプ氏は和平を強要することが示唆されるとし、それはプラスだと分析した。
MUFGセキュリティーズアメリカの米国マクロ戦略責任者ジョージ・ゴンカルベス氏は、過去1週間のように大きな動きがあった後は「常にダメ押しの材料が出てくる。今回は地政学だ」と話した。
ミラー・タバクのチーフ・マーケット・ストラテジスト、マット・メイリー氏は「全般的に不透明だとしか言いようがない」と指摘。「ホワイトハウスからありとあらゆる発言が出てきて、市場に影響を与えている。投資家が短期的な見通しに多くの確信を持つのは難しい」と語った。
EPウェルス・アドバイザーズの投資マネジングディレクター、アダム・フィリップス氏は「目下の市場は脆弱(ぜいじゃく)だ」と指摘。「市場の動きに不安が明確に表れており、多くの顧客からも不安の声が聞かれている。この日の相場は方向性を見いだせていないが、われわれは今後のボラティリティー上昇に身構えている。増え続ける問題に関して明確性が出てくるのを待っているところだ」と述べた。
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朝方に発表された1月の米個人消費支出(PCE)統計では、物価面で明るい兆しが見られた。連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ指標として重視するPCEコア価格指数が小幅な伸びにとどまった。
関連記事:米PCE統計、個人支出が4年ぶり大幅減-価格指数は小幅な伸び (2)
国債
米国債は上昇。短期債利回りは昨年10月以来の4%割れとなった。米インフレが抑制されていることがこの日のデータで示唆され、利下げ観測が高まった。
国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 4.49% | -4.4 | -0.98% |
米10年債利回り | 4.20% | -5.6 | -1.30% |
米2年債利回り | 3.98% | -6.6 | -1.64% |
米東部時間 | 16時56分 |
10年債は月間では昨年7月以来の大幅高となった。
米経済は1-3月(第1四半期)に大きく後退する見通しとなった。この日発表された2本の米経済統計で、個人消費の軟化と財貿易赤字の大幅な拡大が示され、これがアトランタ連銀の予測モデルであるGDPナウに反映された。
関連記事:米経済は大きく後ずさり、1.5%のマイナス成長を連銀予測モデル示唆
スワップ市場では7月までの0.25ポイント利下げが完全に織り込まれた。年末までに計66ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の利下げが実施されると予想されている。
RJオブライアンのマネジングディレクター、ジョン・ブレイディー氏は「これは初期的な数字であるということに注意を促したい」と指摘。1-3月国内総生産(GDP)は4月下旬に公表される。「それにもかかわらず、これを受けて2年債利回りは4%を割り込み、10年債利回りは4.24%を下回った」と述べた。
JPモルガン・アセット・マネジメントのポートフォリオマネジャー、プリヤ・ミスラ氏は「政策の不確実性を踏まえれば、これまでの金利の動きは完全に理にかなっている」と指摘。「相場が上昇を続けるには、最も重要な経済データで景気の減速が示唆される必要がある」と話した。
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外為
外国為替市場ではドル指数が上げ幅を拡大。トランプ米大統領とウクライナのゼレンスキー大統領の会談が口論に発展したことが背景。予定されていた両国の資源取引が署名に至らず、ユーロは下落した。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1298.12 | 3.79 | 0.29% |
ドル/円 | ¥150.59 | ¥0.78 | 0.52% |
ユーロ/ドル | $1.0375 | -$0.0023 | -0.22% |
米東部時間 | 16時56分 |
ドルは対円でも上昇し、一時0.8%高の1ドル=150円99銭まで買われた。
ドル指数は週間ベースでは今月初の値上がり。前日のトランプ大統領による関税発表がリスクセンチメントの重しになったほか、月末のフローもドルを支えた。
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バークレイズ・キャピタルの通貨ストラテジスト、スカイラー・モンゴメリー・コーニング氏は、関税によるリスクプレミアムが完全に「織り込まれている」わけではないと指摘。関税の発動延期や開始日程を巡り間違った情報が出るといったことがこれまでに起きたことを理由に挙げた。
ファンダメンタルズはドルに有利な状況が続いているため、「ドルをショートにするのはかなり難しい」とも同氏は述べた。
クリーブランド連銀のハマック総裁は、当局目標の2%を上回るインフレ圧力が続いても、利上げは想定していないと発言。将来の価格圧力期待は「なお安定している」との考えを示した。
2月の東京都区部消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)は2月、市場予想を下回る伸びにとどまった。ただ、日本銀行が追加利上げを検討するのを妨げる可能性は低そうだ。
日銀の内田真一副総裁は28日、経済・物価情勢の展望(展望リポート)で示す見通しが実現していく場合、それに応じて政策金利を引き上げ、緩和の度合いを調整していく考えに変化はないと指摘。衆院財務金融委員会で答弁した。
原油
ニューヨーク原油先物相場は2月に、月間で昨年9月以来の大幅下落となった。トランプ大統領が関税発動をちらつかせて貿易相手国に圧力をかけていることで、投資家のリスク選好姿勢が後退。ドル高が進行するとともに、エネルギー需要の見通しを曇らせていることが重しとなった。
トランプ氏は前日、カナダとメキシコからの輸入品に対して3月4日に関税を発動すると表明。中国からの輸入品に対しては関税を10%上乗せすると述べた。中国は対抗阻止を講じる意向を示す一方、メキシコは米国の関税を回避するため、中国への関税引き上げで米国に追随する姿勢を示した。
関連記事:メキシコ、新たな対中関税を排除せず-トランプ関税発動の回避に向け
原油価格は米国の強硬な通商政策や弱い経済指標により、6週連続で下落した。TDセキュリティーズの商品ストラテジスト、ダニエル・ガリ氏によると、アルゴリズム取引を行う商品投資顧問業者(CTA)が足元の悲観的な状況に乗じて、昨年12月下旬以来となる原油のネットショートポジション構築に動いている。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物4月限は前日比59セント(0.8%)安の1バレル=69.76ドル。週間では0.9%、月間では3.1%それぞれ下落した。
ロンドンICEの北海ブレント4月限は1.2%下げて73.18ドル。同限月はこの日が最終取引日。中心限月の5月限は72.81ドルに下落した。
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金
金スポット価格は続落。週間では今年初のマイナスとなった。最高値の更新が相次ぐなど急ピッチの値上がりが続いてきた反動で、足元では利益確定の動きが出ている。
トランプ大統領とウクライナのゼレンスキー大統領の首脳会談が決裂したことでドル高が進行。ドル建てで取引される金の割高感が強まった。前日もトランプ氏の対カナダ・メキシコなどの関税発言で、ドルが上昇。金相場の重しとなっていた。
金スポット相場はニューヨーク時間午後3時18分現在、前日比24.53ドル安の1オンス=2852.99ドル。ニューヨーク商品取引所の金先物4月限は前日比47.40ドル(1.6%)安の2848.50ドル。
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原題:S&P 500 Gets Late-Day Boost at End of Wild Month: Markets Wrap(抜粋)
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