Suvashree Ghosh
- 借り入れを伴うポジションおよそ10億ドル相当が強制精算、下げ加速
- 円キャリー巻き戻し加速の観測、リスク資産を圧迫する傾向-CoinEx
暗号資産(仮想通貨)が1日の取引で急落。借り入れを伴うポジション約10億ドル(約1550億円)相当が清算され、広範に及ぶ売りが加速した。
ビットコインはニューヨーク時間に一時8%安の8万3824ドルまで下落。年初来の下落率は9%余りに達した。イーサは一時10%安の2719ドルに沈み、昨年12月からは18%下落となっている。規模が小さく流動性の低い暗号資産は一段と厳しい展開だ。デジタル資産の時価総額上位100銘柄のうち下位50銘柄を追跡するマーケットベクター指数は、年初来で約70%急落している。
暗号資産市場は10月初旬の強制清算の連鎖が発生して以降、不安定な地合いが続いている。11月には17%下落したが、先週には売り圧力が和らぎ9万ドル台を回復していた。
だが、この日の売りを受けて、一段の急落リスクに対する警戒が高まっている。
ファルコンXのアジア太平洋デリバティブ責任者ショーン・マクナルティ氏は「12月はリスクオフの幕開けだ」と指摘。「最大の懸念は、ビットコイン上場投資信託(ETF)への資金流入に乏しく、押し目買いが不在なことだ。今月も構造的な逆風が続くとみている。ビットコインの次の重要な支持線として8万ドルを注視している」と話した。

週明けの米株市場が弱含む中で、広範なマクロ要因の変動による影響も受けた。日本銀行の植田和男総裁による12月利上げの可能性を示唆する発言を受けて、日本株・債券が大きく下落。円は対ドルで上昇した。
CoinExのチーフアナリスト、ジェフ・コー氏は「マクロ環境では、日本国債の利回り上昇が追加の重しとなった。円キャリートレードの巻き戻しが加速する可能性を市場が織り込み始めており、歴史的にこうした動きは仮想通貨を含む世界のリスク資産を圧迫する傾向がある」と述べた。
フローデスクの店頭(OTC)トレーダー、カリム・ダンダシー氏は「12月に入り、投資家の焦点は世界の金融政策の行方に移っている」と指摘。「12月の米利下げ観測がいったんは30%まで低下してパニックに陥ったが、現在は米連邦準備制度理事会(FRB)が再び利下げに向かうとの見方が強まっている。一方で、日銀は利上げに踏み切る可能性が高まっている」と述べた。
ビットコインを大量に保有するストラテジーはこの日、今後の配当や利払いに備えて14億ドル(約2200億円)の準備金を設けたと発表した。保有するビットコインの売却を迫られるとの懸念を和らげる狙いがある。ただ、不安払拭(ふっしょく)には至っておらず、同社株価は一時12%下落した。
関連記事:ビットコイン積極投資の米ストラテジーが株価急落、一時12%安
新たな準備金はクラスA普通株の売却資金で賄われ、少なくとも今後21カ月分の配当支払いを手当てできると同社は説明。また今後は、最長で2年分の支払いを賄えるだけの資金を準備金として維持する方針だという。
一方、ブルームバーグのデータによると、米国の現物ビットコインETFは先週7000万ドルの流入にとどまった。過去1カ月では約46億ドルが流出。その大半はiシェアーズ・ビットコイン・トラストからだった。投資家は同ファンドから5週連続で資金を引き揚げており、2024年1月の上場来の長期流出局面となっている。
原題:Crypto Downturn Wipes Out Nearly $1 Billion in Levered Bets、Strategy’s Dollar Reserve Fails to Soothe Bitcoin-Sales Concern(抜粋)
