▽三菱商事による巨額買収、実現すればテキサス石油一族の歴史に転機
Anders Melin、Pui Gwen Yeung
- 著名石油王Ｈ・Ｌ・ハント氏の流れをくむ親子、交渉で大詰めの段階
- エーソン売却で合意となれば、100年超える一族の歴史で大きな節目
アルバート・ハドルストン氏とその息子ゴードン・ハドルストン氏は、世界各地で石油掘削により巨万の富を築いてきたテキサス石油王の名門の系譜に名を刻もうとしている。
著名石油王Ｈ・Ｌ・ハント氏の流れをくむハドルストン親子は、エネルギー投資・開発会社エーソン・エナジー・マネジメントの資産を三菱商事に約80億ドル（約１兆1600億円）で売却する交渉で大詰めの段階を迎えている。
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この取引が実現すれば、エーソンの社長でオーナーでもある息子ゴードン氏が多額の利益を手にする可能性がある。創業者である父アルバート氏は、現在も同社の最高経営責任者（ＣＥＯ）を務めている。
売却によって得られる利益の規模は、エーソンの負債状況や交渉が最終的に合意に至るかどうかなど、複数の要因に左右される。それでも、交渉が大詰めを迎えている事実は父子にとって、そして彼らの系譜に連なる歴代の石油王にとっても、大きな転機となりそうだ。
ハドルストン家はコメントを差し控えた。
ダラスに本拠を置くエーソンのウェブサイトによれば、現在42歳のゴードン氏は「４代目のエネルギー資源投資家兼開発者」と紹介されている。この言葉の背後には、曾祖父Ｈ・Ｌ・ハント氏に始まる100年を超える歴史が横たわっている。
1889年にイリノイ州で生まれたＨ・Ｌ・ハント氏は、若くして家を離れ、20代前半にアーカンソー州で綿花の取引を始めた。ビジネスでもポーカーでも大胆な勝負を好んだ同氏は、やがて綿花から石油へと軸足を移していった。
1930年、ハント氏はテキサス州東部の土地を安価で取得し、売り手には将来の利益の一部を分配することを約束した。その後わずか２年足らずで、同地には数百本の掘削井戸が立ち並び、一族の石油帝国の礎となった。1948年には、米誌ライフが同氏を「全米一の富豪となる可能性を秘めた人物」と評した。
ハント氏の15人の子どものうち、数人が家業を継承。そのうちの１人がネルソン・バンカー・ハント氏だ。2014年の米紙ニューヨーク・タイムズの訃報記事によると、同氏はリビアやメキシコ、フィリピンへの事業拡大を主導したほか、牧場や高層ビル、競走馬など多岐にわたる分野で資産を築いた。
1970年代、ネルソン氏は兄弟とともに世界の銀市場の支配を試みた。しかし、この賭けは大きく裏目に出て、金融市場に激震を与え、一族が手がけていた多くの事業が破産に追い込まれる結果となった。
しかし一族はその後に立ち直り、Ｈ・Ｌ・ハント氏の子孫の多くはダラスやシカゴ、カンザスシティーなどで影響力を持つ実業家として活躍している。米プロフットボールＮＦＬの強豪チーム、カンザスシティー・チーフスのオーナーもハント家だ。
ネルソン氏の娘と結婚したアルバート・ハドルストン氏は、エネルギー関連企業２社での勤務を経て、1990年に北米の石油・ガス資産に特化した投資会社エーソンを設立。息子のゴードン氏は金融業界での経験を積んだ後、2006年に同社に加わったという。
エーソンの顔であるゴードン氏は、テキサス州東部とルイジアナ州北部にまたがるヘインズビル盆地でシェールガス事業の拡大を主導してきた。現在、同社は同盆地で最も活発な掘削業者の一つだ。同地域は液化天然ガス（ＬＮＧ）輸出ターミナルが集積するメキシコ湾にも比較的近い。創業以来、エーソンおよび関連会社は累計で90億ドル超を投資してきた。
三菱商事との取引に合意すれば、これまでの投資に対する出口戦略を長年模索してきた父子の取り組みの集大成となる。ブルームバーグは2022年、エーソンが企業価値100億ドル超を見込んだ新規株式公開（ＩＰＯ）を検討中だと報じていた。事情に詳しい複数の関係者によれば、今年に入ってからはアブダビの国営石油会社がエーソンの天然ガス資産の買収を検討していた。
原題：Texas Oil Dynasty Targets Payout With $8 Billion Mitsubishi Deal（抜粋）
