▽25年度予算案が衆院通過 「年収の壁」上げなどで減額修正<日経web版>2025年3月4日 16:19

2025年度予算案と税制改正関連法案が4日の衆院本会議で賛成多数で可決され、衆院を通過した。内閣が提出した予算案と自民、公明両党による修正案に、自公と日本維新の会が賛成した。予算案は参院に送付してから30日で自然成立する憲法の規定があり、4月2日までに成立する。
石破茂首相にとって衆院で議席の過半数を持たない少数与党の予算編成となり、賛成を取りつけるため野党側の意見を踏まえて修正した。
一般会計総額は過去最大規模の115兆1978億円とした。野党の要求を一部取り込み、もとの予算案から3437億円減らした。赤字国債は追加発行しない。
日本維新の会が求めた高校授業料の無償化については25年度から所得制限を撤廃し、国公私立を問わず全世帯に年11万8800円の就学支援金を支給する。

公立の専門高校の施設整備の支援も拡充する。一連の対策費として1064億円を追加計上した。維新はこれを踏まえ、政府の当初予算案に初めて賛成した。
所得税の非課税枠の最低ライン「年収103万円の壁」は160万円に引き上げる。これに伴う減収額を6210億円と見込んで修正した。
「年収の壁」を巡っては国民民主党が所得制限をつけずに178万円まで上げるよう求めた。
与党側は年収850万円以下という所得制限を設け、課税最低額を160万円まで引き上げる修正案を示した。財源確保を重視したものだったが、国民民主の理解を得られず折り合えなかった。
医療費の患者負担を抑える高額療養費制度を巡っては、長期治療が必要な患者の負担を軽減する「多数回該当」については限度額引き上げを見送る。これに伴って関連予算を増額修正した。
高額療養費制度については立憲民主党が負担上限額の引き上げを凍結するよう訴えていた。
首相は立民が予算案への反対姿勢を崩さないのを踏まえ、26年8月以降の見直しは再検討するものの、25年8月の引き上げは計画通り進めると国会で答弁した。
政府が機動的に使途を決められる予備費は1兆円から2500億円減らした。立民は予備費の減額や基金の一部取り崩しを財源とし、高額療養費制度の患者負担の限度額引き上げ凍結などに充てるべきだと主張した。
首相は4日、首相官邸で記者団に「野党の主張も取り入れ、熟議の国会にふさわしいものになった」と述べた。参院での審議に向け「謙虚に真摯に取り組む。結果として早期に成立すればいい」と話した。
4日夜には党総裁選で首相を支持した議員らと会食し「政権発足当初から予算案通過までが一つの目標だったが、今日でひと山越えて良かった」と述べた。出席者が明らかにした。「これからも気を引き締めてやっていこう」とも呼びかけたという。
当初予算案を国会で修正するのは第1次橋本龍太郎内閣の1996年度以来29年ぶり。減額修正は55年度の第2次鳩山一郎内閣以来70年ぶりだ。
予算案の成立は4月1〜2日ごろなら年度内に間に合わなくても執行にほとんど影響しない。成立が大幅に遅れて必要最小限の経費を計上する暫定予算の編成は避けられる公算が大きくなった。
政府・与党は25年度予算案を24年度内に自然成立させるため、3月2日までの衆院通過をめざしていた。自民党派閥の政治資金問題を巡り、旧安倍派の元会計責任者の参考人聴取の調整などが難航し日程がずれ込んだ。3月末までの成立に向け参院での審議を急ぐ。
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