▽石破首相が続投の意向を表明、参院選で与党過半数割れ確実と報道も

照喜納明美、梅川崇

  • 石破首相「比較第1党の責任を自覚」、森山氏は進退「首相と相談」
  • 野党の影響力拡大で財政に懸念、超長期中心に金利上昇圧力と指摘も

参院選は20日投開票が行われ、自民・公明の連立与党は非改選を含めた参院全体での過半数(125議席)を割り込むことが確実になった。石破茂首相は続投の意向を表明したが、政権基盤はさらに弱体化する。与党大敗で財政悪化懸念が広がり、市場が不安定化する恐れもある。

Japan Prime Minister Shigeru Ishiba Reacts To Election Results
自民党本部を離れる石破茂首相Source: Bloomberg

  NHKは開票速報で、与党は選挙前の66議席から大幅に減らし、参院全体での過半数維持に必要な50議席を確保できなかったと報じた。21日午前4時30分時点で与党は自民38、公明8の計46議席。野党は国民民主党が改選4議席から16議席、参政党が同1議席から13議席と大幅に増やした。立憲民主党は21議席と改選議席に届いていない。日本維新の会は改選と同じ6議席。なお5議席が確定していない。

  石破首相は20日午後10時30分頃、テレビ朝日の番組で「比較第1党の議席を頂戴するということの重さもよく自覚をしなければならない」との考えも示した。こうした発言は首相を続投する意思と受け止めていいかと問われ、「結構です」と語った。

  また、「人口減少、経済の構造を変えていく安全保障、地方創生、防災、そういうことにきちんとした道筋をつけていくということは国家に対する責任だ」とも発言。米国による25%の関税発動期限を8月1日に控え、国益実現のために全身全霊を尽くすとも述べた。赤沢亮正経済再生担当相が21日に訪米し、8回目の関税交渉に臨む予定もTBSの番組で明らかにした。

  今回の選挙で消費税減税を主張した野党各党が議席を伸ばし、慎重だった自民は大きく議席を減らした。野党の影響力拡大で、予算や税制を含めた政策決定時に妥協を迫られる事態も想定される。衆院に加え参院でも与党が過半数割れすることで、今後の政局は極めて不安定になる。首相は続投に意欲を示したが、党内から首相の責任を問う声が上がる可能性がある。

債券安・円安圧力

  選挙前から報じられていた過半数割れが現実になり、財政悪化懸念による債券安・円安圧力が今後、強まることもあり得る。21日早朝の外国為替市場はやや円高に振れてはじまった。日本は祝日のため債券と株式市場は休場だ。

  みずほ証券の松尾勇佑シニアマーケットエコノミストは20日、為替動向については先週末までに与党の過半数割れは織り込まれていたと指摘。その上で、石破政権が続投となれば「金融政策の当面に関してはあまり変わらない」との見方を示した。

  祝日明けの株と債券市場の反応としては政権の不安定化でリスクオフの株安、野党の影響力拡大による財政リスクで超長期を中心に金利に上昇圧力がかかるだろうと指摘した。石破首相が本当に続投するのであれば、変動幅は押さえられそうだとの見方を示した。

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Japan Prime Minister Shigeru Ishiba Reacts To Election Results
自民党の森山裕幹事長Source: Bloomberg

  自民の森山裕幹事長は20日夜、選挙結果について「責任は非常に感じている」としつつ、自身の進退については石破首相と「よく相談をしたい」と述べるにとどめた。小野寺五典政調会長も「大変厳しい結果になる」との見通しを示した。今後の政権運営への影響については議席確定後、「分析をし、党内でしっかり議論していきたい」と語った。いずれもNHKの番組で発言した。

  仮に続投した場合、国会運営では連立の枠組み拡大を含め、従来以上に野党の協力が必要となる。ただ、立民の野田佳彦代表はテレビ東京の番組で、明らかに民意は石破内閣に不信任を突きつけたと指摘した。国民の玉木雄一郎代表はテレビ朝日で「石破政権と組むことはあり得ない」と述べ、連立の可能性を否定した。

  自公が参院で過半数割れするのは2013年の選挙以降で初めて。与党が衆参両院で少数となるのは1994年4月発足の羽田孜内閣以来。羽田首相はわずか2カ月で政権運営に行き詰まり、退陣に追い込まれた。

  総務省が発表した20日午後7時30分時点の投票率は全国平均で29.93%と前回(2022年)を0.65%下回った。一方、19日まで行われた期日前投票では2618万人超が投票を済ませた。過去最多で有権者の約25%に当たる。

  前回の最終的な投票率は52.05%と4回連続で55%を下回った。与党が過半数割れした第1次安倍晋三政権下の2007年参院選は58.64%だった。

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