• WTI95ドル割れ、ホルムズ海峡や原油供給への過度な警戒和らぐ
  • S&P500種は1%上昇、エヌビディアなどテクノロジー高い
米国株は上昇し、原油は下落
米国株は上昇し、原油は下落Photographer: Michael Nagle/Bloomberg

Rita Nazareth

16日の米金融市場では、原油相場が下落する一方で株式と債券は上昇。ホルムズ海峡の航行状況が改善するとの期待に加え、先進国が原油備蓄を追加放出する可能性が示されたことも安心材料となった。リスク選好の回復を背景に、ドルは売られた。

原油

  原油先物相場は反落し、ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は一時5.8%下落した。イラン戦争に起因する供給混乱への警戒感は続いているものの、米国の石油備蓄放出が早期に始まる兆候などが意識された。

  国際エネルギー機関(IEA)のビロル事務局長は、必要なら石油備蓄のさらなる放出が可能だとの認識を示した。ビロル氏によれば、中東へのエネルギー依存が極めて強く、供給不足の影響が最も深刻なアジアでは、既に放出された石油が市場に流入し始めている。

  米国とイスラエルによる対イラン戦争が3週目に入るなか、世界の原油の約2割が通過するホルムズ海峡の状況に市場心理は大きく左右されている。

  トランプ米大統領は、ホルムズ海峡を通過する商船への脅威となるイランの能力を米国が「徹底的にたたいている」と述べ、日本や中国、欧州、韓国に対し、航行の安全確保を支援するため艦船を派遣するよう改めて求めた。

  一方、米エネルギー省は計1億7200万バレルの備蓄放出のうち、第1弾の放出に向け準備を進めている。

米国はカーグ島を空爆した

トランプ大統領はイランがホルムズ海峡を通る船舶の航行を阻止し続ける場合、石油関連施設への攻撃を示唆している

  16日はアラブ首長国連邦(UAE)の主要石油積み出し港であるフジャイラ港が再び攻撃を受けたが、積み出し作業は一時停止後に再開された。

  海上輸送の要衝であるホルムズ海峡の通航はほぼ停止したままだが、わずかながら通航に成功する事例も見られ始めた。週末にはギリシャの船主が保有する石油タンカーがトランスポンダーを切って同海峡を通過し、パキスタンの石油タンカーも通航したもようだ。インドは、液化天然ガス(LNG)を輸送する6隻の安全な通航確保のため、イランと協議に入っている。

  CIBCプライベート・ウェルス・グループのシニア・エネルギー・トレーダー、レベッカ・バビン氏は「限られた数でも船舶が再び海峡を通り始めている兆しがあれば、市場は極めて敏感に反応する。イラン産以外の原油や石油製品を積んでいる場合は特にそうだ」と指摘。「原油輸送を一部でも確保できるような取り決めをイランと結ぶ国が増えれば、最悪のシナリオは回避可能との安心感を市場に与える」と語った。  

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物4月限は前営業日比5.21ドル(5.3%)安の1バレル=93.50ドル。ロンドンICEの北海ブレント5月限は2.93ドル(2.8%)安の同100.21ドルで終了。100ドルを上回って引けるのは3営業日連続。

株式

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数6699.3867.191.01%
ダウ工業株30種平均46946.41387.940.83%
ナスダック総合指数22374.18268.821.22%

  S&P500種株価指数は1%値上がり。テクノロジー銘柄が上げを主導した。エヌビディアは1.6%高。同社は人工知能(AI)半導体「ブラックウェル」と「ルービン」の売上高が、2027年末までに1兆ドル(約159兆円)以上になると見込んでいる。

  トランプ大統領は、イランはほぼ壊滅状態にあると述べた上で、ホルムズ海峡の安全確保に向けて各国に改めて支援を訴えた。また、イランの主要輸出拠点であるカーグ島の石油インフラを攻撃する選択肢も依然として排除していないとした。

  国際エネルギー機関(IEA)は、必要に応じて追加の緊急備蓄を放出できるとしている。

  ベッセント米財務長官は、米経済専門局CNBCに対し、米国はイランがホルムズ海峡を通じて原油輸出を継続することを容認していると述べた。

  緊急備蓄以外に原油高を抑える手段があるか問われると、戦争がどれだけ長引くかによると回答。また、原油価格は数カ月後には80ドルを「大きく下回る可能性が高い」との見通しを示した

  トレジャリー・パートナーズのリチャード・サパースティーン氏は「短期的には原油価格が1バレル=100ドルを超える可能性はあるが、その水準が長期間続くとはみていない」と指摘。「緊張が和らぎ、原油供給が危機前の水準に戻れば、原油価格は下落するだろう」と述べた。

  モルガン・スタンレー傘下のEトレード・ファイナンシャルのクリス・ラーキン氏は「中東情勢が顕著に悪化しなければ市場は一定の安心感を得る可能性があるが、原油価格の沈静化につながる出口戦略の明確な兆しがなければ、株式の反発は短命に終わるリスクがある」と述べた。

  国際決済銀行(BIS)は、中東戦争が長期化してインフレ期待を揺るがした場合、最終的に金融市場の混乱や財政問題につながる可能性があると指摘した。

  JPモルガン・チェースのミスラフ・マテイカ氏は、地政学的緊張に伴う原油主導の市場変動は金融引き締めを正当化しない可能性があり、投資家は株式下落局面で買いに動くべきだと指摘した。

  今週開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)会合では、政策金利が据え置かれるとの見方が広がっている。市場の焦点は、中東戦争の余波により物価と雇用という2つの目標の間でジレンマが生じた場合に、FOMCがどう対応するかに移りつつある。

