- 株と国債は安値から持ち直し、S&P500種は一時1%下落
- 原油が時間外で伸び悩み、イスラエル首相が楽観的な見通し示す

Rita Nazareth
19日の米金融市場では、急騰した原油相場が一服したことで、資産クラス全体でボラティリティーは低下した。イスラエルが米国によるホルムズ海峡開放を支援していると表明したことを受け、株式と債券はこの日の安値から持ち直した。
ドルは米金利の妙味が薄れたことで主要通貨に対して売られた。欧州中央銀行(ECB)とイングランド銀行(英中央銀行)が、ともにイラン戦争に伴うインフレ加速のリスクを警告したことが意識された。
円は対ドルで上昇。一時は1.5%高の1ドル=157円51銭まで上げた。
| 為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
|---|---|---|---|
| ブルームバーグ・ドル指数 | 1205.13 | -8.62 | -0.71% |
| ドル/円 | ¥157.71 | -¥2.15 | -1.34% |
| ユーロ/ドル | $1.1586 | $0.0134 | 1.17% |
| 米東部時間 | 16時50分 |

イラン戦争は、世界的な債券安による利回り上昇を通じて、米金利の相対的な妙味を低下させている。英中銀は金利据え置きを決めたが、インフレが加速すれば「行動する用意」があると表明。年内の利上げ観測が高まった。
ECBも同じく政策金利を据え置いたが、当局者は物価安定を維持する方針を示した。関係者によると、インフレ率が2%の目標値を大幅に上回った場合、ECB当局者は早ければ4月の次回会合で速やかに利上げに踏み切る用意がある。
これに先立ち、日本銀行の植田和男総裁も、中東情勢の緊迫化などで景気が下押されても、基調物価に影響がなければ利上げは可能との見解を表明。市場が想定する4月の追加利上げも排除しない姿勢を示した。
TDセキュリティーズの通貨ストラテジスト、ジャヤティ・バラドワジ氏は「ECBと英中銀による大幅な利上げを市場が織り込む中、相対的な世界の金利の動きが、ドルの一段高を抑えている」と述べた。
一方、BMOキャピタル・マーケッツのチーフ為替ストラテジスト、マーク・マコーミック氏は「ドルはこの日、積み上がったポジションの調整で下落している。根本的な流れが変わったわけではない。当社のポジショニング分析では、ドルのロングは過去1年の最高水準近くにある」と指摘。「市場がインフレや成長への影響を見極める中での単なる調整の動きだ」と語った。
株式
米国株は下落。S&P500種株価指数は一時1%下げたが、下げの大半を埋めた。
| 株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
|---|---|---|---|
| S&P500種株価指数 | 6606.49 | -18.21 | -0.27% |
| ダウ工業株30種平均 | 46021.43 | -203.72 | -0.44% |
| ナスダック総合指数 | 22090.69 | -61.73 | -0.28% |

米国産原油は通常取引終了後の時間外取引で1バレル=95ドルに下落した。イスラエルのネタニヤフ首相は、イランはもはやウラン濃縮や弾道ミサイルの製造ができないと述べ、紛争は考えられているよりもはるかに早く終結するとの見方を示した。一方、米国はロシア産原油の一部について引き渡しと販売を承認した。
中東での3週間にわたる戦闘は、エネルギー供給網全体を揺るがしている。ホルムズ海峡がほぼ封鎖された状態となる中、ガソリンやジェット燃料の価格は急騰し、インドでは調理用ガスの不足が殴り合いの騒ぎを引き起こし、農家はディーゼル燃料や肥料の確保に不安を強めている。

