イラン情勢、ホルムズ海峡の安全確保、来年度予算の年度内成立の道筋など、高市政権を取り巻く環境は、一切の気の緩みも許されないような厳しい環境が続いている。高いハードルを次々とクリアーし、その先で「責任ある積極財政」のスタートとなる2027年度予算案の編成作業がはじまる。積極財政の実効性を上げるのはこれこからだ。環境要因は排除して、実現に向けた課題を整理してみた。すでに総理は断片的だがいくつかの課題を公言している。それらをすべて取り込んで報告書にまとめるのが、6月に予定されている経済財政諮問会議の「骨太の方針」だ。予算の単年度主義から複数年度方式への転換。予算を複数年度にまたがせることによって、将来の展望が見えるようになる。その恩恵を受けるのが積極財政の柱となる政策投資だ。すでに17分野の重点投資分野を決めている。たとえば5年にわたる総投資額を決めておけば、単年度予算に5分の1ずつ計上しても、民間企業は5年先まで見越した投資を検討できるようになる。

複数年度予算の次に重要なのが秋の恒例となった補正予算の廃止だ。臨時国会に提出される補正予算は国会の審議時間もごく短いのが通例で、与野党お手盛り予算になっている。こうした慣例を廃止し当初予算に必要額を盛り込む。国際的にみてもこれはごく当たり前の予算編成だ。もう一つの重点政策が現金給付付き税額控除制度の導入だ。この制度が実現するまでの繋ぎとして高市政権は、食料品に係る消費税を2年間限定で0パーセントとする方針を示している。実現すれば低所得者の手取りが増える。消費者の手取増でGDPが押し上げられ、税収増が期待される。2年後には増税となるが、税額控除によって増税分が相殺できれば税収が落ち込むことはない。これを補う形で27年度予算には政府の政策投資が盛り込まれる。投資効果が現れるのは数年先だが、投資が実行されればまず最初に需要が発生する。これが需給関係を改善し、モノやカネの動きが活発になる。減税と需要喚起、これで景気が回復軌道に乗る。

そこで重要になるのが成長戦略だ。デフレ下の日本で企業は投資を回避し、内部留保の積み上げに勤めてきた。かくしてモノもカネも動かなくなった。これが停滞日本の原因だった。企業が悪いわけっではない。政府が投資できる環境を作らなかったのだ。失われた10年を30年まで伸ばしてしまった。環境が整えば民間企業は投資せざるを得なくなる。減税が政府投資、民間投資と繋がれば企業の経営環境が好転し、売上が増加し賃金も引き上げやすくなる。これが経済の好循環だ。高市総理が提唱する「責任ある積極財政」の責任とは何か。個人的には「コントローラブル」だと考える。イラン戦争をみるまでもなく世界の潮流は不透明で不安定だ。先行きには不穏な空気も流れている。国の純債務の伸び率がGDPの成長率を下回れば、積極財政はコントローラブルだ。だがこれが逆転するような環境が発生した時、新たな決断も必要になる。責任ある積極財政の“勝算”はかなり高いとみる。課題は環境変化に対する臨機応変な対応だろう。