Bloombergに面白い記事が投稿されていた。題名は「公的年金でCIO新設相次ぐ、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)出身者の起用も-進む運用改革」。一般的にはあまり注目されない記事だろう。大量に蓄積された年金資金の運用改革の一環だ。同記事からの引用。「日本銀行の資金循環統計によると、24年12月末時点の公的・民間年金の資産規模は計513兆円に上る。巨額の規模に達している年金資金だが、CIO職を設置したのはこれまで、GPIFやKKR(国家公務員共済組合連合会)といった公的な運用機関が中心だった」。こうした動きが中小の公的年金や民間にも広がりつつあるという。日本は世界最大の金融資産大国である。年金資産は昨年末に513兆円に達した。国家予算の5倍。GDPのほぼ1年分に相当する。資産運用に力を入れるのは当然だろう。

CIOの採用と一緒にGPIFは安倍政権下で運用方針を大々的に見直した。従来の国内債券重視から国内外の株式や、規模は少ないもののオールターナティブ投資まで対象を広げた。その結果運用収益は従来の年2%前後から2024年10−12月期には同4.4%へと倍増した。「累積収益額は164兆円を超えた」とある。これはあくまで運用の話であり、年金制度そのものの改革とは異なる。だが、発想を変えるだけでこれだけの収益が向上するのだ。大事なのは行き詰まっている年金の将来像をどう考えるのかだが、発想の転換が必要だと言うことだ。自公立民の年金改革と称するプランは、基礎年金の支給額を増やすために、厚生年金から資金の一部を借用する。詳細な制度設計は不明だが、基礎年金は国と個人が半々ずつ資金を負担している。厚生年金の借用に伴い国も同額を繰り入れる必要がある。その額が2兆円と推計されている。この資金を増税で賄うのではないか、疑念を呼んでいるのだ。

増税になるとしても、「それは弥縫策に過ぎない」と以前にこの欄で書いた。年金改革には発想の転換が必要だ。少子化で人口が減少している。現行制度は賦課方式を採用している限りいずれ破綻する。改革すべきはこの点だ。日本でも401kが浸透している。iDeCo(イデコ=個人型確定拠出年金)や新型NISAなど401k類似型金融商品も増えている。高齢者には向かないが、50歳以下の若い世代にとっては、個人で老後の資産づくりが可能になる。日本経済の将来展望にもよるが、若い世代にはこうした商品に移行してもらう。そのためのリスク対策は政府が万全を期す。その上でこの世代の年金掛け金を減額する。同時に65歳以上になった時の支給額も大幅に削減する。政府はGDPの着実な成長に努めると同時に、目標を下回った際には補填する。個人と公的年金の両立だ。負債額で侃侃諤諤の議論をするよりも、発想を転換して資産を増やす努力を官民あげてやる。そのほうがよほど生産的な気がする。