- 金融や半導体に売り、イラン戦争に伴う原油高も相場の重し
- 円は一時上昇後、158円09銭まで下落-米国債利回りは低下

Rita Nazareth
6日の米金融市場では株式相場が続落。2月雇用統計が弱い内容となったことが影響した。中東での戦争拡大で原油価格が上昇し、インフレへの警戒も強まった。さらに、プライベートクレジットを巡る懸念再燃もリスクテーク意欲を減退させた。
円はドルに対して荒い値動き。米雇用統計の発表直後に上昇に転じ、その後再び下げる展開となった。
| 株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
|---|---|---|---|
| S&P500種株価指数 | 6740.02 | -90.69 | -1.33% |
| ダウ工業株30種平均 | 47501.55 | -453.19 | -0.95% |
| ナスダック総合指数 | 22387.68 | -361.31 | -1.59% |
S&P500種株価指数は週間ベースでは昨年10月以来の大幅安。金融株の下げがきつい。ブラックロックは7.7%下落。同社は主力プライベートクレジット(ノンバンク融資)ファンドの一つで資金引き出しを制限した。
半導体銘柄も安い。オラクルとOpenAIは、テキサス州にある主力の人工知能(AI)向けデータセンターの拡張計画を取りやめた。
トランプ米大統領はイランに対して降伏を要求し、戦争終結をめぐる交渉は望んでいないと語った。米国・イスラエルによる対イラン空爆は続いており、事態が収束に向かう兆しはほとんどみられない。
2月雇用統計では雇用者数が予想外に減少した。失業率は上昇し、労働市場の健全性に対する疑念が強まった。雇用者数の減少は医療関係者のストライキを一部反映した。
アネックス・ウェルス・マネジメントのブライアン・ジェイコブセン氏は、雇用者数の減少に原油高が重なり、市場ではスタグフレーションへの懸念が強まるだろうと述べた。
モルガン・スタンレー・ウェルス・マネジメントのエレン・ゼントナー氏は「米連邦準備制度理事会(FRB)は板挟みの状況に追い込まれた可能性がある」と指摘。「労働市場の著しい悪化は利下げを正当化するが、原油価格が高止まりすればインフレが再加速するリスクがある。そのため、FRBは様子見を余儀なくされる可能性がある」と述べた。
eToro(イートロ)のブレット・ケンウェル氏は、労働市場の勢いが失われ続ければ経済環境はより不安定な局面を迎えることになると分析。地政学的な不確実性が高まる中で、エネルギー価格の上昇がガソリン価格を通じて消費者の懐を直撃するインフレ圧力となり、実質的な増税のように作用しかねないとみている。
「FRBの決定を変えるものではないかもしれないが、雇用市場の明確な弱まりは、年内にかけてFRBをよりハト派方向へと引き寄せる可能性がある傾向だ」とケンウェル氏は述べ、特に市場のボラティリティーが高まりつつある局面において、「金利水準にかかわらず、雇用市場の悪化は投資家が望む状況ではない」と加えた。

国債
米国債相場は短期債を中心に上昇(利回りは低下)。低調な米雇用統計や中東での紛争が意識される中で上下に振れたものの、原油高に伴うインフレ懸念を一部相殺する形で、労働市場軟化の兆しが改めて意識された。
| 国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
|---|---|---|---|
| 米30年債利回り | 4.76% | 0.7 | 0.15% |
| 米10年債利回り | 4.13% | -0.2 | -0.05% |
| 米2年債利回り | 3.55% | -2.4 | -0.68% |
| 米東部時間 | 16時37分 |
金融政策に敏感な2年債利回りは一時5ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下。短期金融市場ではFRBの利下げ観測がやや強まり、早ければ9月にも少なくとも1回の利下げが実施されるとの見方が織り込まれた。
米国債相場は週間ベースでは、トランプ大統領が包括的な関税を発表した2025年4月以来の大幅下落。原油急騰でインフレ懸念が強まったことが背景にある。
BMOキャピタル・マーケッツの米金利担当責任者、イアン・リンジェン氏は「中東での紛争に伴う先行きのインフレリスクを踏まえれば、米国債相場が上昇しにくくなっているのは直感的に理解できる」と述べた。
DWSアメリカズの債券部門責任者、ジョージ・カトランボーン氏は、「成長へのマイナス影響と足元の雇用情勢を踏まえれば利下げは実施されるだろうが、その時期はほぼ間違いなく遅くなる。FRBは行動に移す前に、弱さが確認されるのを見極めたいと考えるだろう」と指摘。
「利回りは原油価格動向やインフレのシナリオを背景に上昇するだろうが、その後は景気減速の影響に屈する展開になる」と語った。
ウォラーFRB理事は、イランとの戦争がインフレに持続的な影響を与えるとは予想していないと述べた。サンフランシスコ連銀のデーリー総裁は2月の雇用統計について、米労働市場が安定化しつつあるとの見方を揺るがすとの認識を示した。

