今週はトランプ氏とゼレンスキー氏の首脳会談決裂にこだわってきた。その後のトランプ氏はウクライナへの情報提供停止など、強圧外交を一段と強めている。NATOには「加盟国の国防費が依然として十分ではない、『滞納』するなら防衛しないと加盟国に伝えている」(ロイター)とうそぶき、返す刀で日米関係については「われわれは日本を守らなければならないが、日本はわれわれを守らない」(時事通信)と不満をぶちまける。その一方でカナダ、メキシコに対する一部関税の引き上げを再度延期するなど、強圧外交に効果ありとみればあっさりと自説を引っ込める。米国では早くもトランプ再選の話題で盛り上がっているという。就任1カ月ちょっとでなにやらすでに“王様”気分のようだ。間髪を置かずに繰り出される強圧外交に世界中が振り回されている。そして一部では対応策が真剣に検討されている。その良い例が欧州だ。
EUは6日にブリュッセルで臨時の首脳会議を開催した。会議にはゼレンスキー大統領も参加。欧州委員会が提案した最大1500億ユーロの共同借り入れ案の早急な検討を求めた。軍事力の強化を目指すこの提案は、加盟27カ国の全会一致で採択された。これに先だってフランスのマクロン大統領は、「自国の核抑止力を欧州全域に拡大する」との意向を表明している。「ウクライナはNATOが守れ」、トランプ氏の恫喝に応える意向を示したものだ。こうした動きにロシアは相変わらず冷淡な視線を投げかける。外務省のザハロフ報道官は6日、「(EUは)依然としてロシアに対して対決姿勢を続ける一方で、米国はレトリックを現実路線へと転換した」との見解を示す。何気ない発言のようだが、水面下で米ロが歩調を合わせているようにみえる。同じ日にルビオ国務長官は「ウクライナ戦争は米ロの代理戦争だ」と発言、ペスコフ報道官は「ルビオ長官の見解に同意する」と賛同している。
肝心のウクライナ戦争はどうなるのか。米国はウ国に対して次々と圧力を仕掛けている。一方、いっさいの譲歩を拒否しているロシアに対する圧力は、ほとんど感じることができない。こうした状況についてBloombergは次のようなコメントを引用する。「一部の欧州当局者は、安全保障なしで早期停戦を求めるトランプ氏の姿勢がウクライナに不利な取引を押し付けることにつながり、ひいては欧州の安全保障を損なうことになる」、「トランプ氏は、西側諸国によるウクライナへの平和維持部隊の派遣をプーチン氏が受け入れるだろうと述べたが、これら当局者は懐疑的だ」など。米国抜きでEUは本当にウクライナの安全を保障できるのか、ロシアに停戦の意思はあるのか、真実を見極めるのは極めて難しい。それがまた強圧外交の有効性を高めている。来週もまたトランプ氏の発言に世界中が振り回されるのだろうか?鬱陶しい日々が続く。