トランプ大統領は昨日、CBSとの電話インタビューで次のように発言した。ロイターによると「戦争はほぼ完全に終わったと思う。イランには海軍も通信部隊も、空軍も存在しない」とし、「当初想定していた4─5週間よりもかなり早く進んでいる」と語った。CBSのインタビューが報じられる前に同大統領はニューヨーク・ポストのインタビューを受けている。ここでは「私にはあらゆる事態に対応する計画がある」と原油価格の上昇について言及し、「きっと満足してもらえるだろう」と述べている。この発言を伝えたBloombergは11月の中間選挙を前に、同氏は根強いインフレを巡る国内の懸念に直面している。戦争が収まる気配を見せない中、ガソリン価格上昇への対処も迫られている。8日には100ドルの原油価格について「支払う代償としてはごく小さいものだ」とし、「イランの核の脅威が排除されればコストは急速に下がるだろう」との見方を示した。
大統領の発言から伝わってくるのはイランでの戦況より、国内の反応に気を遣っている姿だ。イランは8日、トランプ氏の宿敵だったハメネイ師の次男モジタバ師を最高指導者に選出、米国・イスラエル連合軍と徹底的に戦う姿勢を鮮明にした。これは「次期指導者の選出に関与したい」というトランプ氏の“願望”を無視した、国内強硬派のメッセージである。翌9日、トランプ氏はイラン戦争は「ほぼ完全に終わった」と強がって見せたのである。わずか1日とちょっと。トランプ氏の発言から見えてくるのは、米国やイランにとどまらず、イスラエルを含めた関係国の分裂と齟齬だ。まずは米国。トランプ氏の強行姿勢に共和党内部に反発が広がっている。イランではベゼシュキアン大統領ら穏健派と革命防衛隊や宗教指導者らの強硬派との分裂が顕著になっている。イスラエルだけは国内が、「体制転覆」という戦争目的でほぼ一致してい。攻撃する方も、攻撃される方も分裂含みなのである。
トランプ氏が強調する「ほぼ完全に終わった」という表現は、正しい日本語に直せば「不完全だが終わった」という意味だろう。イスラエルが主張する体制転覆には長期戦の覚悟が必要だ。11月に中間選挙を控えたトランプ氏にそんな余裕はない。物価も上昇している。中間選挙の配色が濃厚になっている。となればなんとか早く戦争を勝利のまま終結したい。こんな願望が「ほぼ完全に終了」の言外に込められた本音だろう。またもトランプ氏のTACO(Trump Always Chickens Out=トランプ氏はいつも尻込みする)性が顕在化した。戦争目的で一致しないまま突入した米国とイスラエル、強硬派と穏健派の対立が鮮明になったイラン。昨日トランプ氏はプーチンと電話会談をしている。同氏の頭の中には権威主義の独裁国家に対する嫌悪感はないのだろう。なぜマドゥロ大統領を排除したのか、単なる石油利権か。トランプ大統領のディールにはビジョンがない。