SNSで対日批判、その内容は?
読売新聞社と人工知能(AI)開発に取り組む新興企業サカナAI(東京)は共同で、SNS空間での中国による対日批判を分析した。昨年11月の台湾有事を巡る高市首相の国会答弁に関し、中国政府は6日後から大規模な認知戦を仕掛けた可能性が高いことが分かった。中国側は日本の反応も見ながら対応を決定したとみられる。SNSでの大量の投稿をAIの新技術で分析し、認知戦の実態を解明したのは初めて。
首相は11月7日の衆院予算委員会で、中国が台湾を海上封鎖すれば現場の米軍も攻撃を受ける可能性があるとの認識を示し、「武力行使を伴うものであれば、どう考えても存立危機事態になりうる」と答弁した。中国政府は猛反発し、日本への渡航自粛要請や軍民両用(デュアルユース)製品の輸出規制などの圧力を強めて日中関係は悪化した。
本紙とサカナAIは答弁前の10月下旬から1月にかけて、X(旧ツイッター)や中国のSNS・ 微博 での対日批判の投稿計約40万件を分析した。政府機関や国営メディアなど中国共産党系の主要なアカウントを抽出し、大規模言語モデル(LLM)を用いて投稿のニュアンスも含めて内容を解析した。中国共産党系アカウントの対日批判投稿数と閲覧数の推移
その結果、対日批判の投稿は〈1〉11月7~9日はわずか〈2〉中国外務省が記者会見で首相答弁を批判した10日に一時増加し、11~12日に再び低調〈3〉13日から急増――していた。中国は首相答弁に即座に反応したわけではなく、「沈黙の6日間」を経て13日に金杉憲治・駐中国大使を呼び出し、認知戦を本格展開したことになる。X全体を分析したところ、対日批判の投稿の閲覧数は14日から急増した。
また、8~12日に中国に対する批判の投稿もX全体で急増していた。 薛剣 駐大阪総領事が首相答弁を受け、自身のXで「その汚い首は一瞬の 躊躇 もなく斬ってやるしかない」と発信したことへの「怒り」が大きな割合を占めた。
このため、AIは6日間に中国が認知戦の統一的な戦略を「検討」「頭出し」「本格展開の開始」の3段階で進めたと判断した。対日戦略の策定を巡っては、日本側の強い反応も考慮したとしている。
微博の中国共産党系アカウントの投稿も分析したところ、同じ傾向が表れた。
今回の分析結果について、日本政府関係者は「中国内部の意思決定はブラックボックスだが、分析結果に大きな違和感はない」と評価した。別の政府関係者は「 王毅 外相らは当初、首相答弁を様子見しようとしていたようだ」と述べ、対中批判の高まりから 習近平 国家主席にまで答弁について報告せざるを得なくなったとの見方を示した。
◆ 認知戦 =語り手が自身の視点や主張を織り交ぜて語る「ナラティブ」(言説)や偽情報を利用して人々の「認知」に影響を与え、自国に有利な状況を作り出す戦い。陸・海・・空・宇宙・サイバーに続く「第6の戦場」とされている。