▽米・EUが貿易協定で合意、トランプ氏とフォンデアライエン氏発表<bloomberg日本語版>2025年7月28日 2:48 JST

Alberto Nardelli、Suzanne Lynch、Jorge Valero

  • 自動車を含め15%の関税を賦課へ、医薬品などは除外とトランプ氏
  • フォンデアライエン委員長、「安定と予測可能性」もたらすと評価

米国と欧州連合(EU)は27日、自動車を含む大半のEU輸出品に15%の関税を賦課する貿易協定で合意した。世界経済に打撃を与えかねない貿易戦争を回避した。

  8月1日には高率の関税が発動する予定だった。トランプ米大統領は5月の時点で、ほとんど全てのEU輸出品目に50%の関税を課すと示唆し、交渉への圧力を強めたが、その後税率を30%に引き下げていた。この日の合意はトランプ米大統領と欧州委員会のフォンデアライエン委員長の会談後に発表された。

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欧州委員会のフォンデアライエン委員長(左)とトランプ米大統領(右)Photographer: Brendan Smialowski/AFP/Getty Images

  外国為替市場ではユーロが主要10通貨に対して上昇。対ドルでは一時、0.2%高い1ユーロ=1.1767ドル。対円でも0.2%上昇し1ユーロ=173円73銭。スイス・フランに対しては0.5%高い1ユーロ=0.9383スイス・フランとなった。

  シテ・ジェシオンの投資戦略者、ジョン・プラサール氏は合意について「株式市場に最も求められているもの、つまり可視性を取り戻すのに十分良好だ」と述べた。

  「関税がエスカレートするリスクはもうなくなった。マクロ経済に関する大きな不安材料が消えた。投資家にとっては安心できる兆候だけではない。青信号だ」と述べた。

  トランプ米大統領は関税の対象には「自動車とその他全て」が含まれると述べた。欧州委員会のフォンデアライエン委員長は関税率には「全てが含まれる」と述べたが、トランプ氏はその後で、医薬品と金属は含まれないと指摘した。鉄鋼とアルミニウムに関しては「これまで通りだ」とトランプ氏は続けた。

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  「これでディールは基本的にまとまった」とトランプ氏はスコットランドのタンベリーに所有するゴルフリゾートで記者団に述べた。「これまでで最大のディールだ」と話した。

  フォンデアライエン委員長は合意によって「安定」と「予測可能性」がもたらされると評価した。

  トランプ大統領によると、EUは7500億ドル(約110兆7700億円)相当のエネルギーを購入し、既存の対米投資に6000億ドルを上乗せするほか、米国との貿易において加盟国市場をゼロ関税で開放することに同意した。「大量の」軍事装備品も購入するという。

  会談前の段階で、EUは15%の輸入関税は大半の医薬品にも適用されると予想していた。医薬品は交渉における重要な争点となっていた。

  トランプ米大統領は数カ月前から貿易相手国の大半に対し、関税引き上げを通告。目的は米国の貿易赤字を縮小させることだった。しかし関税の行方やトランプ氏の予測不能な言動で、資本市場は神経質になっていた。

  米・EUが合意したことで、1兆7000億ドル規模の通商が絡む貿易戦争という重大リスクが、市場と世界経済から取り除かれた。それでもEUからの対米輸出が、依然より高い関税を課されることに変わりはない。

  フォンデアライエン委員長は「発端は不均衡だった」と指摘。「貿易の不均衡を是正することが望ましかった。しかも米欧の貿易が継続されるやり方での是正が望まれた。2大経済圏間の通商が良好でなくてはならないからだ」と述べた。

  EUと米国は数カ月にわたる交渉とシャトル外交を続けていた。今月に入りトランプ大統領が関税率を30%に引き下げ、両者の合意は近いとみられていた。

  EUは合意不成立の可能性に備えていた。8月1日からEU製品に30%の関税を賦課するとの脅しをトランプ大統領が実行に移す場合、EUも速やかに同率の関税を約1000億ユーロ相当の米国製品に課す計画だった。

