▽関税交渉で火花散らした閣僚の認識にズレ…「25%」で揺さぶるベッセント氏、「議論の記憶ない」と赤沢氏<読売新聞オンライン>2025/07/25 05:00

22日、米ホワイトハウスがXで「日本との大規模な合意」として公開した画像

[合意 15%関税]<上>

 「四半期ごとに評価し、大統領が不満を持つようなら、自動車を含む製品すべてに、25%の関税率をブーメランのように適用する」

 日米関税交渉で統括役を務めたベッセント米財務長官は23日、米FOXニュースのインタビューで言い放った。日米関税交渉が合意に至り、トランプ米大統領の強硬姿勢が和らいだと 安堵あんど した日本政府や企業に衝撃が広がった。22日、米ホワイトハウスがXで「日本との大規模な合意」として公開した画像

 ベッセント氏は「25%の関税率では、特に自動車において、日本経済は機能しなくなるだろう」とも語り、揺さぶりをかけた。

 交渉を終えて帰国した赤沢経済再生相は羽田空港で記者団に「日米間の合意をどう実施していくのか、その実施の確保の仕方みたいな議論はした記憶がない」と述べた。交渉で火花を散らした閣僚同士の認識の食い違いは、両国の火種となりかねない。

 「日本で米国の車は一台も見かけなかった。日本の車は米国中を走っている。どういうことなんだ」

 トランプ氏は一貫して、日本の自動車産業を「不公平な貿易」の象徴とみなしてきた。自動車への追加関税をかけても日本車の輸出が減らなければ、米国のメーカーや製造業労働者の不満が高まりかねない。来年の中間選挙を見据え、有権者をつなぎとめるためにも、今後再び、日本に自動車関税の引き上げをちらつかせる可能性がある。

 米国が打ち出す分野別の関税を巡り、日本政府が今後、米国との交渉を迫られる場面も予想される。

 トランプ氏は7月8日、医薬品に200%の関税を課す考えを示した。米国は世界全体の医薬品売上高の4割強を占める最大の市場で、日本メーカーの売上高に占める比率も高い。米政府は半導体への追加関税も検討中だ。日本企業が強みを持つ半導体製造装置の対米輸出額は約5300億円に上り、日本経済への影響が膨らみかねない。

 巨大市場を抱える有利な立場を利用して1対1のディール(取引)を仕掛けるトランプ流の交渉術について、日本貿易振興機構(ジェトロ)の石黒憲彦理事長は24日、「世界貿易機関(WTO)で当たり前だったルールが完全に無視されている」と嘆いた。経済官庁幹部は「一国では限界がある。欧州連合(EU)など同じ価値観を共有する国・地域との連携を深めなければならない」と指摘する。

▽日本の履行を四半期ごとに精査、「トランプ氏が不満持てば25%に戻る」…ベッセント財務長官<読売新聞オンライン>2025/07/24 22:08

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トランプ政権が公表した日米関税合意の概要

田中宏幸
木瀬武

 【ワシントン=田中宏幸、木瀬武】米国のトランプ政権は23日、日米関税交渉の合意内容の概要を公表した。日本による米国産コメの輸入拡大、5500億ドル(約80兆円)の対米投資、防衛装備品の追加購入が柱で、ベッセント米財務長官は同日、日本が順守しなければ対日関税率を15%から25%に戻すとの考えを示した。22日、米ホワイトハウスがXで「日本との大規模な合意」として公開した画像

 公表文によると、農産物は、日本が「ミニマムアクセス(MA)」と呼ばれる無関税の枠内で、輸入量を即時に75%増やす。昨年度はMA米の輸入枠77万トンのうち米国は34・6万トン(45%)を占めた。

 5500億ドルの対米投資は、半導体や医薬品の製造、重要鉱物の精製、造船など経済安全保障上、重要な産業基盤を強化するために資金が充てられる。一連の投資に伴う利益の90%は米国が得るとも明記した。

 レビット大統領報道官は23日の記者会見で「もともと4000億ドルの投資だったが、トランプ大統領がその後1500億ドルの増額交渉を行った」と説明した。

 製造・航空宇宙分野では、毎年数十億ドル分の米国製防衛装備品の追加購入や、米ボーイング社製の航空機100機の購入を確認した。

 ベッセント氏は23日の米FOXニュースのインタビューで、日本の履行状況を四半期ごとに精査する方針を明かし、「トランプ大統領が(履行状況に)不満を持つようなら、自動車や他の日本製品全般への関税率は25%に逆戻りする」と警告した。

 最大の焦点だった「相互関税」は、8月1日から日本に適用するとしていた税率25%を15%に引き下げると明記した。一方で、自動車関税の税率には触れておらず、対日関税率の引き下げに反発する米国の自動車業界に配慮した可能性がある。石破首相は23日、輸入自動車への追加関税は25%から12・5%に半減し、乗用車への関税率は基本税率の2・5%と合わせて計15%とすることで米国と合意したと説明している。

 日本政府は8月1日までに、税率を15%とする合意文書を両国間でまとめたい考えだ。同日に25%の追加関税がかけられるのを確実に避ける狙いがある。

 米国による一連の関税協議では、英国が既に貿易協定を発効させ、ベトナムが貿易協定の締結に合意し、インドネシアは貿易協定の「枠組み合意」に至っている。ただ、日本は第1次トランプ政権時に法的拘束力のある日米貿易協定を結んでおり、新たな協定の締結は行わないとみられる。