• ワイルズ大統領首席補佐官、米誌ヴァニティ・フェアとインタビュー
  • エプスタイン文書の取り扱いや関税発表の内幕にも言及
Congo, Rwanda Sign US-Backed Peace Deal To End Decades Of War
Photographer: Yuri Gripas/Abaca/Bloomberg

Meghashyam Mali

ワイルズ米大統領首席補佐官は米誌ヴァニティ・フェアとのインタビューで、電気自動車(EV)大手テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)を「公然たる」薬物常用者と表現。マスク氏以外にも言及し、トランプ政権の内情について率直な批判を展開した。

  ワイルズ氏はバンス副大統領を「陰謀論者」、ボート行政管理予算局(OMB)局長を「熱心な右翼狂信者」と呼んだほか、エプスタイン文書の取り扱いをめぐってボンディ司法長官を厳しく批判した。エプスタイン氏は未成年の性的人身売買などで起訴され、2019年に収監先で死亡した。

  ホワイトハウスは直ちに反論に動いた。ワイルズ氏本人はソーシャルメディアへの投稿で「重要な文脈が無視された」とし、「意図的な攻撃記事だ」と非難した。

  レビット報道官はワイルズ氏への支持を表明し、「スージー(ワイルズ氏)ほどトランプ大統領への忠誠が強い顧問はいない」とXに投稿した。

  「トランプ政権は一丸となってワイルズ氏の安定したリーダーシップに感謝し、全面的に支持している」とレビット氏は続けた。

  インタビューは1年かけて複数回行われたもので、ワイルズ氏はマスク氏について「完全に単独行動を取る人だ」と述べ、「ついて行くことが同氏と向き合う上での試練だ」と語った。

  これを受けたニューヨーク・ポスト紙のインタビューで、トランプ大統領は記事を読んでいないと前置きした上で、ワイルズ氏に「アルコール依存症的な性格」だと表現されたことを、別に不快に思わないと述べた。

  トランプ氏は自分が酒を飲まないことは周知の事実だと述べ、「もし酒を飲んでいたら、アルコール依存症になっていた可能性が高いと、これまでに何度も述べてきた」と発言。ワイルズ氏が言いたかったのは恐らくそういうことだろうと述べた。

  トランプ氏はニューヨーク・ポスト紙とのインタビューで、ワイルズ氏に関する記事は「インタビュアーが意図的に誘導した結果だ」と批判した。

  首席補佐官に全幅の信頼を置いているかと問われ、「素晴らしい人だ」とトランプ氏は回答した。

  ホワイトハウスは火消しに務めているものの、今回のワイルズ氏インタビューは大きな反響を呼んでいる。大統領とその政策に対する疑問を再び呼び起こし、マスク氏との対立など、いったん収束しかけた問題が再燃する可能性がある。

ヒトラーとケタミン

  ヒトラーやスターリン、毛沢東の時代に数百万人が死亡したのは公共部門の労働者に責任があると、マスク氏がXに投稿したことについて、ワイルズ氏は見解を求められ「彼はその時(ケタミンを)少量使用していたのだと思う」と回答した。ただしマスク氏の薬物摂取について、直接の認識はないと話した。

  マスク氏とテスラの広報担当者にコメントを求めたが、現時点で返答はない。マスク氏のケタミン摂取については米紙ニューヨーク・タイムズが今年報じている。

  マスク氏は今年、政府効率化省(DOGE)を率いて連邦政府機関の人員と役割を大幅に削減し、その衝撃はワシントン内外に広がった。

  トランプ大統領が守りたかったプログラムをマスク氏が閉鎖した際、ワイルズ氏は「仰天し」、マスク氏に抗議したという。

Elon Musk Speaks At America PAC Town Hall Ahead Of Wisconsin Supreme Court Election
イーロン・マスク氏Source: Jamie Kelter Davis

  「やるならすぐやる、というのがイーロンのやり方だ」とワイルズ氏はヴァニティ・フェアに語った。「そうした態度ではお皿が何枚割られるか分からない。まともな考え方の人で、米国際開発局(USAID)の閉鎖に賛成する人はいなかった」と述べた。

