• パウエル議長「インフレ面で進展が見られるまでは利下げできない」
  • ブレント原油は時間外で一時111ドル上回る、WTIも100ドル台
ニューヨーク証券取引所
ニューヨーク証券取引所Source: Bloomberg

Rita Nazareth

18日の米金融市場では、株式と国債がともに下落。原油価格の上昇が売りを誘った。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長がエネルギーコストの上昇はインフレを押し上げると述べたため、利下げ観測が弱まった。円相場は連邦公開市場委員会(FOMC)の政策発表後に対ドルで下げ幅を拡大。1ドル=160円に接近した。

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数6624.70-91.39-1.36%
ダウ工業株30種平均46225.15-768.11-1.63%
ナスダック総合指数22152.42-327.11-1.46%

  FOMCは年内に1回、2027年にもう1回の利下げ見通しを維持したが、市場では今年の利下げ期待が後退した。パウエル議長はFOMCが難しい状況にあると認めつつも、政策金利を引き締め気味の水準に維持することが重要だと述べた。  

  これを受け、米国債利回りは上昇。S&P500種株価指数は1.4%下落し、FOMC開催日としては2024年以来の大幅安となった。北海ブレント原油は通常取引終了後の時間外取引で一時1バレル=111ドルを超えた。

中東の主要なエネルギー施設を巡りイランとイスラエルが相互に攻撃を行い、混乱抑制に向けた米国の取り組みは一段と難しさを増している。

  FOMCは声明で「中東情勢が米経済に及ぼす影響は不確実だ。委員会は2つの責務の両サイドに対するリスクに注意を払っている」と表明した。

  エネルギーコストの急騰は、物価上昇圧力を強める一方で、景気の抑制要因となるリスクがある。ソーンバーグ・インベストメント・マネジメントのクリスチャン・ホフマン氏は、インフレが根強く残る中でエネルギーコストが上昇している点が経済にとってより大きな問題であり、これが米金融政策の余地を狭めているとの見方を示した。

  一方で、原油高による需要減退がディスインフレ効果をもたらす点が、十分に注目されていないとも指摘。エネルギーは明らかにインフレ要因である一方、経済の逆風にもなっていると付け加えた。

国債

  米国債は下落。特に短期債が売られた。パウエル議長が利下げは不確実なインフレ動向に左右されるとの認識を示し、年内の利下げ観測が後退したことが背景にある。

  FOMCは11対1の賛成多数で政策金利の据え置きを決定。また成長見通しを引き上げる一方で、年内1回の利下げ見通しを維持し、タカ派な据え置きと受け止められた。反対票を投じたのはマイランFRB理事のみで、0.25ポイントの利下げを主張した。

国債直近値前営業日比(bp)変化率
米30年債利回り4.88%4.30.90%
米10年債利回り4.27%6.61.58%
米2年債利回り3.78%10.62.87%
米東部時間16時56分

  パウエル議長は記者会見で、インフレ面での進展が見られるまでは利下げできないとの認識を表明。将来的な利上げの可能性も排除しなかったが、それはFOMCの基本シナリオではないと述べた。

  さらに自身の後任が承認され、司法省の調査が終了するまでFRBにとどまる考えも示した。

  金利スワップ市場が織り込む年内の利下げ幅は、約15ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)と、0.25ポイントの利下げ1回にも満たない水準となっている。

  モルガン・スタンレー・ウェルス・マネジメントのエレン・ゼントナー氏は「エネルギー価格の高騰による経済的コストはまだ明らかになっていないため、パウエルFRB議長が今後の利下げについて慎重な姿勢を示したのは当然だ」と発言。「原油供給のショックは通常、成長の大幅な鈍化につながるため、金融緩和の余地は現在多くの人が予想しているよりも広がるだろう」と語った。

外為

  外国為替市場ではドルが上昇。FOMCが政策金利を据え置いたことが買いを誘った。予想を上回る米生産者物価指数(PPI)や中東情勢が一段と緊迫していることも買い材料。

  円は対ドルで下げ幅を拡大する展開となった。一時は0.6%安の1ドル=159円90銭と、2024年7月以来の安値をつけた。

国債直近値前営業日比(bp)変化率
米30年債利回り4.88%4.30.90%
米10年債利回り4.27%6.61.58%
米2年債利回り3.78%10.62.87%
米東部時間16時56分