ベッセント米財務長官は、エネルギー価格急騰を緩和するため、米国がこれまで長年課してきたイラン産原油への制裁解除を検討していると明らかにした。米国の備蓄を単独で放出する可能性も視野に入れているという。
UBSグローバル・ウェルス・マネジメントのウルリケ・ホフマン・ブチャディ氏は「ホルムズ海峡を巡って被害がより小さい形で収束する可能性は依然としてあるものの、最近の出来事によってその道筋は狭まり、ボラティリティーが続くリスクが高まっている」と述べた。
イランは、トランプ米大統領が自制を呼びかけた後も、エネルギー関連資産への攻撃を継続した。JPモルガン・チェースのドゥブラフコ・ラコスブハス氏は、原油価格の急騰は結果的に株式に悪影響を及ぼすことが多いとした上で、戦争が早期に解決すると慢心している投資家は、高いリスクを伴う賭けをしていると指摘した。
国債
米国債相場もこの日の安値から持ち直し、長期債は上げに転じた。当初は主要中銀が物価上昇圧力を抑えるため金融引き締めを余儀なくされるとの懸念から売られた。英国では、イングランド銀行がインフレに対して「行動を取る用意がある」と表明したことを受け、短期金利が上昇した。
| 国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
|---|---|---|---|
| 米30年債利回り | 4.84% | -4.4 | -0.91% |
| 米10年債利回り | 4.25% | -1.8 | -0.42% |
| 米2年債利回り | 3.79% | 1.7 | 0.46% |
| 米東部時間 | 16時50分 |
原油
ニューヨーク原油先物相場は日中の上げを消し、小反落で引けた。ボラティリティーが高まる中、一部の市場参加者が様子見姿勢に回ったほか、トランプ米大統領やベッセント米財務長官の発言も意識された。
トランプ氏は中東に地上部隊を派遣するかとの記者団からの質問に対し、どこにも部隊を派遣するつもりはないと答えた。
ベッセント氏は、イラン政権が内部から崩壊する可能性が高いとの見方を示した。またFOXビジネスで「今後数日に、洋上にあるイラン産原油の制裁を解除する可能性がある」と述べていた。
極端なボラティリティーの高まりが取引を抑制し、出来高が減少傾向にあるとの声が市場では聞かれた。WTI先物4月限は20日に期限を迎える予定で、ポジションを翌月物へ乗り換える動きも荒い値動きにつながった。
CIBCプライベート・ウェルス・グループのシニアエネルギートレーダー、レベッカ・バビン氏は「原油はこの日も乱高下している」と指摘。「緊張緩和を示唆するメッセージを受けて価格は押し戻されている。アジア時間に強含み、米国の取引時間に下落するという明確なパターンが見られる。米政策当局が対応の時期や選択肢を示唆するためだ」と述べた。
これより先には、イランによる湾岸諸国への攻撃が激化し、主要なエネルギー施設が長期的なダメージを受けたことから、原油と天然ガスの価格は急騰していた。ホワイトハウスが石油・ガスの輸出制限を検討していないとする報道もWTI価格を押し上げていた。
イランのミサイル攻撃によって、カタールのラスラファン工業地区にある世界最大のLNG輸出プラントが「甚大な被害」を受けた。カタールの液化天然ガス(LNG)輸出能力の約17%を占める施設が損傷し、修復には3-5年を要する見通しだと、ロイター通信は国営カタールエナジーのサード・アルカービ最高経営責任者(CEO)の話を基に報じた。
サウジアラビアでは、ホルムズ海峡の事実上封鎖を受け、同国にとって重要な輸出ルートとなっている西岸での原油積み出しが攻撃により一時停止した。
アブダビのハブシャンのガス施設も、迎撃されたミサイルの破片が落下した影響で操業を停止した。クウェートの製油所2カ所はドローン攻撃により炎上した。
ラボバンクのエネルギーストラテジスト、フローレンス・シュミット氏は「新たな攻撃で、戦争がもたらす実際の供給制約に再び注目が集まっている。エネルギー供給の制約は日々、強まっている」と指摘した。
ブレントは一時11%上げて1バレル=119.13ドルを付けた後、1.2%高の108.65ドルで引けた。時間外取引では一時下げに転じた。米国のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は100ドルを上回った後、0.2%安の96.14ドルで終了した。
金
金スポット相場は7営業日続落。中東の戦争激化で原油価格が上昇し、米国の利下げが短期的には遠のいたとの見方が背景にある。
金は一時6.6%下げて、2023年以来の長期下落局面となった。利子がつかない金にとって、これは逆風になる。銀も一時13%余り下落した。
TDセキュリティーズのコモディティー戦略グローバル責任者、バート・メレク氏は「金利と原油が焦点になっている」と指摘。「景気減速とインフレが同時に進むことへの懸念がある。FRBなどの中銀は金融引き締め方向にかじを切る可能性がある」と述べた。
戦争勃発以降の金の値動きは、ロシアのウクライナ侵攻でエネルギー価格が高騰した2022年夏の下落局面をほうふつとさせる。直近の価格変動は、1月の乱高下に比べれば小さいが、激しい変動は安全資産を求める一部の投資家を遠ざけている。
金価格に連動する上場投資信託(ETF)では資金流出が数週間続き、価格を圧迫している。欧米の個人投資家や機関投資家が金を保有する手段として一般的なETFの需要は、金利見通しの変化にとりわけ左右されやすい。

年間数十億ドル規模の貴金属を販売するストーンX・ブリオンのマネジングディレクター、ダニエル・マーバーガー氏は、最近の金や銀の売り圧力に対し、個人投資家による地金やコインの強力な買い需要が相場を下支えしていると述べた。金はここ数週間に上昇の勢いが鈍化しているものの、年初来ではなお6%超値上がりしている。
金スポット相場はニューヨーク時間午後2時44分現在、前日比209.61ドル(4.4%)安の1オンス=4608.89ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物4月限は同290.50ドル(5.9%)安の4605.70ドルで終了した。
原題:Euro and Pound Rise After Central Bank Decisions: Inside G-10、{Dollar’s Oil-Fueled Rally Is Derailed By Surging Global Yields}(抜粋)
Stocks Pare Losses as Oil Falls on Hormuz Hopes: Markets Wrap
Crude Oil Prices Ease as Traders Weigh Trump, Bessent Comments
Gold and Silver Fall as Iran War Damps Rate-Cut Hopes