Alice Atkins、Alice Gledhill
- 欧州の防衛費増額が利回り上昇、ユーロ高、防衛株値上がりもたらす
- 資産クラス全体で広範な変化始まる-当然だった前提、今や疑わしい
トランプ米大統領の親ロシア路線や米国の保護主義政策により、約70年続いてきた米欧の同盟関係にひびが入り始めている。
トランプ氏の政策により、欧州諸国は冷戦後で最も積極的な防衛費増額に乗り出すことを余儀なくされた。その結果、投資家が債券発行急増に備える中、ユーロ圏諸国の国債のパフォーマンスは米国債を下回り、ユーロ圏の防衛関連企業の株価指数は過去最高値を更新し、ユーロはドルに対して上昇している。
Euro-Area Government Bonds Are Underperforming This Year
Source: Bloomberg
Data is normalized with percentage appreciation as of Dec. 31
ユニオン・バンケール・プリベは、ドイツの10年債利回りが、先週の2.4%から3-6カ月以内に3%まで上昇する可能性があるとみている。 一方、ドイツ銀行は長年続けてきたユーロ売り推奨を撤回し、欧州政府の財政を巡る展開を「極めて重要」と位置付けた。
これは、資産クラス全体にわたるより広範な変化の始まりに過ぎないかもしれない。短期的には中央銀行の政策が価格を動かす主要な要因であり続けるとしても、投資家は今、欧州における根本的な変化が今後何年にもわたって資産配分に影響を与える見通しに直面している。
アルジェブリス・インベストメンツのポートフォリオマネジャー、ガブリエル・フォア氏は「これは新しい世界だ」と述べ、「米国は、地政学的な観点から物事を恒久的に変える意欲を示している」と指摘した。
2月28日にトランプ氏がウクライナのゼレンスキー大統領と衝突したことを受け、6日に開催される欧州連合(EU)の防衛サミットに注目が集まっている。
関連記事:EU、1500億ユーロの融資を提案へ-全欧州的な防衛強化に向け
ユニオン・バンケール・プリベの為替戦略グローバル責任者、ピーター・キンセラ氏は「EUは現在、米国を敵対国と見なさざるを得ない。安全保障、貿易、その他あらゆる事柄について、これまで当然視されてきた多くの前提が、今や疑わしいことを意味する」と解説した。
ドイツ債の魅力を示すスワップスプレッドは、防衛費の増額見通しを受けてマイナスとなっている。
関連記事:マイナスのスワップスプレッド、欧州の新たな現実を示す-マクロ分析

株式市場では欧州の防衛関連企業の株価が上昇。ゴールドマン・サックス・グループがまとめた欧州防衛株バスケットは、ドイツのラインメタルを筆頭に、今年に入って60%以上も上昇し、過去最高値を更新している。
関連記事:欧州防衛株への成長期待が加速、強気相場に-EUの防衛強化策受け
Rheinmetall Leads European Defense Stock Rally
Three years of war in Ukraine have propelled sector higher
Source: Bloomberg
Note: Data is normalized with percentage appreciation as of March 3, 2022
BNPパリバ・ウェルス・マネジメントのエドムンド・シン最高投資責任者(CIO)は「ドイツをはじめとする欧州の北大西洋条約機構(NATO)諸国は大幅な支出を余儀なくされる見込みであることから、今後もこの傾向は続くだろう」と話した。
ユーロはわずか1カ月前にはドルとほぼパリティー(等価)の1.02ドルに近づいていたが、現在は1.05ドル近くまで上昇している。
地政学的緊張の悪化から逃れるための避難先を求める投資家によって、金も記録的な高騰を見せている。欧州最大の資産運用会社であるアムンディは金への投資を増やしており、資産配分の「恒久的な要素」と見なしていると、アムンディ・インベストメント・インスティチュートの責任者モニカ・ディフェンド氏は語った。
原題:Rupture in US-Europe Alliance Drives Rethink of Asset Portfolios(抜粋)