▽しらけた大阪ダブル選 党内むしばむ「独裁体質」と「ひずみ」松井一郎氏が見た維新の弱点<産経ニュース>2026/2/21 10:30

維新創設者、松井一郎氏インタビュー詳報(上)

江森 梓

大阪府知事・大阪市長のダブル選で当選を確実にし、記者会見に臨む吉村洋文氏(左)と横山英幸氏=8日午後、大阪市北区(彦野公太朗撮影)
大阪府知事・大阪市長のダブル選で当選を確実にし、記者会見に臨む吉村洋文氏(左)と横山英幸氏=8日午後、大阪市北区(彦野公太朗撮影)

日本維新の会創設者で令和5年4月に政界を引退した松井一郎元大阪府知事が産経新聞のインタビューに応じた。松井氏は、維新の吉村洋文代表と横山英幸副代表が看板政策「大阪都構想」への3度目挑戦を掲げて仕掛けた大阪府知事・大阪市長の出直しダブル選を巡り、「吉村さんの今のやり方は、党内にもひずみを生じさせている」と述べた。インタビューの詳報は次の通り。

「信」問うていない

――出直しダブル選の評価は

「吉村さんも横山さんも(大阪都構想の設計図づくりに関する)『信を問う』といっていたけども、選挙結果は知事・市長としての仕事に対する評価であって、都構想の信を問うたことにはなりません。都構想の是非を問う住民投票は知事や市長がやりたいと言っても議会が議決しないとたどり着けない。知事・市長だけでなく、府議会、市議会が(有権者の)審判を受ける必要がある」

「令和5年の前回統一地方選では、(維新は)知事、市長、議会も『都構想をやりません』と、吉村さんに至っていえば『政治家でいる間はやりません』といって負託を受けた。その中で府議会と市議会が過半数(の議席)をいただいた。政治家として一番やってはいかんのは、公約をほごにすること。9年4月には統一地方選がある。なぜ待てないのか」

《吉村氏と横山氏の突然の辞職表明に反発した維新大阪市議団は「(9年4月の)統一地方選で民意を確認した上で都構想に挑むべきだ」とする決議書を全会一致で取りまとめた》

「やっぱりそちら(市議団)のほうが大義があるよね。吉村さんはこのまま強引に突っ走ると思うけれど、それを止めるのが議会の役割だから。維新というのは独裁政党ではないんでね」

「オープンでフラットな議論ができる、そして最後は決まったらみんなで一致団結する。僕はそういう政党を作り上げてきたという思いを持っている。だから吉村さんの今のやり方によって、党内でもひずみが起きている感じがするね」

「吉村ブランド」信仰

――いまの維新は独裁政党になっているのか

「吉村さんが右と言えば全員が右を向かなければならない雰囲気。それはもうやめたほうがいいと思うな。吉村さんだけでここまで来たわけじゃないから。(維新創設者の)橋下(徹)さんと僕がやってきたとはいわんけど、いま維新に所属している国会議員、府議、市議、みんな仲間なんだから。今は吉村さんと同期のメンバーが中心で、吉村チルドレンじゃないんだから。そこは勘違いしないほうがいい」

インタビューに答える日本維新の会創設者の松井一郎氏=16日午後、大阪市北区(柿平博文撮影)
インタビューに答える日本維新の会創設者の松井一郎氏=16日午後、大阪市北区(柿平博文撮影)

――なぜそのような雰囲気になったのか

「吉村さんが市長をやって、知事をやって知名度が上がった。吉村さんを〝推し活〟してくれる有権者も増えた。維新の『顔』として選挙で支持拡大につなげた。維新のメンバーも吉村さんにぶら下がってきたところがあるんじゃないの。吉村さんにしたら、吉村というブランドで今の支持率があるという風に思い込んでしまう。その思い込みの中で吉村さんを祭り上げる雰囲気を作ってしまったんじゃないか」

《ダブル選の投票率は知事選が56.43%、市長選が55.47%。いずれも前回(知事選46.98%、市長選48.33%)を上回る一方、白票など無効票がそれぞれ1割を超えた》

「投票率が高くなるのは当たり前。衆院選と一緒にやっているんだから。主要政党はどこも(ダブル選に)候補者を立てていないし、吉村さんと横山さんの圧勝というのは、選挙が始まった時点で決まっているようなものだ」

「白票は抗議票でしょう。衆院選と一緒にすることで選挙経費を抑えられたというけれど、元々やらなくてよかったわけだから。有権者から見たら『このやり方はだめ』という抗議の白票なんじゃないの」

自民をピリッとさせよ

《衆院選で自民とともに連立枠組みの信を問うた維新は、高市早苗政権における「アクセル役」と訴え、36議席を得た》

「36議席のうち2議席は、(比例代表の候補者が足りなかった)自民党から回ってきたから、実質的に得たのは34議席。令和6年の前回衆院選より4議席減っている。ただ、野党第一党(中道改革連合)が圧倒的な議席減だったから、それを考えるとぎりぎり踏みとどまったのかな」

「選挙結果をみれば、連立与党の中で存在感が示せていない。僕が代表のころは自民をピリッとさせるために維新があるといい続けてきた。少数の維新として、圧倒的な数の力を持った自民をどこまでピリッとさせるか、これが今後の見どころになると思う」

――目標としていた38議席に届かなかった

「吉村さんも藤田(文武共同代表)さんも『高市さんのアクセル役』『高市さんを孤立させない』などといっていたけど、有権者から見ると高市さんの所属先は自民だから。それなら自民でいいよね。だから自民一強の結果になったんだろうね」

――一方で、維新は大阪では19小選挙区中、18小選挙区で勝利した

「これは(平成23年から)大阪府市の行政を維新が約15年にわたって運営する中で、各党が相乗りする時代と比べて、大阪がよくなってきた。それに対しての維新への評価だと思う。府民、市民にとって維新も百点満点じゃないけれど、選ぶとしたら維新ということで選んでいただいたんじゃないの」