• 日銀総裁会見以降の為替の動きは「ファンダメンタルズではなく投機」
  • 9月の日米財務相共同声明に基づいた措置取れる-「常に万全の態勢」
片山さつき財務相(12月22日)
片山さつき財務相(12月22日)Photographer: Shoko Takayasu/Bloomberg

Takashi UmekawaErica Yokoyama

片山さつき財務相は、為替の過度で無秩序な変動に対し、断固として措置を取る用意があるとし、市場介入も辞さない姿勢を示した。22日にブルームバーグの単独インタビューに応じた。

  片山財務相は、日本銀行の植田和男総裁の19日午後の記者会見後に進んだ円安について、「非常に短い時間での動き。完全にファンダメンタルズではなくて投機だ」と指摘。このような動きに対して、9月の日米財務相共同声明に基づき「断固として措置を取る、アクションを取るということを申し上げている」と語った。

  為替介入も含めた行動を取れるということは日米財務相間の合意事項であり、「フリーハンドがあるということだ」と説明。年末年始で取引が薄くなる中でも、「常に万全の態勢」が整っているとした。状況はその都度異なるため、介入の手法に定型のパターンはないとも述べた。

  片山財務相は11月、円安を巡り、同声明に沿って対応すると述べ、けん制度合いを一段と強めていた。同声明には、為替介入は過度な変動への対応に限定すると明記。今回の発言は、為替相場がファンダメンタルズからかい離したとみなされる場合の介入の正当化を改めて強調した格好だ。

  日銀は19日、政策金利を30年ぶり高水準の0.75%に引き上げ、今後も利上げ路線を継続する姿勢を維持した。ただ、総裁会見で追加利上げ時期の不透明感などが意識されて円安が進行。海外時間に1ドル=157円台後半と年初来安値に接近した。米国の利下げに続く日銀の利上げで日米金利差は縮小したものの、円売り圧力は続いている。

  政府・日銀は昨年、円が160円前後で推移していた局面で4回にわたり円買い介入を実施。市場ではこの水準が介入に踏み切る目安として意識されている。

  片山財務相の発言が報じられた後、為替市場では円が上昇幅を拡大し、一時156円80銭台を付けた。報道前は157円30銭台で推移していた。午後10時20分時点では157円20銭台となっている。  

金利上昇

  円安が進む一方、長期金利(新発10年債利回り)は上昇の一途をたどる。日銀の利上げを経て、22日には一時2.1%と1999年2月以来の高水準を付けた。「金利のある世界」に戻る中で、責任ある積極財政を掲げる高市政権が市場でくすぶる財政悪化懸念をどう払しょくするかが課題だ。

  政府は2026年度当初予算案を今週にも閣議決定する見通しで、編成作業は大詰めを迎える。片山財務相は、新規国債の発行額などの具体的な数字には言及しなかったものの、「市場に迷惑をかけるようなものにはならないと確信している」と強調した。

  金利上昇は利払い費の増加を通じて予算編成上の重しにもなる。国債利払い費の前提となる積算金利は、実際の市場動向を踏まえて算出するため、今年度当初予算の2.0%よりは高くなると指摘した。

  NHKによると、来年度の当初予算案は一般会計総額が過去最高だった25年度の115.5兆円を上回り、120兆円超に達する見通し。高齢化に伴い社会保障費が増えるほか、金利の上昇で国債費の増加が見込まれる。

  国債費は25年度当初予算で28兆円超と全体の約4分の1を占める。今後、金利上昇に伴って国債費が膨らんでいけば、予算編成の自由度が損なわれる恐れがある。

  片山財務相は、債務管理政策について「予測可能性を持たせて計画を作っており、市場関係者との絶え間ない対話がきちっとできている」と発言。市場の信認が失われないように努める考えだ。

  高市政権は、財政健全化の指標として、単年度の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)黒字化ではなく、債務残高対国内総生産(GDP)比の引き下げを重視する姿勢を示している。

  積極財政に転換すれば、初年度は財政の数字の中で悪くなるものがあることは認識済みだという。「そこが問題ではなく、何をやっても経済成長率が全然上がらない状況を10年、20年、30年と繰り返してきて、今までと同じことをやってもしょうがない」と説明。集中投入して成長力を高める方に大きくかじを切る必要性を強調した。

1:08片山さつき財務相は、日本銀行の植田和男総裁の会見後に進んだ円安について、ブルームバーグのインタビューで「完全にファンダメンタルズではなく投機だ」と指摘した。その上で、日米共同声明に基づき「断固として措置を取る、アクションを取るということを申し上げている」と述べた。

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