  マスク氏はトランプ政権を離れ、自身の政党を立ち上げると示唆し、トランプ氏との関係はいったん悪化した。しかしそれも現在では修復しつつあるようだ。アクシオスはこの日、2026年の中間選挙に向けマスク氏が共和党の議会キャンペーンに資金提供を開始したと、事情に詳しい関係者の話として報じた。マスク氏はさらに寄付を増やす意向だという。

エプスタイン文書

  ワイルズ氏はヴァニティ・フェアとのインタビューで、エプスタイン文書の扱いについてボンディ司法長官を批判した。ボンディ長官は2月、「エプスタイン文書:フェーズ1」との表題が付いたバインダーを保守系インフルエンサーのグループに配布し、トランプ大統領の支持者たちを沸かせた。

  しかしボンディ氏が公開したファイルには既出の情報しか含まれていなかった。同氏はその後FOXニュースに対し「エプスタイン氏の顧客リストは私の机の上にある」と発言し、さらに論争を呼んだ。だが司法省と連邦捜査局(FBI)は転じて、エプスタイン氏が顧客リストを保持していた事実はなく、これ以上文書を公開する予定はないと述べた。この対応はトランプ支持層の一部からの反発を招いた。

  ワイルズ氏はヴァニティ・フェアとのインタビューで「最初に彼女が渡したのは『中身のない情報の詰まったバインダー』だった。その後に証人リスト、もしくは顧客リストが自分の机の上にあるとも発言した。顧客リストなんてものは存在しないし、彼女の机の上にもなかった」と語った。

  さらに自身もエプスタイン文書を読んでおり、トランプ氏の名前はそこに言及されていたと発言。「何らかのひどい行動をしていたとは書かれていない」とこのインタビューで述べた。

  トランプ大統領は11月、司法省にエプスタイン文書の公開を命じる法案に署名した。

バンス副大統領

  かつてトランプ氏を批判していたが、同氏のポピュリスト路線を受け入れて副大統領にまで上り詰めたバンス氏についても、ワイルズは率直に語った。

  「上院選に出馬した時に転向したと思う。その転向はどちらかというと政治的なものだった」とワイルズ氏は語った。

  バンス副大統領は16日、ペンシルベニア州でのイベントで、ワイルズ氏のインタビュー記事には目を通していないが内容については聞いていると述べ、同氏を擁護した。

  「私は時に陰謀論者になるが、真実だと思われる陰謀論だけを信じている」とバンス氏は語った。「このことについてスージー(ワイルズ氏)とは、公私を問わず冗談を言い合ってきた」と述べた。

  「われわれは意見が食い違うこともあるが、共通する考えのほうがはるかに多い。それに彼女が米大統領に対して不忠なところを私は一度も見たことがない。それこそが、彼女が大統領にとって最高の首席補佐官である理由だと思う」と付け加えた。

  今回のインタビューで、ワイズ氏はトランプ氏が敵視するニューヨーク州のジェームズ司法長官とコミー元FBI局長が起訴されたのは、政治的な報復だと認めた。ワイルズ氏はこうした「仕返し」は就任後最初の3カ月に限定するよう、大統領に要請したという。

New York Attorney General Letitia James Appears In Federal Court Over Indictment For 2020 Mortgage
ニューヨーク州のジェームズ司法長官Photographer: Win McNamee/Getty Images

  ワイルズ氏はまた、4月にトランプ大統領が発表した上乗せ関税についても率直に語った。この関税はトランプ政権の看板政策であり、市場で激しい反応を引き起こした。大統領は発表から数日後、さらなる交渉のため関税を一時停止した。

  「(トランプ氏は)心の中で考えていることを声に出しているようなものだ」とワイルズ氏は語った。この関税が良策かどうかをめぐっては側近の間で「激しい対立」があったという。

  ワイルズ氏は大統領による関税発表を遅らせようとバンス副大統領に働きかけたが、調整は失敗したと述べた。同氏はこの過程を「予想以上に苦痛だった」と表現しながらも、最終的にトランプ氏の手法が成功を収めると4月の時点では予測していたという。

  最近の世論調査では、トランプ氏の支持率が低下し、有権者が大統領の経済政策に新たな不安を感じていることが表面化している。

原題:Trump Chief Calls Musk Drug User, VP ‘Conspiracy Theorist’ (2)(抜粋)