- 戦後日本の土台を築いた米国、変革を再び強く後押し-19日首脳会談
- 日本、東アジア安定で重要な役割も-防衛と情報能力強化に成功なら

第2次大戦後の事実上の占領国として、米国は日本の徹底的な非軍事化を進めた。旧日本軍が解体されたほか、大規模な情報機関や国内監視体制も取り除かれ、新憲法が制定されて戦争放棄が明記された。学校での軍国主義教育は民主主義教育へと置き換わった。
こうした抜本的な改革もあり、日本は近代で最も長い平和の時代を享受してきた。
一方、2月8日の衆院選で有権者から圧倒的な信任を受けた高市早苗首相は、東アジアの安全保障環境にとって重要な局面で、戦後枠組みの主要な要素を転換できる状況にある。衆院で圧倒的多数を確保し、米中央情報局(CIA)をモデルとする情報機関の創設やスパイ防止法の制定、世界有数の先端軍事力の構築を目指す防衛費の増額など、大胆な見直しを進める政治的・手続き上の力を手にした。
与党・自民党にとって長年の目標である憲法改正についても実行可能な道筋がある。軍を保持し、国益を守るために武力を行使する権利を明記する改憲への一般の支持は高まっており、中国の台頭や北朝鮮の脅威、予測不能な同盟国の米国を巡る懸念の広がりを反映している。
戦後日本の土台を築いた米国は現在、変革を再び強く後押ししている。19日にワシントンでトランプ大統領と会談する高市首相は、より積極的で、軍事的な能力を備えた日本を対中戦略の中心と位置付けるホワイトハウスと向き合うことになる。

米・イスラエルとイランの戦争で米軍の資源が東アジアから移されれば、日本の役割はさらに高まる。政治リスクコンサルティング会社ジャパン・フォーサイトの創業者、トビアス・ハリス氏は中東の紛争について、「日本がますます危険な世界に直面しており、生き残るには強力な指導力と国家の自立を重視する高市首相の路線が必要だと主張する材料になる」と指摘する。
一方で、高市氏のタカ派的な姿勢は、日本の軍事的復活に警戒感を抱く近隣諸国を不安にさせている。台湾有事を巡る高市首相の昨年11月の国会答弁に中国が強く反発し、日中間の緊張は収まっていない。中国は報復措置の一環として、軍事転用可能な品目の輸出制限を発表し、日本の軍国主義復活に警告を発した。
高市首相は韓国との関係強化を進めているものの、1910-45年の日本による朝鮮半島統治時代の記憶はなお強い。高市氏は長年、日本が戦時中の行為について十分に謝罪したと主張する強い国家主義者として知られる。首相就任前には靖国神社を頻繁に参拝していた。就任後に再び訪れれば、対韓関係に緊張が生じる可能性もある。日本が戦時中に占領した東南アジア諸国とは、中国の脅威への共通認識を背景に近年関係を強化している。
日本が20世紀前半のような侵略を繰り返すとの見方を現実的と受け止める向きは国内では少ない。とりわけ、高齢世代ほど平和主義に強く結び付いていない若年層ではその傾向が顕著だ。世論調査では、主権や繁栄を守る選択肢が帝国主義の過去によって縛られるべきではないとの考えに50歳未満の多くが共感している。
故安倍晋三元首相の薫陶を受けた高市氏は、日本が大国政治の一角にとどまり、国家の威信を回復し、国の針路に対する主体性を高めたいと考えている。外国からの威圧に対する耐性を高め、侵略を抑止し、地域の安定により大きく貢献できる国になる必要があると主張する。「自らの国を、自らの手で守る。その覚悟のない国を、誰も助けてはくれません」と1月の会見で述べている。
安倍氏はより自信に満ちた日本を築こうとしたが、道のりは平坦ではなかった。世界の不安定化は高市氏の構想に追い風となっている。

イラクやアフガニスタンでの近年の国家再建とは対照的に、戦後日本の復興は成功例と広く評価されている。吉田茂元首相にちなむ「吉田ドクトリン」の下、日本は経済再生を優先し、安全保障を米国が担った。警察による監視や隣組の情報網、公的異論の抑圧は終わり、市民社会は発展した。個人の権利や民主的価値の尊重も根付いた。多くの日本人は戦時指導部への反発を背景に新たな平和主義を支持した。
保守派は米国への従属に不満を抱きつつも、共産主義の拡大を警戒し、緊密な関係を支えた。1951年に署名された日米安全保障条約は、52年の占領終了後も米軍の駐留を可能にした。現在も日本には約5万3000人の米兵士が駐留している。
自民党は55年の結党時に憲法改正を掲げたが、国民の関心は高くなかった。70-80年代に経済が急成長すると、改憲論は後回しにされた。2005年と12年に示された改正案には、連立を組んでいた公明党が抵抗した。
公明の連立離脱と先の衆院選の圧勝によって、改憲発議に必要な国会の3分の2を確保する上で、高市氏は以前より有利な立場にある。憲法改正には衆参両院で3分の2以上の賛成と国民投票での過半数が必要だ。世論調査では改憲支持が増えているが、態度未定も多い。

高市首相は憲法9条の改正を目指す。自衛隊は日本の防衛に厳しく限定されるが、14年以降は集団的自衛権の行使も認められている。保守派は自衛隊の法的地位を巡る曖昧さを解消すべきだと主張している。
ロシアによるウクライナ侵攻や、台湾上空を通過した中国のミサイルが日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下したことを受け、日本の防衛政策は22年に大きく転換。日本が攻撃を受けた場合の反撃能力の整備が進められた。島しょ部でミサイルやレーダー施設、弾薬庫の配備を急ぎ、防衛費を28年3月までに対国内総生産(GDP)比2%へ引き上げる方針が示された。
高市氏は対GDP比2%への防衛費引き上げを前倒しし、原子力潜水艦の導入の可能性を含め、現代戦に対応する装備拡充策を検討している。防衛産業の活性化も優先課題だ。

高市首相の安保構想の他の要素も、過去の政策経験を通じて練られてきた。経済安全保障担当相を務めた経験から、サプライチェーンの確保や重要インフラの保護、人工知能(AI)など先端技術への投資を重視してきた。
首相就任前には、外国勢力による破壊活動に対処するスパイ防止法案の議論を主導した。省庁間の連携不足を問題視し、7月までに国家情報局の創設を目指す。政府はCIAや英秘密情報局(MI6)をモデルとする対外情報庁の設置も視野に入れている。
衆院で歴史的多数と高い支持率を得ているとはいえ、課題も多い。防衛費の増額は「責任ある積極財政」を掲げる公約との整合性が問われ、財政規律の緩みがあれば債券市場の反応も予想される。物価高や生活に直結する経済課題への対応も不可欠だ。
衆院選での主要公約は「日本列島を、強く豊かに」だった。圧倒的な信任はその実行、さらにはそれ以上を可能にする。英誌エコノミストは衆院選後、高市氏を「世界で最も力を持つ女性」と評した。日本初の女性首相は、国際法を軽視する政治指導者が増える世界で日本がどう進むべきかのビジョンを示している。防衛と情報能力の強化に成功すれば、日本は東アジアの安定に重要な役割を果たす可能性もある。
戦後の長い平和を守るには、敗戦後の変革に匹敵する規模の国家的転換が必要だとの認識を高市氏は示している。
原題:Japan Pushes Against the Limits of Its Postwar Pacifism: Essay(抜粋)