原題:EU, US Reach Deal to Avoid Trump Tariff Hike Before Deadline (4)(抜粋)
原題:Euro Quoted Higher vs. G-10 Peers After EU, US Reach Trade Deal(抜粋)
原題:Stock Investors Expect Rally as Europe Clinches US Trade Deal(抜粋)

▽トランプ関税、中国の迂回阻止目指す現地調達要件は依然不透明<bloomberg日本語版>2025年7月26日 18:21 JST

  • 中国供給網を標的にした懲罰的関税、アジア輸出業者は回避策読めず
  • トランプ政権は明確な説明せず-貿易相手国と協議中と関係者

トランプ米大統領による一連の新たな貿易合意により、アジアの輸出業者には関税について一定の明確さが生じたが、中国のサプライチェーン(供給網)を標的にした懲罰的な関税をどう回避できるかという肝心な点は依然として不透明なままだ。

  トランプ氏はベトナムには20%、インドネシアとフィリピンには19%の関税を発表し、米国が東南アジア諸国の大部分に対してこの水準の関税率を適用する意向を示した。東南アジアは年間3520億ドル(約52兆円)相当の製品を米国に輸出している。

  さらに、トランプ氏はこれらの国を経由して再輸出されたとみなされる製品については、関税率を40%まで引き上げることも辞さないとしている。これは、中国製品が米国の高関税を回避するのを防ぐ狙いがある。

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トランプ米大統領Photographer: Al Drago/Bloomberg

  しかし、製造業者にとって依然として不透明なのは、米国が「現地調達要件」をどう計算・適用するかだ。これが再輸出品と判断されるか否かの鍵を握る。東南アジア諸国は中国の部品や原材料への依存度が高く、この地域から調達する米国企業も追加関税の打撃を受けかねない。

  シンガポールのヒンリッヒ財団で通商政策責任者を務めるデボラ・エルムス氏は中国製品の排除を目的としたとみられるトランプ氏の関税について答えが出ていない問題がいくつかあると指摘。原材料なのか、原材料の一定割合か全てかといった疑問を挙げた。

  インドネシアとの先週の合意では、第三国が利益を得ないよう「原産地規則」の交渉を進めるとされた。今月初めにまとまったベトナムとの合意では、迂回品に対し最大40%の関税が適用されることが示された。

  現時点で米政府は、この問題について明確な説明を行っていない。事情に詳しい関係者によると、米当局は現在も貿易相手国と協議を進めており、単に輸入部品を組み立てたに過ぎない輸出としない要件を検討中だという。

  トランプ政権高官は今週、迂回品への対応方針について、上乗せ関税発動期限に当たる8月1日より前に詳細を発表する見通しだと述べた。

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原題:Trump Tariffs Leave Costly China Supply Question Unanswered(抜粋)

▽韓国、対米通商交渉で相互に合意可能な協定案準備 大統領府声明<ロイター日本語版>2025年7月27日午後 2:45 GMT+9

韓国、対米通商交渉で相互に合意可能な協定案準備 大統領府声明

[ソウル 26日 ロイター] – 韓国は、28日からの週に予定されている閣僚級会談と8月1日の米国の関税保留期限を前に、米国と相互に合意可能な貿易パッケージを準備すると、大統領府が26日に発表した。

声明文によると、このパッケージには、ラトニック米商務長官が高い関心を寄せている造船協力が含まれる予定。ラトニック氏は25日、韓国の金正官・産業通商資源相と協議した。 もっと見る

協議は24日の会談に続くもので、両者は8月1日までに貿易協定を結ぶという方針を再確認した。25日には本来、米韓高官協議が予定されていたが、ベセント米財務長官のスケジュールの都合により中止になった。 もっと見る

25%の関税に直面している韓国は、日本の15%と遜色のない合意を実現するよう圧力が高まっている。魏聖洛国家安保室長は最近、ハイレベル会談のために訪米、産業通商資源省の呂翰九通商交渉本部長も交渉のため米国入りしている。

韓国の具潤哲企画財政相と趙顕外相は28日からの週、ベセント米財務長官、ルビオ米国務長官とそれぞれ会談する。