日米の金融当局が昨日、金融政策を決める会合を相次いで開催した。FRBの公開市場委員会(FOMC)と日銀の金融政策決定会合が同じ日に開催されるのは珍しいが、両当局とも事前に予想された通り金融政策を現状のまま据え置いた。現状の下で日米の金融政策の方向性はまったく逆。FRBが利下げを模索しているのに対し、日銀は利上げを目指している。その両当局の決定はいずれも「据え置き」。原因はトランプ大統領が推進している経済政策の見通しが、依然として不確実なことにある。パウエルFRB議長は最近の経済状況について「不確実性は異常に高まっており、(金融)政策は予定通りに進んでいない」と認めている。大きな流れとしては利下げを模索しているのだが、「関税によるインフレがどの程度になるかは分からない」状況下では、「(利下げを)急ぐ必要はない。より明確な状況になるまで待つのが賢明だ」としている。

利上げを目指す植田日銀総裁も「不確実性の解明が先」と待ちの構え。政策の基本は「経済・物価の見通しが実現していけば引き続き政策金利を引き上げる」(日経Web版)ことにある。注目された春闘の1回目の回答集計で、賃上げ率の平均が5.46%とやや強めになった。これは明らかに利上げ要因。それでも一時的な変動を除いた物価上昇率は2%を少し下回っており、「ビハインド・ザ・カーブ(政策が後手に回る)のリスクは高くない」(同)と見ている。政策判断に余裕がある、慌てて決断する必要はないとの構えだ。パウエル議長も「経済は好調、労働市場の状況は堅調、インフレは依然としてやや高い」との認識を示している。景気が引き続き堅調に推移していることから「急ぐ必要はない。より明確な状況になるまで待つのが賢明だ。信号とノイズを分離することに焦点を当てる」と、こちらもじっくり推移を見守る構えだ。

不確実性の源であるトランプ関税、4月2日に相互関税の発動が控えており、水面下の駆け引きが続いている。トランプ政策の不確実性は関税の付加によるインフレへの影響だけではない。関税による消費の減退も予測されている。インフレと消費の後退、どちらが優勢になるかによって景気の先行きも変わってくる。ベッセント財務長官は「一時的な混乱があったとしても長い目で見れば景気にプラス」との認識を示す。トランプ氏のMAGA政策はプラスとマイナスの要因が混在している。不法移民の強制退去に伴う労働力不足、減税の継続による消費の拡大、この2つはわかりやすい。DOGEが推進する小さな政府、同盟国に対する軍事費引き上げ圧力、カーボンニュートラルとの決別などは、景気にとってプラスなのかマイナスなのか。不確実なのは金融政策だけではない。大袈裟にいえば地球全体が「不確実劇場」のど真ん中に投げ出されたようなものだ。何が確実なのか、誰にもわからない。