- 前年度の有価証券取得額は約580億ドル-前々年度から2倍超に拡大
- 「エコシステムの裾野広げる」とフアン氏-循環取引懸念くすぶる

米半導体大手エヌビディアは前会計年度で、人工知能(AI)向け半導体分野での優位性維持を目指し、顧客企業への戦略的投資やパートナーとの提携に巨額を費やした。その額は700億ドル(約10兆9000億円)以上だ。
最新のキャッシュフロー計算書によると、同社は前年度に市場性のある有価証券を406億ドル、非市場性または未公開の有価証券を175億ドル取得した。前々年度はそれぞれ266億ドル、15億ドルで、全体では2倍超に拡大した。
エヌビディアは、OpenAIやコアウィーブなどの顧客企業に出資し、それらの企業がエヌビディアのAIアクセラレーターを購入してサービスやデータセンターを構築する循環的な取引を巡り、批判を受けてきた。懐疑派は、こうした取引がエヌビディア製品への需要を人為的に押し上げているのではないかと指摘する。一方、業界トップらは、社会や経済を再構築する可能性を持つ技術革新の莫大(ばくだい)な資金需要を踏まえれば必要な取引だと主張する。
エヌビディアのジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)はこれまで、こうした取引は「エコシステムの裾野を広げる」だけでなく、「非常に成功する企業、しばしば一世代に一度の企業になる会社に対して持ち分と投資を確保する」点で自社に有益だと説明してきた。
エヌビディアが25日に市場予想を上回る決算を発表した後、コレット・クレス最高財務責任者(CFO)は、サプライヤーからエヌビディア製ハードウエアを活用するAI製品の初期段階の開発企業までを含む「極めて広範なエコシステム」への投資は、同社にとって最も重要な取り組みの一つであり続けると述べた。
最近、株価の上昇が限られているにもかかわらず、なぜ自社株買いに資金を充てないのかとのアナリストの質問に対し、クレス氏はこの投資を「当社のプロセスと戦略的投資の非常に重要な一部として今後も継続する」と語った。
最新の財務諸表では、エヌビディアが他社にどの程度投資しているかは明らかになったが、キャッシュフロー計算書では各社にいくら資金を投じたかの詳細は示されていない。

エヌビディアはまた、昨年ライセンス契約で合意したAI新興グロックとの取引の財務内容の一部を明らかにした。昨年12月、エヌビディアはグロックの技術使用の権利に対価を支払い、同社のチップ設計を今後の製品に採用すると発表していた。合意の一環として、グロックのCEOや幹部がエヌビディアに移籍した。
エヌビディアは前年度、この取引で130億ドルを支出し、利息を含め今後1年以内にさらに40億ドルを支払うとした。非独占的なライセンス契約と説明しているこの合意に関連し、144億ドルののれんと25億ドルの「開発済み技術に係る無形資産」を計上した。
同社がグロックの技術をどのように活用するのかについては明らかになっていない。フアン氏は今後さらに発表する予定だとしつつ、投資家は他のエヌビディア製品と組み合わせて提供されると見込むべきだと強調した。また、新たなチップ設計が既存製品を脅かすとの懸念に基づく取り組みとの見方の払拭も図った。グロックに関連するチップが有用なのはAI作業の約10%以下にとどまると説明した。
こうした取引の結果、エヌビディアの投資活動による現金支出は前年度に522億ドルと、前々年度の204億ドルから急増した。
一方、同社の事業は巨額の資金を生み出している。営業活動によるキャッシュフローは1027億ドルと、前々年度の641億ドルから急増した。
積極的な投資と自社株買いにより、年度末の現金残高の増加は限定的だった。純利益が1200億ドルに達したにもかかわらず、現金および現金同等物の増加は約20億ドルにとどまった。同社は約400億ドルの自社株買いを実施した。
2008年の金融危機前に米住宅市場の崩壊に賭けた「世紀の空売り」で有名な投資家マイケル・バーリ氏は、エヌビディアの財務報告に懸念を表明。エヌビディアの購入義務が952億ドルと1年前の161億ドルから大きく増加していると指摘した。台湾積体電路製造(TSMC)がエヌビディアの新技術向けに特注の半導体製造およびパッケージング能力を増強する必要があったことから、より長期の契約と現金支払いを求めたためだという。需要が揺らげば、リスクが高まる恐れがある。
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これに対し、エヌビディアは25日、顧客からの増大する需要に備えていることを強調。クレス氏は「2027年までの出荷分を含め、将来の需要に対応するための在庫と供給に関するコミットメントを確保している」と述べた。
原題:Nvidia Spent $70 Billion on Corporate Deals to Fuel Chip Demand(抜粋)