米国とウクライナの首脳会談決裂で、世界中が混乱している。情報は錯綜し、なにが真実かわからない。ネットには「仕組まれた決裂」とのまことしやかな解説まで飛びかっている。気になったので覗いてみた。民主党の国会議員団とゼレンスキー氏の会談が首脳会談の前に仕組まれており、同氏はここで「署名はしないと確約した」とある。嘘か本当かわからない。あり得る話のようにみえる。そこがフェイクニュースの怖いところだ。これが事実でトランプ陣営が事前に知っていたとすれば、決裂は双方によって最初から仕組まれていたことになる。3日にトランプ政権は、ウクライナへの軍事支援を一時的に停止した。これは脅しか本気の圧力か、判断はつかない。ゼ氏は欧州首脳との会談に出席したあと本国に戻り、昨日から本気で米国との関係修復を図ろうとしている。これが実を結ぶのか、こちらも予測は不可能。
錯綜する情報はさておき、首脳会談の気になる点を再考してみた。問題の発言はトランプ氏から発せられた。首脳会談の最後の最後、喧嘩腰の口論が始まった直後あたりである。「あなたは何百万という人々の命を賭けの対象にしている。第3次世界大戦が起きるかどうかを賭けたギャンブルをしている」。その行為自体が「あなたたちを多すぎるほど支援してきたこの国に対してとても失礼だ」というもの。侵略者に命懸けで対抗しているゼ氏に対して、「ギャンブルをしている」と難癖をつける。どちらが失礼かと言いたくなる場面だ。バイデン前大統領も回避を強く求めていた第3次世界大戦。ウクライナの自国を守る防衛戦争が、どうして第3次世界大戦につながるのか。ウ国の安全を確約すれば、世界大戦は回避できるのか。トランプ氏は明言しないが、「確約すること」が第三次世界大戦の引き金になると思っているのは間違いない。ここが首脳会談決裂の最大のポイントではないか。
第三次世界大戦とは何か?それは核大国であるロシアと米国が直接相対する全面戦争のことだ。想像に過ぎないが水面下の交渉でプーチンはトランプ氏に、「安全保障を確約したら停戦協議は拒否する」と通告しているのではないか。ゼ氏もスターマー首相もマクロン大統領も、この事実を知らされていない。だからゼ氏は執拗に安全保障の確約を要求する。欧州首脳は「侵略したのはロシア」と主張する。もちろん正論だ。私を含めウ国支持者の胸に響く。だが戦争継続で事態を打開するためには、プーチンの打倒戦略が必要になる。それが可能なのは第三次世界大戦だ。米ロの直接対決しかあり得ない。トランプは「だから停戦が必要だ」と言っている。安全保障を確約すればロシアが停戦協議を拒否する。欧州がどんなにゼ氏を支持したとしても、現状の軍事力だけではプーチンの打倒は覚束ない。かくして「確約」はギャンブルになる。それにしてもトランプ氏、ギャンブルは言葉として不適切。修正すべきだろう。