イラン戦争にまつわる不安が世界的に広がる中で、金融資産は雪崩を打ったようにドルにシフトしている。安全資産への逃避だ。言い方を変えればトランプ米大統領がつくりだした不安を背景に、トランプ買いが進んでいるわけだ。なんとも奇妙な現象といっていいだろう。この間のドル・円の推移をみてみる。イラン戦争が始まったのは2月28日。土曜日だ。外為市場は開いていない。前日の27日には1ドル=156円06銭。これが戦争突入5日目を迎えた4日は、東京市場で 157円74銭前後(10時30分現在)の取引となっている。ドル・円は特別なのかもしれない。ドルは世界中の通貨に対して全面高となっている。Bloombergが集計しているドル指数がある。これをみると27日が1187.63、週末を挟んで2日が1196.14、翌3日が1203.43と日が進むにつれてドルは高くなっている。指数が高いのはドルが強い証だ。戦争でドル高が進んでいる。

Bloombergは今朝の市況解説でドル高の理由を説明している。昨日は株式と国債が下落したがドルは続伸した。「ドルは主要通貨に対して全面高となり、対円ではロンドン時間に一時0.4%高の1ドル=157円97銭を付けた」とある。この日の取引についてパイオニア・インベストメンツのストラテジスト、パレシュ・ウパダヤ氏は次のように解説している。「リスク回避や不確実性の高い局面で、ドルは安全資産の王者として典型的な動きをしている」と。世界的に不安感が増している中でドルは「安全資産の王者」なのだ。安全資産といえばちょっと前まではスイス・フランや円がその代表格だった。それがいつの間にかドルに変わっている。不安の源泉が戦争となれば、基軸通貨であるドルの優位性が高まるということだろう。日本の株が連日1000円を超える幅で下落していることに比べれば、円はまだこの程度で収まっていると言えるのかもしれない。

通貨の価値には様々な要因が絡んでいる。3日〜4日の動きだけでドルの評価は定まらない。とはいえ戦争開始前までドルは比較的弱い通貨と見られていた。「世界の基軸通貨としてのドルの地位に対しては疑念が広がっていたが、ここへきてのドル需要の高まりはその反証となっている。トランプ大統領の貿易戦争を受けて広がった『通貨価値の下落(ディベースメント)』論を抑え込む格好だ」と、Bloombergは分析する。ドルへの逃避が起こっているからといって、イラン戦争の行方を左右するわけではない。だが、この戦争が長引けば長引くほど、ドルの信任は失われる。「安全資産の王者」であるドルへの逃避も、為替ディーラーにとっては大きなリスクが付きまとうわけだ。全てをディールになぞらえるトランプ氏にとっても、この戦争のリスクは大きい。リスクの見返りとなるハイリターンの道はあるのだろうか・・・。