▽米5月雇用13.9万人増に鈍化、失業率横ばい 関税巡り不透明感

Lucia Mutikani

米5月雇用13.9万人増に鈍化、失業率4.2%で横ばい

[ワシントン 6日 ロイター] – 米労働省が6日発表した5月の雇用統計によると、非農業部門雇用者数は13万9000人増加で前月から減速した。関税措置の不確実性を背景に鈍化したものの、堅調な賃金上昇から経済拡大が当面続くとの見方から、連邦準備理事会(FRB)が利下げ再開を遅らせる可能性がある。

失業率は3カ月連続で4.2%となった。62万5000人が労働力から離脱したことが背景にある。

ロイターがまとめたエコノミストの予想は、非農業部門雇用者数が13万人増(予想レンジ:7万5000─19万人増)、失業率は4.2%だった。

4月の非農業部門雇用者数は17万7000人増から14万7000人増に下方修正された。3月分も当初発表から6万5000人下方修正された。2カ月間で9万5000人という大幅な下方修正により、労働市場の勢いの衰えが浮き彫りとなった。

BMOキャピタル・マーケッツの米国チーフエコノミスト、スコット・アンダーソン氏は「労働市場の堅調さに亀裂が入り始めている。関税措置を巡る不透明感と政府支出削減が長引くほど、労働市場に関するデータは悪化するだろう」と述べた。

労働年齢人口の増加に対応するためには毎月約10万人の雇用増が必要とされている。しかしこの数は、トランプ大統領が不法移民取り締まりの一環として実施する数十万人の移民の一時保護資格の取り消しにより減少する公算が大きい。

雇用増加の大部分はヘルスケア部門が引き続き占めており、病院と外来サービスなどで6万2000人の雇用が増加した。レストラン・バーでの雇用増を主因に、レジャー・ホスピタリティー部門では4万8000人増加した。社会扶助部門の雇用者数は1万6000人増加。金融、運輸・倉庫業、卸売の各部門でも緩やかに増加した。

一方、連邦政府の雇用者数は2万2000人減少。製造業でも機械製造を中心に8000人減少したほか、小売業でも減少した。

雇用者数が増加した業種の割合は50%と10カ月ぶりの低水準を記録した。4月は51.8%だった。

雇用主が一時解雇(レイオフ)に消極的な姿勢を示していることから、FRBは年内は様子見姿勢を維持する可能性が高い。金融市場は、FRBが今月下旬に開かれる連邦公開市場委員会(FOMC)で金利を据え置き、9月に利下げを再開すると予想している。

時間当たり平均賃金は前月比0.4%上昇。4月は0.2%上昇だった。前年比では3.9%上昇と、4月と同水準となった。

労働参加率は62.4%と、4月の62.6%から低下。経済の雇用創出能力の尺度とされる就業率は59.7%と、4月の60.0%から低下した。

エンプロイ・アメリカのエグゼクティブディレクターであるスカンダ・アマルナス氏は「労働参加率の低下がなければ、失業率は4.3%に上昇していただろう」と指摘。「労働参加率の低下により、5月に見られた雇用と労働市場のわずかな鈍化が見えにくくなっている」との見方を示した。

失業期間の中央値は9.5週間。4月は10.4週間だった。

失業率の算出元となる家計調査によると、雇用は69万6000人減少。経済的な理由からパートタイムで働く人も減少した。

エコノミストらは、トランプ米大統領の二転三転する関税政策が、企業の計画立案や雇用拡大を阻害していると指摘。トランプ氏が掲げる税制・歳出法案を巡る保守系の上院共和党議員や実業家イーロン・マスク氏との確執も、企業に新たな不確実性をもたらしている。

フィッチ・レーティングスの米国経済調査責任者オル・ソノラ氏は「労働市場は着実に鈍化し続けているが、過度に悲観する必要はない」と指摘。「貿易政策を巡る不確実性を考えると、FRBは今回の内容に安心しているだろう」としながらも、関税を巡る状況は依然として不透明との見方を示した。

A line chart titled "US unemployment rate" that tracks the metric over the past 5 years.
A line chart titled “US unemployment rate” that tracks the metric over the past 5 years.
A column chart titled "Monthly change in jobs" that tracks the metric over the past year.
A column chart titled “Monthly change in jobs” that tracks the metric over the past year.