• イラン戦争7日目、米は長期戦視野-ブレント原油先物92ドル超
  • トランプ氏は兵器増産で防衛産業と会合、地上部隊派遣に関心とNBC
トランプ米大統領
トランプ米大統領Photographer: Bonnie Cash/UPI

Iain MarlowPatrick Sykes

トランプ米大統領は6日、イランに対して降伏を要求した。米国・イスラエルによる対イラン空爆は7日目に入っても続いており、エネルギー市場が混乱し、米国が戦闘に無期限に継続できるか懸念がある中でも事態が収束に向かう兆しはほとんどみられない。

  トランプ氏は「イランとのディールは、無条件降伏以外にはあり得ない!」とトゥルース・ソーシャルに投稿。イランの降伏後、米国と同盟国が「偉大で受け入れられる指導者」を選ぶだろうと述べた。

  米政府当局者はこれまで、対イラン攻撃の目的は体制転換ではないと強調してきた。しかし、トランプ氏の今回の発言は、ホワイトハウスが長期戦を視野に入れつつある可能性を示している。

  トランプ氏は数時間後、ホワイトハウスで防衛産業の幹部を招き、重要な兵器システムの生産強化の必要性を強調した。会談後に同氏はSNSで、米国で最も高価な兵器について言及し、防衛業界幹部が生産を4倍に増やすことに合意したと投稿。米国には中級から中高級の弾薬の「事実上無制限の供給」があると繰り返した。

Tehran
テヘランのメヘラバード国際空港で立ち上る黒煙と炎(3月7日)Photographer:Atta Kenarge/AFP/Getty Images

  これまでにイラン国内では少なくとも1332人が死亡。イランによる報復攻撃により、中東の他の国々でも数十人が犠牲となった。米国防総省は米兵6人が死亡したと明らかにしている。

  NBCが複数の関係者の話として報じたところによれば、トランプ氏はイランへの米地上部隊派遣に真剣な関心を私的に示しており、ホワイトハウス外で側近や共和党関係者と派遣案を議論している。大規模侵攻ではなく、特定の戦略目的に限定して投入する少人数部隊の構想に焦点を当てたもので、現時点で決定や命令は出していないという。

原油急騰

  戦火の拡大によってホルムズ海峡を通る海上輸送はほぼ完全に停止し、エネルギー市場全体に混乱の波が及んでいる。6日の取引でウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)原油先物は90ドルを上回った。前週金曜日に比べ20ドル余り値上がりし、1980年代以降のデータで過去最大の週間上昇率を記録した。ブレント原油先物は約2年ぶりに1バレル=92ドル超で取引を終えた。米国内のガソリン価格は6日、2024年9月以来の高値を記録した。

  ホワイトハウスのレビット報道官は、予測される価格急騰を緩和するための「具体的な措置」として、トランプ大統領が同地域の貨物船に保険を提供し、必要なら米海軍が護衛も行うと約束したことを挙げた。

  ハセット国家経済会議(NEC)委員長はブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、政権には原油価格急騰に対処する「多くの手段」があると述べた。ベッセント財務長官は、FOXビジネスとのインタビューで、米国は供給量を増やすためにロシア産原油に対する制裁をさらに緩和する可能性があることを示唆した。

  ホルムズ海峡の航行がほぼ完全に停止し、エネルギー輸出国が同地域からの輸送ルート確保に奔走する中、石油トレーダーらは100ドル台突入が予想より早く訪れる可能性があると警告している。シティグループは、世界の石油流通量の5分の1が通過する要衝であるホルムズ海峡の混乱により、原油市場では1日当たり約700万-1100万バレルの供給が失われていると試算した。

空爆継続

  イランは6日、ホルムズ海峡で米国およびイスラエルに関係する船舶を攻撃すると警告した。一方、サウジアラビアは紅海沿岸の港に数百万バレルの原油を振り向け、世界最大の原油輸出国として供給維持を図っている。

  戦闘は6日夜から7日朝にかけても収まらなかった。イスラエルはテヘランに対し新たな空爆を実施し、イラン側もイスラエルに向けてミサイルを発射した。

  軍事作戦の終結時期が見通せない中、欧州やアジアの国は地域の防衛態勢強化に動いている。ウクライナのゼレンスキー大統領は、米国からの要請を受け、イラン製無人機シャヘドから中東を防衛すべく「必要な安全を確保する」ための支援を自国軍に指示したと述べた。

