▽米CPI、コアが4カ月連続で予想下回る-関税転嫁なお限定的
Augusta Saraiva
- 食品とエネルギーを除く財の価格は前月比横ばい
- エネルギーを除くサービス価格は0.2%上昇、伸びは減速
5月の米消費者物価指数(CPI)は、食品とエネルギーを除くコア指数が4カ月連続で市場予想を下回った。関税によるコスト上昇の顧客への転嫁を企業が抑制しようとしていることがうかがえる。
| キーポイント |
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| ・コアCPIは前月比0.1%上昇-市場予想は0.3%上昇 ・前年同月比では2.8%上昇-予想は2.9%上昇 ・総合CPIは前月比0.1%上昇-予想は0.2%上昇 ・前年同月比では2.4%上昇-予想と一致 |

食品とエネルギーを除いたコアの財価格は前月比横ばいだった。新車と中古車の価格はいずれも下落し、衣料品も下げた。エネルギーを除くサービス価格は0.2%上昇したが、伸びは減速。航空券と宿泊費の低下を反映した。
CPI統計を受けて米国債が上昇し、ドルは下落。S&P500種株価指数は高く始まった。金利スワップ市場では、連邦公開市場委員会(FOMC)が9月までに利下げを実施する可能性を75%と見込んでいる。
CPIの一連の指数がおおむね予想を下回ったことは、トランプ大統領の関税措置の痛手がまだ消費者に及んでいないことを示す証左となっている。最も厳しい関税措置が一時的に停止されているため、あるいは企業がこれまでのところ追加コストを吸収しているため、ないし関税措置発動の前に在庫を拡充していたためだと考えられる。
しかし、関税が一段と引き上げられれば、今後数カ月間に企業がより大幅な値上げを実施するとエコノミストは予想しており、消費者がコスト転嫁を免れるのは困難になる。
フィッチ・レーティングスのチーフエコノミスト、ブライアン・コールトン氏は「関税引き上げに先立つ在庫の積み増しが、価格転嫁の遅れに寄与している可能性がある。一方、米通商政策を巡る大きな不確実性が、企業による価格調整のスピードに影響しているかもしれない」と指摘。「しかし、今後数カ月にコアの財価格が上昇する可能性は依然として非常に高い」と述べた。
コロナ禍後のインフレ高進の影響が続いており、消費者はある程度まで許容するが、最終的には支出を抑制するリスクがある。食品大手JMスマッカーや家電量販店ベスト・バイは、これが利益を圧迫すると指摘している。経済成長の減速を見込む声も多い。
FOMCは来週の定例会合で政策金利を据え置くと広く予想されている。これまでのところ価格転嫁が限定的で、労働市場が安定しており、トランプ政権の政策を巡る不確実性が続いていることが背景にある。ただ、物価上昇が鈍化し、労働市場も落ち着きを見せているため、早期の利下げを当局に求める圧力が高まる可能性がある。
ウェルズ・ファーゴのシニアエコノミスト、マイケル・パグリース氏は「米金融当局にとって最も重要な留意点は、まだ少し早いことだ」と述べた。「過去数カ月に起こったことを考慮すると、単月の統計を過度に重視することはないだろう」と話した。
輸入関税上昇の影響が強い一部の品目では、顕著な値上がりが見られた。玩具の価格は2023年以来の大幅上昇を記録し、主要家電製品はほぼ5年ぶりの大幅上昇となった。
一方、コアCPIに含まれないガソリンの価格は2.6%低下し、総合CPIの上昇を抑制する要因となった。
ベッセント米財務長官は11日の議会公聴会での証言で、トランプ大統領が貿易に関する「数十年にわたる状況」に挑戦したことがインフレの鈍化につながったと評価した。
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食料品価格
前月に低下していた食料品価格は前月比0.3%上昇。シリアルや魚、ベーコンの価格が上昇した一方、卵の価格は3%近く低下した。牛ひき肉の価格は上昇。飼育頭数が記録的な低水準にある一方、需要が高いことが背景にある。
近年、インフレの主な要因の一つは、サービス部門で最大のカテゴリーである住宅コストだ。住居費は2カ月連続で0.3%上昇となった。
住宅とエネルギーを除いたサービス価格は前月比0.1%上昇と、伸びが鈍化した。前年同月比では2.9%上昇。旅行関連分野の低下に加え、スポーツイベントの入場料を含むレクリエーションサービスも低下しており、裁量的消費の縮小を示す兆候となっている。
ブルームバーグ・エコノミクス(BE)のアナ・ウォン氏とスチュアート・ポール氏は「企業が関税を転嫁していないというわけではない。中国からの輸入に最も依存している品目では関税コストの転嫁が活発に行われている。しかし、レクリエーションサービスや自動車などの耐久消費財のデフレは、将来の収入に対する消費者の慎重な見方と不安を如実に表しており、関税転嫁を相殺して余りあるものとなっている」と指摘した。
金融当局者は全体的なインフレの動向を見極める上でこうした指標の重要性を強調しているが、別の指標である個人消費支出(PCE)価格指数に基づいてインフレを算出している。
PCE価格指数はCPIほど住居費の比重が大きくなく、当局の2%目標に近づいている一因となっている。12日に発表される生産者物価指数(PPI)にも、PCE価格指数に反映される項目が含まれている。
インフレ見通し
ウォルマートやターゲットなどの小売企業は今後の価格上昇を警告しており、フォード・モーターやスバルなど自動車メーカーも同様の懸念を示している。連邦準備制度理事会(FRB)が4日公表した地区連銀経済報告(ベージュブック)では、物価は「緩やかな」ペースで上昇したと記された。こうした物価上昇が「強くて大幅、あるいは著しい」ものになると予想した地区が複数あったとしている。
関連記事:米地区連銀経済報告、経済活動は若干鈍化-物価「緩やかに」上昇 (1)
今後の行方は通商交渉の進展次第という面が大きい。米国と中国の代表団はロンドンで行った協議で、貿易摩擦の緩和に向けた暫定的な計画で合意に達した。現在適用されている一時的な合意は、既に消費者のインフレ期待を示す複数の指標を低下させる効果を発揮している。
金融当局は賃金上昇にも注目している。経済の主要なけん引役である個人消費の見通しを判断する上で重要な指標であるためだ。11日に発表された別の統計では、インフレ指標と最近の賃金データを組み合わせた結果、実質平均時給が前年同月比1.4%上昇した。
統計の詳細は表をご覧ください。
原題:US Core Inflation Rises Less Than Forecast for Fourth Month(抜粋)
