円ドル相場が揺れている。先週末、金融政策決定会合が終了し、植田総裁の記者会見が始まった直後から円の急落が始まった。一時159円台へ。その直後に異変が起こった。日米で円相場が急騰しはじめたのだ。「スワ、政府の円買い介入か」、あわてたディーラーが円買いポジションを手仕舞いはじめた。円安傾向を強めていた円はここで反転。急激な円高がはじまった。大半のディーラーが円売り・ドル買いのポジションを大量に抱えていた。一部の市場関係者は「政府による円買い介入が始まったのでは・・・」と疑った。疑念は疑念を呼ぶ。為替市場の趨勢は円買い一色。円相場はあっという間に154円台に跳ね上がった。高市総理はこの間、「急激な円安は好ましくない。投機的な動きには強力な対抗措置を講じる」と、市場の沈静化に務めた。担当の片山財務相も「市場の動きを極めて注意深く見守っている」と牽制した。三村財務官も「あらゆる手段を排除せず」と強調している。
介入について片山財務相は確認を拒否、あるともないとも公言しなかった。当然だろう。介入を認めることは市場心理を安心させる効果がある。為替ディーラーにしてみれば介入があったか、なかったか、わからないことが為替の先行きを予測する上で最大の不安材料になる。これまでの介入は「直後に介入を認める」ことによって、円相場の安定化を狙った。だが、この手法は市場を覆っている投機機運を抑制することにはつながらなかった。たとえば、160円を超えると政府は介入するということがあらかじめわかっていれば、160円近辺までは安心して円売りが可能になる。片山財務相も三村財務官も、介入をめぐる記者の質問に回答を拒否した。市場は不安感を解消できなかった。そのせいかどうかわからないが、週明けの円相場は155円台と、20日の水準(この日も乱高下した)で取引が始まった。前週末に比べれると市場は、少し落ち着きを取り戻したように見える。円売りに突っ込めなくなったようだ。
では、基本的な円相場の先行きは円高か、円安か。これがなかなか難しい。素人目には「責任ある積極財政」が常態化し、「強い日本経済が復活」すれば、円相場は必然的に円高に向かうとみる。だが現実は円安が進行している。先週末の動きで急激な円安はとりあえず抑えられたが、基調的に依然として円安だ。なぜだろう。高市政権の政策が実現するには時間がかかる。タイムラグが存在するのだ。その間、積極財政に伴う財政悪化懸念が先行して市場を支配する。経済に強い日経新聞が積極的に財政悪化を喧伝している。ここもザイム真理教に犯されている。主要メディアが円安懸念を吹聴すれば、世界中のディーラーが円安のポジションを構築する。メディアもディーラーも何年かのちには円高論者になるだろう。それまではザイム真理教の信者として財務省に忠誠を誓う。折から衆議院が解散された。だが政策論議は低調で、タイムラグを乗り越える施策を議論する政治家はほとんどいない。かくして円安は中々止まらない。これを円安バイアスという。