  エバコアのクリシュナ・グハ氏によると、エネルギーショックの期間に対する不確実性や雇用データの軟化を踏まえ、FOMCは大きな見通し変更を避ける可能性が高い。これは、引き続きインフレと雇用のリスクのバランスを取る必要があることを示している。

  グハ氏は、FOMCの経済予測は「タカ派寄りに傾く」可能性がある一方、金利予測の中央値では今年と来年1回ずつの利下げが引き続き示されると見込んでいる。

国債

  米国債は上昇(利回りは低下)。原油価格が最近の高値から下落したことが手掛かり。エネルギー価格上昇によるインフレ加速懸念がいくらか和らいだ一方、原油価格は依然として高水準にあり、エネルギー高が経済成長を鈍化させるとの不安は残っている。

国債直近値前営業日比(bp)変化率
米30年債利回り4.87%-3.5-0.70%
米10年債利回り4.22%-5.5-1.28%
米2年債利回り3.67%-4.6-1.23%
米東部時間16時50分

  米国債利回りは全ての年限で低下。WTI先物が1バレル=100ドル近くと、2022年半ば以来の高値で引けた前週末の上昇分の大半を打ち消した。WTI先物は、週明けのアジア市場で一時100ドルを上回ったものの、その後は95ドルを下回る水準に下落した。

  エネルギー価格の上昇は景気抑制要因となり得るが、インフレ率にはまずガソリンの小売価格を通じて影響を及ぼす。米国が2月28日にイランを攻撃する前、ガソリン価格は1ガロン=3ドル未満だったが、イラン戦争で中東地域からの原油輸出が混乱して以降、約3.70ドルに上昇している。この影響で米国債に追い風となる米利下げへの期待は後退し、米国債の魅力は一段と低下している。

  TDセキュリティーズの米金利戦略責任者、ジェナディ・ゴールドバーグ氏は「原油価格が高い水準で推移する中、リスク資産にも持ち直しの兆しが見られ、米国債には安定の初期兆候が表れているようだ」と分析。「先週は市場の利下げ期待が極端に後退した。今週に入り原油価格がやや安定したことで、行き過ぎた織り込みを一部巻き戻す動きにつながっている可能性がある」と指摘した。

為替

  外国為替市場ではドルが下落。ホルムズ海峡での航行の状況が改善するという楽観的な見方を背景に、リスク選好が回復したことを反映している。

為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1209.12-7.77-0.64%
ドル/円¥159.07-¥0.66-0.41%
ユーロ/ドル$1.1507$0.00900.79%
米東部時間16時50分

  クレディ・アグリコルのG10為替調査責任者、バレンティン・マリノフ氏は「きょうはリスクセンチメントが慎重ながら持ち直した。相場がこうした動きを見せたのは、トランプ大統領が北大西洋条約機構(NATO)に対し、ホルムズ海峡での航行維持に向けた米国の取り組みを支援するよう求めたことが理由の一つだ」と分析。

  その上で、「これまでのところ同盟国の反応は鈍く、トランプ氏としては原油価格の急騰を抑え込むための選択肢が尽きつつある可能性を示唆している。中間選挙を控え、原油高は既に共和党の支持率にも打撃を与えている」と指摘した。

  円は対ドルで上昇し、一時158円85銭を付けた。片山さつき財務相は円相場の下落に関し、為替動向を注視すると共に、過度の円安に対しては必要な措置を講じる構えを改めて示した。参院予算委員会で答弁した。

  INGの為替ストラテジストらはリポートで、「為替介入の領域に完全に入っている」と指摘。その上で、「問題は米国が協調介入の形で日本に正式に加わるかどうかだが、その可能性は低い」と記した。

  金相場は続落。スポット価格は1オンス=5000ドル付近で推移した。投資家は原油高がインフレに及ぼす影響を見極めようとしている。

  イラン戦争に伴うエネルギー価格の上昇により、米利下げ観測が後退。トレーダーの間では、17、18両日に開かれる米連邦公開市場委員会(FOMC)会合で利下げが決まる可能性はほぼないとみられている。金利の上昇は利子を生まない金の投資妙味を相対的に下げる。 

  またイラン戦争はドルを押し上げる要因にもなっている。ドル建てで取引される金にとって、ドル高は逆風となる。

   トロント・ドミニオン銀行のシニア商品ストラテジスト、ダニエル・ガリ氏は「今回の紛争では、ドルが究極の安全資産となっている」と指摘。「過去1年間、金は究極の安全資産とみなされてきただけに、この状況は金にとって不利だ」と述べた。

  一方、景気減速と高インフレが同時に進むスタグフレーションへの懸念が、長期的には価値の保存手段として金への投資を促す可能性がある。

  UBSグローバル・ウェルス・マネジメントは16日のリポートで「金は戦争自体への備えというより、紛争が経済などに及ぼす広範な影響に対するヘッジとしての傾向が強い」と指摘。エネルギー価格上昇やインフレ懸念が金相場の重しとなっているものの、「金は主に、通貨安や財政赤字拡大、景気減速など、地政学リスクによって生じ得る金融リスクから資産を守る役割を持つ」と記した。

  金スポット相場はニューヨーク時間午後2時現在、前営業日比28.32ドル(0.6%)安の1オンス=4991.17ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物4月限は同59.50ドル(1.2%)安の5002.20ドルで終了した。

原題:Oil Declines, Giving Stocks and Bonds a Boost: Markets Wrap(抜粋)

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