▽2万円給付金、自治体は赤字に?住民サービス低下させかねない事情

参院選で与党が打ち出した国民への1人2万~4万円の現金給付に、支給事務を担う自治体の首長たちから不満の声が上がっている。
「自治体を疲弊させる話にうんざり」
公然とそう言う首長もいる。
しかも、かつて支給事務が「赤字」になった例もあるという。
実際にどんなしわ寄せがあるのか、現場を取材した。【平塚雄太、中村聡也】
「本来の業務ではない」のに駆り出され…
「住民サービスの向上や地域課題の解決に取り組む職員が駆り出されています。2020年の新型コロナウイルス禍で10万円を給付して以降、ここ数年はずっとそうした状況が続いています。これは『本来存在しない業務』なんです」
千葉市保健福祉局の丸山正明・調整給付担当課長はそう強調した。
丸山課長は本来、財政局の所属だ。
だが、国が物価高対策として導入した定額減税調整給付金の支給事務にあたるため、保健福祉局の担当課長も兼務する。
この給付金は、所得税と住民税の納税額が低くて定額減税では還元しきれない人を対象に、現金を支給する制度。定額減税は24年のみの実施だが、給付金の支給は24、25年度にまたがる。人口約98万人の千葉市では24年度に約15万人、25年度は約11万人が対象になった。
市役所では、この支給事務のために各課から職員をかき集めている。具体的な人数は明らかにできないというが、記者が案内された打ち合わせの場には少なくとも10人以上の職員がいた。
支給額は扶養人数に応じて数万円から20万円前後とバラバラ。そのため、さまざまなデータから対象者を選定したうえで、支給額を計算しなければならない。
その煩雑さを丸山課長はこう説明する。
「支給額の算定ツールは、デジタル庁がつくって各自治体に配布していますが、結局そこに合わせてデータを整理する作業が発生します」
支給額を計算したら、次は対象者に書類を郵送する事務がある。支給額を知らせ、受給の意思を確認するものだ。
さらに、市民からの問い合わせに対応するためのコールセンターを設ける仕事も発生する。
こうした過程で誤って支給するケースが起き、全国の自治体で問題となっている…