外為
外国為替市場ではドルが下落。雇用統計発表後に一時小幅に下げた後、原油高を背景にいったんは上昇したが、再び売られた。円は雇用統計発表後に157円40銭近辺まで買われた場面もあったが、その後は再び下げて158円09銭を付けた。
| 為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
|---|---|---|---|
| ブルームバーグ・ドル指数 | 1203.34 | -0.98 | -0.08% |
| ドル/円 | ¥157.83 | ¥0.24 | 0.15% |
| ユーロ/ドル | $1.1613 | $0.0004 | 0.03% |
| 米東部時間 | 16時37分 |
バノックバーン・グローバルのチーフマーケットストラテジスト、マーク・チャンドラー氏はこの日のドルの値動きについて「継続中の戦争の影響が極めて大きいことに加え、雇用統計は悪天候やストの影響でゆがめられているとの見方が背景にある」と述べた。
ドル指数は週間では2024年11月以来の大幅高。中東情勢や原油高を背景に、安全資産としての買いが優勢になった。
バンク・オブ・アメリカ(BofA)アレックス・コーエン氏は「こうした環境では、経済指標が弱くても重要視されない。不確実性の継続と原油価格の一段高が圧倒的に主要な材料となっている」と述べた。
XTBのリサーチディレクター、キャスリーン・ブルックス氏は、今回の雇用統計は「脇役」に過ぎないと指摘。「戦争を背景にドル流動性需要の小さな波が起きている」とし、投機筋の通貨ポジションに関するデータもドル需要を示す可能性が高いとの見方を示した。

原油
ニューヨーク原油先物は大幅続伸し、ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は週間ベースで過去最大の上昇率を記録した。ホルムズ海峡を通る海上輸送がほぼ完全に停止し、中東での戦争でエネルギー市場全体に混乱の波が広がっている。
WTI先物は前日比でほぼ6年ぶりの大幅高となった。ブレント原油先物も大きく上昇し、1バレル=93ドル近辺で引けた。イランは欧州連合(EU)に対し、参戦すれば「正当な」標的になると警告し、これを受けて市場では強気ムードが勢いを増した。
米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)によると、クウェートは貯蔵施設が満杯となったため一部油田で生産削減を開始した。湾岸地域の供給に障害が生じている新たな兆しとなった。シティグループは、ホルムズ海峡が通過不能に陥っていることにより、日量700万-1100万バレルの供給が失われていると試算した。
トランプ米大統領が物価押し下げに向け「直ちに行動」をとると示唆したものの、原油価格の上昇には歯止めがかかっていない。ハセット米国家経済会議(NEC)委員長は一方で、戦略石油備蓄(SPR)の放出は政府で検討されていないと述べた。
関連記事:原油100ドル目前、ホルムズ海峡の通航停止続けば-数日以内との予想も

米財務省はインドに対し、ロシア産原油の購入を一部認めた。米国際開発金融公社(IDFC)は湾岸地域での戦争リスクを含めた海事再保険として、200億ドルの計画を発表した。
日本政府は国が備蓄する石油の放出を検討していると、共同通信が関係者の話として報じた。現時点では何ら措置は講じられていない。市場参加者らの間では、複数国が協調して緊急備蓄を取り崩せば最大限の効果を上げられるとの観測がある。
戦闘に収束の兆しが見えない中で、ゴールドマン・サックス・グループは、混乱が長引けば原油が100ドルを超える展開があり得ると指摘した。欧州のディーゼル油先物は週間上昇率が50%を超える勢いだ。各国・地域の中央銀行は、インフレ再燃の可能性に神経をとがらせている。
多国籍の海軍助言機関である合同海洋情報センター(JMIC)は、商業船舶のホルムズ海峡航行は「ほぼ全面的に」停止していると明らかにし、その原因として「安全上の脅威と保険上の制約、運航面の不確実性、実質的な混乱」を挙げた。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物4月限は、前日比9.89ドル(12.2%)高の1バレル=90.90ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント5月限は8.5%上昇の92.69ドル。
金
ニューヨーク金相場は反発。週間ベースでの下げを縮小した。弱い内容の米雇用統計を受けて、市場では金融緩和の観測が後退した。
金スポット価格は一時1.8%上昇し、1オンス=5174.59 ドルを付けた。週間での下げは2.4%に縮小した。金利の低下は通常、利息を生まない金投資にプラスに作用する。
中東での戦争で原油価格が急騰し、インフレ懸念があおられたほか、ドルが上昇したことに今週の貴金属相場は圧迫されてきた。世界的に株式市場が荒い値動きとなるなか、金は流動性を確保する手段としても利用された。

トランプ米大統領は6日、イランに対して降伏を要求し、戦争終結をめぐる交渉は望んでいないとソーシャルメディアに投稿した。米政府当局者らはこれまで、戦争の目的はイランの体制転換ではないとしてきたが、トランプ氏の発言は長期戦を覚悟している可能性を示唆した。
ここ数日の金市場は荒れ模様で、上昇の勢いは失速気味だが、年初からはなお20%近く上げている。トランプ政権の政策によって世界の貿易と地政学的状況が一変したほか、連邦準備制度理事会(FRB)の独立性が脅かされていることが、安全資産と見なされる金の追い風となっている。
金スポット価格はニューヨーク時間午後3時27分現在、前日比72.54ドル(1.4%)高い1オンス=5154.84ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物4月限は、80ドル(1.6%)上昇の5158.70ドル。
原題:Stocks Hit by Weak Jobs as Oil Tops $90 on Iran: Markets Wrap(抜粋)
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