▽ECB、5会合連続利下げ 「不確実性」警告し一時停止の可能性示唆<ロイター日本語版>2025年3月7日午前 4:45 GMT+9

[フランクフルト 6日 ロイター] – 欧州中央銀行(ECB)は6日、主要政策金利の預金金利を0.25%ポイント引き下げ2.5%とした。インフレ鈍化と成長減速を踏まえた決定となる。同時に、米国との貿易戦争の脅威や欧州諸国の防衛費増額計画などに起因する不確実性の高まりを警告。4月の次回会合で利下げを一時停止する可能性が示唆された。
利下げは5会合連続で、過去9カ月で6回目。ECBは声明で「ディスインフレのプロセスは順調に進んでいる」と指摘。「利下げにより企業や家計の借入コストが低下し融資の伸びが加速する中、金融政策は実質的に引き締め的でなくなりつつある」とし、従来の「政策は引き続き引き締め的」という表現から変更した。
ラガルドECB総裁は理事会後の会見で、金利の方向性は下向きとする従来の指針を繰り返し表明することは避け、利下げと据え置きの双方の可能性があると強調。「金融政策は実質的に引き締め的でなくなってきている」とし、「これは単なる些細な変更ではなく、特定の意味を持つ変更だ」と述べた。
同時に、今後の動きについて事前に確約しないとし、「目標達成に向け利下げが適切と指標が示唆すれば、ECBはそれに従う」と強調。一方、指標が利下げの必要性を示さなければ「われわれは利下げは行わず、一時停止するだろう」と述べた。
今回の利下げ決定を巡り、オーストリア中銀のホルツマン総裁が棄権した。
ラガルド氏はまた、凍結されているロシア資産の取り扱いを巡る西側諸国の決定は国際法を考慮に入れたものになると指摘。ただ、ECBが議論すべき問題ではないとの認識を示した。
<大きな「不確実性」、スタッフ予測で成長見通し下方修正>
ラガルド氏は、ドイツや欧州委員会が今週発表した防衛費やインフラ支出の拡大に向けた財政ルールの変更による影響をECBは注視していると言及。こうした措置で経済成長が下支えされるものの、不確実性が払しょくされていないとしたほか、米国との貿易戦争や欧州の報復措置で経済成長が損なわれ、物価が押し上げられる可能性があるとし、「われわれは大きな不確実性に直面している」と述べた。
ECBは今回の理事会に合わせて公表した四半期ごとのスタッフ見通しでユーロ圏の2025年と26年の成長率見通しを引き下げたほか、25年のインフレ見通しを2.3%に上方修正。26年は1.9%に据え置いた。 もっと見る
<利下げ停止観測>
ECB今回の理事会で利下げを決定したものの、貿易政策や財政政策の行方を見極めるため、4月の次回会合で利下げの一時停止を決定する可能性が高いとの見方が出ている。 もっと見る
INGのエコノミスト、カーステン・ブレゼスキ氏は「ECBは次回会合で利下げを見送る」と予想。「不確実性の高まりと大規模な財政刺激策の見通しを踏まえると、今回の利下げ後のECBの方向性は数週間前ほど明確でなくなっている」と述べた。
ノルデアは、4月に追加利下げが決定されるとの見方が基本シナリオとしながらも、同利下げで今回の緩和サイクルは終了すると予想。「経済指標が予想を上回れば、利下げは6月会合に先送りされる可能性があるが、逆に予想を下回れば複数回の追加利下げも十分あり得る」との見方を示した。