Rita Nazareth

  • 米国はメキシコとカナダへの関税で自動車について1カ月適用を除外
  • オプショントレーダーは高いボラティリティーの継続を予想

5日の米株式市場ではS&P500種株価指数が3日ぶりに上昇。午前中は下げる場面もあったが、その後は堅調に推移し午後には上げを拡大するなど、この日も変動の大きな一日となった。

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数5842.6364.481.12%
ダウ工業株30種平均43006.59485.601.14%
ナスダック総合指数18552.73267.571.46%

  ウォール街では米国の関税を巡る最新の動向と、それが経済や金融当局の決定にどのような影響を与えるかが引き続き意識された。S&P500種は1%を超える上昇。トランプ米大統領はメキシコとカナダに発動した関税で、自動車については1カ月間適用を除外する。ホワイトハウスが5日明らかにした。

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Last Day Of Trading For 2024 At The NYSE And NASDAQ
Source: Bloomberg

  市場では変動の大きな展開が続いている。最新の関税動向を見極めつつ、7日の米雇用統計を控える中で、オプショントレーダーは高いボラティリティーがさらに続くとみている。7日にはS&P500種が上下いずれかの方向に1.3%動くと予想。実際にそうなった場合、雇用統計の日としては、地方銀行の混乱が起きた2023年3月以来の大きな動きとなる。

  米供給管理協会(ISM)が発表した2月の非製造業総合景況指数は、前月から上昇し、活動の拡大ペース加速を示した。底堅い需要を背景に、雇用指数は約3年ぶり高水準となった。一方、 2月の米民間雇用者数は昨年7月以来の小幅な伸びにとどまった。労働需要の鈍化と整合する結果となった。

S&P 500 Climbs on Tariff Reprieve

米国債

  米国債は下落(利回りは上昇)。10年債は、特に午前中は上げ下げを繰り返す方向感に欠ける展開となったが、午後は利回りが上昇した。

国債直近値前営業日比(bp)変化率
米30年債利回り4.57%3.50.78%
米10年債利回り4.28%3.60.85%
米2年債利回り4.00%1.40.36%
  米東部時間16時40分

為替

  外国為替市場ではドルが下落。ブルームバーグ・ドル・スポット指数は約3カ月ぶり水準に下げた。関税による米経済へのマイナスの影響に対し懸念が強まった。ユーロは対ドルで3日続伸。3日間の上げとしてはここ10年近くで最大となった。ドイツが示した大胆な財政改革案が好感された。

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為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1271.70-12.88-1.00%
ドル/円¥148.88-¥0.91-0.61%
ユーロ/ドル$1.0791$0.01651.55%
  米東部時間16時40分

  トランプ米大統領はメキシコとカナダに発動した関税で、自動車については1カ月間適用を除外する。ホワイトハウスが5日明らかにした。

関連記事:カナダ・メキシコ関税、自動車は1カ月適用除外-ホワイトハウス (1)

  ジェフリーズのブラッド・ベクテル氏は、「データの弱さと関税を巡る混乱により、米国の見通しは弱くなっている」と述べた。

  バンク・オブ・アメリカ(BofA)のストラテジストはリポートで、ドル・ロングのポジションの「伸長の度合いは年初時点に比べてはるかに小さい」と指摘。昨年10-12月(第4四半期)にドルを買い入れていたヘッジファンドとリアルマネーは、今では売り手となっている。

Dollar Slumps for Third Session as Tariff Concerns Mount

  円は対ドルで値上がり。ニューヨーク時間の午前中に一時148円40銭を付け、その後は148円台後半から149円台前半での推移となった。日本銀行の内田真一副総裁は5日、日銀の経済・物価の見通しが実現していけば利上げを続けるとし、経済を確認しながら進めることが可能であるとの見解を示した。静岡県金融経済懇談会で講演した。

ドル・円相場の推移

原油

  ニューヨーク原油先物相場は4日続落。北海ブレント原油とともに、終値ベースで昨年9月初旬以来、約6カ月ぶりの安値となった。石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成するOPECプラスが4月から生産引き上げを開始すると示唆したところへ、トランプ米大統領が仕掛けた貿易戦争で需要見通しが打撃を受けた。

  北海ブレント原油は一時、2021年12月以来の安値を付ける場面もあった。その後は下げ幅を縮小した。

  トランプ氏の貿易政策は世界のエネルギー需要を後退させ、原油の流れを変える可能性があるが、それがどのように展開するかは最終的な関税の構成と期間に左右され、そのいずれも今のところ不透明だ。供給面でも、OPECプラスが生産引き上げの計画をようやく前進させる様子で、米国内の在庫も先週増加したため、供給過剰の見込みが強まっている。

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  トランプ大統領の政策により複数の貿易戦争の懸念が高まったことから、原油相場は1月中旬以降、下落基調を維持している。

  高まる悲観論を背景に、多くの企業が原油価格の予測を下方修正している。業界コンサルタントのエンベラスは今年のブレント原油見通しを従来の80ドルから70ドルに引き下げた。モルガン・スタンレーは2025年第2四半期の予測を5ドル引き下げ、70ドルとした。シティグループは60ドルまで下落するとみている。

  CIBCプライベート・ウェルス・グループのシニア・エネルギー・トレーダー、レベッカ・バビン氏は「市場は下落リスクを再評価し、WTIの下限を65ドルから60ドルに近づける方向にシフトしている」と指摘。「現時点では、焦点は完全に供給リスクから需要懸念へと移っている」と述べた。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物4月限は前日比1.95ドル(2.9%)安の1バレル=66.31ドル。ロンドンICEの北海ブレント5月限は2.4%下げて69.30ドル。

  金スポット価格は小幅ながら3日続伸。世界的な貿易戦争への懸念から安全資産への需要が高まったことに加え、ドル安が進んだため、金買いが優勢になった。

  関税が世界経済にどのような影響を与えるのか注目が集まっている。インフレ率が上昇し、世界経済が打撃を受ければ、価値保存手段としての金の魅力が高まる可能性がある。

  金スポット相場はニューヨーク時間午後3時6分現在、前日比3.09ドル(0.1%)高の1オンス=2920.98ドル。ニューヨーク商品取引所の金先物4月限は5.40ドル(0.2%)高の2926ドル。

原題:European Bonds Sell Off Amid German Market Swings: Markets Wrap(抜粋)

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