  イタリアは湾岸地域に防空システムと対ドローン装備を送る意向だと、クロセット国防相が5日に明らかにした。韓国は防空ミサイル「パトリオット」を含む兵器の再配備の可能性について米国と協議中だとしている。フランスは、イランでの作戦に関与していない米軍支援機にイストル空軍基地の使用を認めたと、AFPが報じた。

  イスラエル国防軍のザミール参謀総長は、空爆によりイランの弾道ミサイル発射装置の60%以上を無力化したと述べている。イラン海軍も壊滅的な損失を被ったという。

  イランのドローンやミサイルによる攻撃は、イスラエルと湾岸諸国の防空網にも大きな負荷をかけている。米当局者によると、イランは軍事衝突の初期に、米国のミサイル防衛にとって重要なヨルダンの3億ドル規模のレーダー施設を破壊した。

後継選び

  イランは死亡した最高指導者ハメネイ師の後継者選びを控えており、候補としてハメネイ師の次男であるモジタバ師の名前も挙がっている。

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ハメネイ師のポスターを掲げる人々(3月6日)Source: AFP/Getty Images

  しかし、トランプ氏はモジタバ師を「軽量級だ」と切り捨て、次期最高指導者の選定には自ら関与する意向を表明している。アクシオスとのインタビューでトランプ氏は、「ハメネイ師の息子は私にとって受け入れられない。われわれはイランに調和と平和をもたらす人物を望んでいる」と述べた。

  その後のCNNとのインタビューでトランプ氏は、イランの次期指導者は「米国とイスラエルをきちんと扱う」必要があると指摘。そのうえで「ベネズエラの時と同じようにうまくいくだろう」と語った。

  米国は1月、空からの奇襲作戦でベネズエラのマドゥロ大統領を拘束。その後、ロドリゲス暫定大統領との関係を構築し、体制をおおむね維持しつつ、キューバ向け供給の停止や米国向けへの振り替えなど石油を巡る譲歩を引き出している。

  それでも、今回のソーシャルメディアへの投稿やNBCニュースとのインタビューでは、トランプ氏がイランでは一段と踏み込んだ体制刷新を思い描いていることをうかがわせる。

  NBCニュースとの5日の電話インタビューでトランプ氏は、イランの指導体制を「一掃」したいと考えており、後任として想定している人物の名前もあると発言。具体名の公表は避けたが、自身のリストにある人物が戦争を生き延びられるよう手を打っているとし、「10年かけて再建するような人物は望んでいない」とも述べた。

  米国と共同で対イラン攻撃を行っているイスラエルは、作戦が次の段階に入ったと発表。この段階では、イラン政権の軍事能力に対する攻撃を強化する計画だとしている。

  一方でイランは、中東の少なくとも5カ国に弾道ミサイルやドローンを相次いで発射。サウジアラビア、クウェート、バーレーンなど湾岸諸国が標的となった。  

  トランプ氏は6日のCNNとのインタビューで、イランが他の湾岸諸国を攻撃したのは間違いだったと指摘。今回の戦争について「10点満点なら12点、あるいは15点」と評価し、米軍は軍事面で非常にうまく機能していると語った。

  エネルギー価格の上昇が中央銀行の利下げペースを鈍らせるとの思惑から、世界の債券市場では売りが広がっている。

  トランプ氏はCNNとのインタビューで原油価格の急騰は「短期的なものだ」とし、「すぐに大きく下がるだろう」と語った。

  トランプ氏が物価押し下げに向け「直ちに行動」をとると示唆し、米財務省はインドにロシア産原油の一部購入を認めたが、原油価格の上昇に歯止めをかけられていない。共同通信によると、日本政府は石油の国家備蓄放出を検討しているが、まだ実際の行動はとられていない。

  戦闘に収束の兆しが見えない中で、ゴールドマン・サックス・グループは、混乱が長引けば原油が100ドルを超える展開があり得ると指摘した。

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原題:Trump Demands Iran Relent as US Aims to Calm Energy Markets (2)

Trump Wants ‘Unconditional Surrender,’ Won’t Seek Iran Deal (3)(抜粋)