▽EU、対米報復の発動を8月1日まで延期-日本やカナダと連携強化も<ロイター日本語版>2025年7月13日 23:02 JST
Andrea Palasciano
- さらなる対抗措置の準備も続け、あらゆる事態に備える-欧州委員長
- 日本やカナダと接触する方針で協調を打診する可能性があると関係者
欧州連合(EU)の執行機関、欧州委員会のフォンデアライエン委員長は、トランプ米大統領がEUに対し30%の関税を課すと表明したことを受け、さらなる協議を可能にするため、米国に対する報復措置の停止期間を8月1日まで延長すると発表した。
関連記事:トランプ大統領、EU・メキシコに30%関税通告-書簡で再び揺さぶり
この対抗措置は、トランプ氏が鉄鋼とアルミニウムに課した関税措置を受けてEUが採用したものだが、交渉を可能にするため一時停止されており、15日に自動的に発動される予定だった。
一方、トランプ政権がEUを含む貿易相手国・地域に新たな関税率の適用を相次いで警告する状況を受け、EUは関税の対象となる他の諸国との連携強化を準備している。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。
協議の非公開を理由に関係者が匿名を条件に語ったところでは、EUは日本やカナダを含む諸国と今後接触する方針で、協調を打診する可能性がある。
フォンデアライエン氏は13日にブリュッセルで記者団に対し、「同時に、さらなる対抗措置の準備も続けていく。あらゆる事態に備える」と述べた。さらに、EUは「交渉による解決」を望んでいると改めて強調した。
現在の報復措置の対象は、約210億ユーロ(約3兆6200億円)分の米国製品だが、さらに約720億ユーロ分の対抗措置も準備している。
EUの対抗措置の中で最も強力なツールである「反威圧措置(ACI)」については、現時点では使用されないと述べ、「ACIは特別な状況のために作られた」と説明、「まだその段階には至っていない」と続けた。
ドイツのメルツ首相は同日夜の公共放送ARDのインタビューで、交渉が合意に至らず30%の米関税が導入された場合、欧州最大の輸出国であるドイツ経済は深刻な打撃を受けるだろうと警告。「これを防ぐには、EUの結束と米大統領との十分な意思疎通が必要だ」と述べ、他のEU首脳らと緊密に連携していると語った。
報復措置の停止期間延長については、加盟国の承認が必要となる。
ブルームバーグが以前報じたように、EUと米国が今後数日以内に暫定合意を目指す中で、自動車および農産品の関税水準が主要な争点として浮上している。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。
関連記事:EUの対米関税交渉、農産物と車が争点に浮上-暫定合意へ調整続く
EUは農産品への関税について10%以下を求めている。一部の自動車メーカーが提案していた「相殺メカニズム」については、欧州委員会が生産拠点の米国移転につながりかねないとして懸念を示しており、現時点では検討対象に含まれていないという。
事情に詳しい関係者が匿名を条件に語ったところによると、EUの交渉担当者は自動車関税に焦点を当てた協議を進めている。
原題:EU to Extend Suspension of Countermeasures to Allow US Talks (1)、
EU Plans to Engage More With Other Nations Hit By US Tariffs、
EU to Extend Suspension of Countermeasures to Allow for US Talks(抜粋)
▽メキシコ、30%関税の回避に自信-合意に向け米国と既に協議開始<bloomberg日本語版>2025年7月14日 0:38 JST
Michael O’Boyle、Kevin Whitelaw
- 「米政府とは合意に達すると思う」-シェインバウム大統領
- 11日に自身のチームが米国との協議を開始した-演説で表明
メキシコはトランプ米大統領が12日に警告した新たな30%関税措置について、これを回避できると自信を示している。最悪の事態を避けるための協議が既に始まっているという。
トランプ氏が今回の関税計画をソーシャルメディア上で公表した後、メキシコのシェインバウム大統領は北部国境付近で演説し、トランプ氏が世界的な保護主義政策を進める中であらゆる国や地域が書簡を受け取っていると指摘。自身のチームは11日に既に米国との協議を開始したとし、合意の成立に自信を示した。
「こうした問題に関しては、ここ数カ月にある程度の経験を積んできた」とシェインバウム氏はバハカリフォルニア州エンセナダでの診療所開設式で発言。「米政府とは合意に達すると思う」と語った。
原題:Mexico Sure It Will Strike Deal With US to Skirt Tariffs (2)(抜粋)
▽トランプ米大統領、いら立ち隠さず-関税発動控え交渉の重大局面<bloomberg日本語版>2025年7月13日 9:37 JST
Josh Wingrove
- 時間かけた交渉を放棄し、一方的に関税率を決めるという脅し実行も
- 厳しい関税の回避を目指す各国の動き、発動前にさらに活発化

