▽米国、資源合意に伴う迅速な停戦をウクライナに要求-関係者<bloomberg日本語版>2025年3月7日 3:46 JST
Alex Wickham、Alberto Nardelli、Jenny Leonard
- 米国は資源合意と停戦への具体的道筋を関連付ける意向、欧州に通知
- ゼレンスキー氏とトランプ政権当局者、来週サウジで会談の可能性
トランプ米大統領はウクライナに求めている天然資源取引の合意と、同国がロシアとの迅速な停戦に応じるとの確約を関連付けたい考えだと、欧州の当局者は通知された。事情に詳しい関係者が明らかにした。
関係者によると、ホワイトハウスで先週、ウクライナのゼレンスキー大統領と口論になって以来、保留されている天然資源取引をトランプ氏はまとめる用意があると米国側は示唆した。ただ、ゼレンスキー氏がロシアとの停戦や交渉への具体的な道筋に合意することを条件に挙げているという。
トランプ氏、ゼレンスキー氏とも天然資源取引の合意に前向きな意向を公に示唆しているにもかかわらず、まだ調印されていないのはこうした追加条件が主な理由だと、関係者は指摘した。関係者は部外秘の協議内容だとして匿名を要請した。
向こう数日間で合意への動きがあるかもしれず、ゼレンスキー氏が来週訪問を予定するサウジアラビアでトランプ政権当局者と会談する可能性があると関係者の一部は話したが、米国の姿勢は常に変わり得ると慎重な見方を示す関係者もいる。トランプ氏は心変わりしやすいことで知られる。
トランプ氏はホワイトハウスで記者団に対し、「ウクライナは合意を望んでいると思う。彼らには選択の余地がないからだ」と指摘。同時に「ロシアも合意を望んでいると思う。なぜなら、私だけが知っているある特定の異なる見方によれば、彼らには選択肢がないからだ」と述べた。だが詳細は明かさなかった。
一方、ゼレンスキー氏は6日にブリュッセルで開かれた欧州首脳会議で「平和に向けた迅速な進展」のための計画を提示したと、ソーシャルメディアに投稿。その第一歩として「空での停戦(ミサイル、長距離ドローン(無人機)、エネルギーやその他の民間インフラへの爆撃の停止)の確立と完全なる管理、および海上での停戦、すなわち黒海でのあらゆる軍事作戦の停止と平和かつ安全な航行の確保」を挙げた。
トランプ氏が要求する敵対行為の全面停止を満たすためにこれが十分であるかどうかは不明。
ゼレンスキー氏は10日のサウジアラビア皇太子との会談後に「私のチームはサウジアラビアにとどまり、米国のパートナーと協力する」と述べた。

トランプ政権の当局者数人はここ数日、天然資源取引は大統領が描くウクライナ和平計画の重要な一部で、和平への一歩だと主張してきた。
ロシアのプーチン大統領から終戦に応じる用意があるとの示唆はない。米国がロシアに妥協に応じるよう働き掛けている兆しもなく、ゼレンスキー氏に向けられた厳しい要求とは極めて対照的だ。いかなる停戦もロシアとウクライナの同意が必要になる。
米国はここ数日、軍事支援の全面停止、情報共有の停止とたたみかけ、ゼレンスキー氏に対する圧力を強めている。これは同氏にトランプ氏の目標に受け入れるよう理解させる狙いだと、欧州の当局者らは話した。
ウォルツ米大統領補佐官(国家安全保障担当)はFOXニュースに対し、ウクライナとの「交渉が前進し、信頼を醸成する措置を検討できるようになれば、大統領がこれらの停止を厳しく見直すことになるだろう」と述べた。

米国と欧州の現・元当局者によると、とりわけ情報の共有停止はほとんど前例がない異例の動きで、米欧関係に打撃を与える公算が大きい。
同盟国間の情報共有は人命保護が目的であることが多いと、欧州の情報当局者は述べた。この慣行は政治を超えたところに位置づけられ、一般的には一方の利益のための武器として利用されないという。
ウクライナはロシアによる空襲への早期警報、ロシアが行う地上作戦の軍事標的特定など、全てにわたって支援国の情報に依存している。英国製巡航ミサイルなど支援国がウクライナに供給した幾つかの兵器も、米国のデータが頼りだ。
ブレナン元中央情報局(CIA)長官は6日、英タイムズ・ラジオとのインタビューで、トランプ政権の手法を「圧力戦術で強要」だと指摘。「自分の経験では、米国が政治的な理由で情報共有を遮断したことは決して、一度もなかった」と語った。
米当局者はウクライナに要求を突きつける一方で、ロシアとも接触を続けていると、関係者の1人は明らかにした。だが、ロシアに交渉に応じるよう米国が何らかの圧力をかけているのかは定かではない。
ウクライナを支配するというプーチン氏の最終的な目標は変わっておらず、同氏は信用できないと、複数の欧州当局者が自らの判断だとして語った。プーチン氏が約3年前に始めた侵攻を中止し、軍を撤退させれば、戦争は即座に終わる。
一部の欧州当局者は、安全保障なしで早期停戦を求めるトランプ氏の姿勢がウクライナに不利な取引を押し付けることにつながり、ひいては欧州の安全保障を損なうことになると懸念している。
トランプ氏は、西側諸国によるウクライナへの平和維持部隊の派遣をプーチン氏が受け入れるだろうと述べたが、これら当局者は懐疑的だ。プーチン氏がそれを受け入れない場合の究極の懸念はトランプ氏が交渉の場から離れ、維持される可能性が低い脆弱(ぜいじゃく)な停戦合意のみが残されることだと指摘した。
ロシアのラブロフ外相は6日のモスクワでの記者会見で、欧州の部隊によるウクライナでの平和維持活動を認めるいかなる合意にも「断固として」反対すると述べた。

原題:US Presses Ukraine for Quick Truce to Go With Minerals Deal (3)(抜粋)
(欧州当局者の発言を追加し更新します。更新前の記事で8段落目の日付を訂正済みです)