トランプ関税をめぐる注目の米中交渉が終了した。トランプ大統領は「米国との貿易に中国市場を開放すべく、緊密に協力していく。これは両国にとって偉大な勝利になるだろう!!!」と自身のS N S、トゥルース・ソーシャルに投稿した。明らかな勝利宣言のように見える。これに反して中国は今回の交渉決着について沈黙を守ったままだ。さらにトランプ氏は「米国は合計で55%の関税を得る。一方、中国は10%だ。関係は素晴らしい!」と絶賛している。米中の間に45%もの開きがある。明らかに中国に不利だ。本当に交渉は決着したのだろうか。またぶり返しがあるのではないか。前回、スイスでの1回目の交渉で追加関税を115%引き下げることで合意した。賦課するタイミングも90日間停止した。にもかかわらず、レアアースを中国が輸出停止したため、ロンドンでの2回目の交渉が余儀なくされたという経緯がある。
主要メディアの報道を見る限り、交渉の結果は明らかに米国に有利にみえる。交渉内容は現時点で、どいう訳か公表されていない。一足早く帰国して下院の公聴会に出席したベッセント財務長官は、「中国は不動産危機などの国内問題に対応するほか、国内消費支出を拡大させる必要がある」、「中国が輸出に依存して問題を解決することは許されるべきではない」と述べている。巷間言われている中国の内政問題を指摘したものの、肝心の交渉そのものには触れていない。中国には過剰生産から国内消費の拡大にシフトする「またとない機会」があるとも指摘した。同時に「中国は貿易交渉において信頼できるパートナーでなければならない」と警告もする。米国側の反応は威圧的で押し付けがましい。まるで経済教室の様相だ。その上で貿易協定を順守すれば、「世界の二大経済大国間の大規模で美しくバランスが取れた調整が可能になる」とも強調する。
沈黙と絶賛。この落差はなんだろうか。トランプ氏が指摘する通り、習近平主席と大統領による正式なサイン(了承)を得ていないという事情もあるだろう。それにしても中国の沈黙は何を意味するのか。関税率55%と10%の差も気になる。追加関税を相互に感情的に引き上げた際のピークは米国が145%、中国は125%である。その差は20%。2回にわたる交渉の結果、この差が逆に広がった。ちなみに55%の内訳は①10%の一律関税②合成麻薬関連の20%の追加課税③1期目に導入された既存の関税など25%の合計。誰が考えても中国が不利に見える。これを中国が認めたとすれば、何か弱みを握られているのか。裏には別のテーマがあるとみたほうがいいのか。だとすれば、それは何か。主要メディアが報道している関税論争は表面をなぞっているだけなのか。米国があえて絶賛している可能性もある。疑問が次々と膨らむ。
