▽ドイツ、財政拡張めぐる憲法改正へ前進-緑の党の合意取り付け

  • 18日に下院採決へ-支出増受けドイツ10年債の利回りが一時急上昇
  • 5000億ユーロ規模のインフラ投資基金、1000億は気候変動対策に
Friedrich Merz in the Bundestag on March 13.
Friedrich Merz in the Bundestag on March 13. Photographer: Krisztian Bocsi/Bloomberg

ドイツの次期首相候補のメルツ・キリスト教民主同盟 (CDU)党首は14日、防衛・インフラ支出のための財政改革パッケージを巡り、緑の党と合意に達した。来週の議会での採決に向け、大きなハードルを乗り越えたことになる。

  憲法上の債務制限改正に必要な議会3分の2の賛成を確保するため、CDUを中心とする保守系会派とショルツ首相の社会民主党(SPD)は、緑の党の支持を取り付けようと腐心していた。 緑の党は当初の財政パッケージを拒否し、気候変動対策への積極的な取り組みを求めていた。

  メルツ氏は数週間後、ショルツ氏の後任となる見込みだ。メルツ氏は14日ベルリンで、同党議員らとの会談後、「ドイツは復活した」と記者団に語った。

Friedrich Merzon March 14.
ドイツのメルツ・キリスト教民主同盟 (CDU)党首(3月14日)Source: AFP

  メルツ氏らは防衛費を債務制限の対象外とし、5000億ユーロ(約80兆7600億円)のインフラ投資基金を設立するという大々的な計画について、両院の支持を獲得しようとしている。法案は18日、連邦議会(下院)で採決される予定だ。

  合意内容によるとインフラ基金は新規プロジェクトに充当されるが、緑の党の要求を受け、うち1000億ユーロは既存の気候変動対策移行基金に充てられる。防衛費の枠組みも拡大され、ウクライナへの支援とインテリジェンスが含まれることになった。30億ユーロのウクライナ支援パッケージも、来週には署名される可能性が高いとメルツ氏は述べた。

  合意を受けて、ドイツの債券価格は一時大幅安となり、10年債利回りは一時8ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇し2.94%となった。その後は下げ幅を縮小した。ユーロは対ドルで上昇し、ドイツの主要株価指数であるDAX指数は1.9%高で引けた。

  合意が成立した今、両党は議員たちを取り込みに入った。メルツ氏とSPDは、25日に新連邦議会が招集される前に、法案を議会で可決させようと急いでいる。極右「ドイツのための選択肢(AfD)」と反資本主義政党「左派党」が勢力を拡大している中、新議会では憲法改正に必要な支持を集めるハードルがさらに高くなるためだ。

  緑の党のハッセルマン共同代表は14日、議員会合後に記者団に対し「緑の党の議員団についてはまったく心配していない」と述べ、同党が合意を支持することに疑いはないと述べた。

  法案の採択に向けては、連邦議会に続き連邦参議院(上院)でも3分の2以上の賛成を得る必要がある。緑の党の支持があれば、このシナリオは実現する可能性が高い。

  社会民主党のクリングバイル共同党首は、緑の党との合意はドイツを「解放する」と称賛した。「敗者はいない」と述べ、「勝者は大勢いる。一番の勝者はドイツという国だ」と続けた。

原題:Merz Said to Reach Tentative Deal With Greens on Fiscal Package
Merz Reaches Deal With Greens on German Spending Package (2) (抜粋)