トランプ米大統領の掲げる上乗せ関税の発動が目前に迫る中で、米国の貿易相手は交渉の最終局面で難しい対応を迫られている。トランプ氏自身が、もはや交渉にしびれを切らしていると隠していないためだ。
欧州連合(EU)やインドを含め各国・地域の交渉担当者が制裁的な関税の回避に向け奔走する中で、トランプ氏は依然として一方的に関税率を定める書簡を送り続けている。ただし、多少の修正余地は残しているようだ。
トランプ氏はメキシコと欧州連合(EU)に対し30%の関税を課すと表明。新たな税率を通告する2通の書簡をソーシャルメディア上で12日に公開し、交渉で条件が改善されなければ8月1日から適用すると伝えた。
トランプ氏は、米国への合成麻薬フェンタニル流入を食い止めるメキシコの取り組みが不十分だとし、また米国の対EU貿易赤字は不公正だと非難。EUとメキシコの対応が不十分と見なせば、さらなる引き上げもあり得ると警告した。

こうした厳しい関税の回避を目指す各国の動きは、8月1日に多くの輸入税が発動されるのを前にさらに活発化するとみられている。
ベッセント米財務長官は日本を訪れる予定で、EUは自動車や農産品の関税を巡る暫定合意を目指し、交渉を加速させている。
今後数日間で、トランプ氏が一方的に関税率を設定する新たな通告を発する可能性もある。すでに交渉に値しないと判断した国々が対象となる見通しだ。
発動準備
トランプ氏の通商政策は大きな転換期を迎えている。同氏が推し進める関税戦略はこれまでで最も重大な局面を迎え、貿易相手のリスクも一段と高まっている。トランプ氏は今回の期限を最終と位置付け、強硬姿勢を一段と強めている。
ここ数日、トランプ氏のいら立ちは顕著だ。8月1日に向けて一連の関税発動を準備しており、日本や韓国といった長年の同盟国に対しても手を緩めていない。
国内の政治事情で交渉が難航している国も多く、トランプ氏はカナダのカーニー首相の懐柔策にもかかわらず一部関税を引き上げ、さらにはブラジルに対しては50%という異例の高関税を課した。

トランプ氏の姿勢は明確だ。時間をかけた交渉を放棄し、一方的に関税率を決めるという脅しを実行に移す意思があるということだ。そして、4月の発表時に市場を混乱させたような関税の新たな波が再び押し寄せようとしている。
米国との貿易に依存する国々にとって、トランプ氏の強硬路線が突き付ける「屈するか、対決するか」という難題にどう対応するか、その判断の猶予はほとんど残されていない。
トランプ氏自身は、関税率を一方的に決める方が好ましいと繰り返し述べており、ベッセント氏ら側近の忍耐を求める声だけがそれを引き止めている状況だ。
トランプ政権1期目で商務長官を務めたウィルバー・ロス氏はブルームバーグテレビジョンとの10日のインタビューで、「問題はトランプ氏が提示された内容を受け入れるかどうかだ。譲歩が少しでも上積みされるかどうか。そしてその中身が何かだ」と指摘し、トランプ氏は「最悪の場合、関税をそのまま発動する準備を十分している」と語った。
関税をちらつかせても土壇場で引っ込めると市場に見られてきたトランプ氏は、いわゆる「TACO(Trump Always Chickens Out=トランプはいつも尻込みする)」トレードに不満を示し、今回の延長が最後だと強調。
さらに、長らく検討していた銅に対する関税を50%と定め、8月1日から実施すると発表。幅広い派生品が対象となる見通しだ。また、医薬品に対しては200%の関税を検討中だとしている。
原題:Trump Patience on Tariffs Runs Thin as Nations Jostle for Deals (抜粋)