  パウエル議長が会見で、エネルギー価格の上昇が全般的なインフレを押し上げる可能性があると発言。インフレに関して進展が見られない限り、利下げは行わないとの見解を示し、円売り・ドル買いが優勢になった。

  またPPI統計では、財やサービスの価格上昇を反映し、伸びが予想外に加速した。

  カナダ・ドルは下落した。カナダ銀行(中央銀行)も政策金利を据え置いた。

  クレディ・アグリコルのG10為替調査・戦略責任者ヴァレンティン・マリノフ氏は「現在のFRBは、戦争による成長への影響を懸念しているというよりも、インフレとの長期戦に備えているように見える。これは市場の想定と比べてややタカ派的だ」と述べた。

原油

  原油先物相場は続伸。イランは国内エネルギー施設の一部に攻撃があったとし、それに対する報復攻撃を行う意向を表明した。

  北海ブレント先物は時間外取引で、前日比8%余り上昇して1バレル=111ドルを超えた。前日は3.2%上昇していた。ウェスト・テキサス・インターミィディエート(WTI)も時間外で100ドル台を付けた。

  イラン国営テレビによれば、同国の巨大ガス田である南パルス天然ガス田や、アサルイエの石油関連施設が攻撃を受けた。

  イラン準国営のタスニム通信によれば、カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)にある施設が、報復攻撃の対象となり得る。ファルス通信は、イランのエネルギーインフラへの攻撃は「決して報復なしには終わらない」と伝えた。

  当局者によれば、世界最大の液化天然ガス(LNG)輸出プラントを擁するカタールのラスラファンが攻撃を受け、「甚大な打撃」を被った。

  PVMのアナリスト、タマス・バルガ氏は「ホルムズ海峡封鎖はエネルギー価格の上昇につながるが、米政権はそれを著しく過小評価していた可能性がある」と指摘。「米国のイランにおける目的は依然不透明で、紛争終結の見通しも立っていない」と述べた。

  ウッド・マッケンジーの欧州ガス・LNG担当ディレクター、トム・マルゼックマンサー氏は「生産に打撃が及ぶリスクが高まった」とし、「たとえホルムズ海峡が再開されたとしても、供給の正常化には相当な時間を要する可能性がある」と述べた。

  ウエストパック銀行の商品調査責任者、ロバート・レニー氏は「対立の終結は見通せず、生産停止が日々増加し、ホルムズ海峡が事実上封鎖されている状況を踏まえると、ブレント原油は95-110ドルのレンジで推移するとの見方をわれわれは維持している」と指摘。

  「大規模製油所への攻撃や海峡での機雷敷設の追加が確認されれば、このレンジはさらに10-20ドル上方に拡大する可能性もある」と語った。

  ロンドンICEの北海ブレント5月限は3.96ドル(3.8%)高の同107.38ドルで終了。ニューヨーク商業取引所のWTI先物4月限は11セント(0.1%)高の1バレル=96.32ドルで引けた。

  金スポット価格は6営業日続落。2024年終盤以来の長期下落局面となった。ドルと米国債利回りの上昇が金への重しとなった。

  金スポットはFOMCの発表前から下げていた。エネルギー価格が急上昇しているほか、この日発表されたPPIが予想外に加速したことが背景。

  その後、パウエル議長がFOMC後の会見で、金利を緩やかに景気抑制的な水準に維持することが重要との認識を示し、年内の利下げ観測が後退したことも重しとなった。

  INGバンクの商品ストラテジスト、エワ・マンティー氏は「クロスアセット(資産間)のポジション調整のようだ」と指摘。「原油が供給リスクに反応している一方、金の下落は利益確定売りの可能性がある。ドルと実質金利が上昇する中で、広範囲に売られているようだ」と述べた。

  PPIの伸び加速と原油高を受け、市場はFRBによる年内1回の利下げすら完全には織り込んでいない。利息を生まない金は通常、金利が低下する環境下で投資妙味が増すため、現在の状況は金にとって逆風となる。

  金スポット相場はニューヨーク時間午後4時19分現在、前日比182.42ドル(3.6%)安の1オンス=4823.19ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物4月限はFOMCの政策決定発表前に、同112ドル(2.2%)安の4896.20ドルで終了した。

原題:Stocks, Bonds Hold Losses After Fed on War Angst: Markets Wrap(抜粋)

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