• 北海ブレント原油が一時14%下落して96ドル、S&P500種は一時2.2%高
  • ドル指数は一時0.7%安、円は対ドルで158円02銭まで上昇
ニューヨーク証券取引所
ニューヨーク証券取引所Photographer: Michael Nagle/Bloomberg

Rita Nazareth

23日の金融市場では、中東情勢の緊張緩和への期待が広がったことで、原油価格が下落し、米株価指数は上昇した。トランプ米大統領がイランのエネルギー関連インフラへの攻撃延期を表明した。

  北海ブレント原油は一時14%下げた。イラン側がその後、米国と交渉はしていないと主張したことを受け、下げ幅は縮小した。

  S&P500種株価指数は1%余り上昇して引けた。一時は2.2%上昇した。米国債利回りとドル指数はいずれも低下した。

  モルガン・スタンレー傘下Eトレード・ファイナンシャルのクリス・ラーキン氏は「このリリーフラリー(安堵感による上昇)が持続するには、地政学面での具体的な進展を伴うことが必要になるだろう。市場は依然としてニュースの見出しに左右される状況だ」と述べた。

  トランプ氏はイランのエネルギー関連インフラおよび発電所への攻撃計画を5日間延期すると発表。イランと「実りある会話」を行ったとも述べた。

  週末には48時間以内にホルムズ海峡を開放しなければ、イランの複数の発電所を「攻撃し壊滅させる」と投稿していた。突然の方針転換に市場関係者は不意打ちを食らった格好となった。

原油

  北海ブレント原油先物は一時、14%安の1バレル=96ドルまで下落。日中の値動きとしては過去最大級の変動となった。その後、イランが協議を否定したことで下げ幅を縮小する場面もあったが、合意は数日以内に成立する可能性があるとのトランプ氏の発言が伝わると、再び売り優勢となった。

  ロンドンICEの北海ブレント5月限は前営業日比12.25ドル(11%)安の1バレル=99.94ドルで終了。ニューヨーク商業取引所のWTI先物5月限は10.10ドル(10.3%)安の88.13ドルで引けた。

   CIBCプライベート・ウェルス・グループのシニアエネルギートレーダー、レベッカ・バビン氏は「流動的な状況が続いており、協議も数日間にわたる見通しで、高ボラティリティーは収まらないだろう。ただ、交渉のトーン次第では上昇余地が抑えられ始める可能性がある」と語った。

  米当局者からは最近、エネルギー市場の沈静化を図る発言が相次いでおり、この日のトランプ氏の投稿や発言もその流れに沿ったものとみられる。進行中の外交協議に詳しい関係者らは、トランプ氏がエネルギー施設への攻撃計画を停止した決定について、原油価格を抑制する狙いがあったとみている。実際、トランプ氏も関連性を認めた。

  同氏は「合意が成立すれば、原油価格は急落するだろう。実際、今日すでに下がっているようだ。合意に至る可能性は非常に高い」と述べた。

  原油相場でボラティリティーが極端に高まっていることで、市場参加者の間には疲弊の色も広がる。ブレント先物で観測された過去最大級の変動のうち、6回中4回が2月末の戦争開始以降に集中している。

  「市場は完全な混乱状態にある」と、PVMオイル・アソシエーツのアナリストは指摘。トランプ氏の最新のSNS投稿については、「市場の力に屈したことを示す明確なサインだ」との見方を示した。

  緊張緩和が進めば、中東で原油生産の一部が回復する可能性がある。ただ、実際の供給は、タンカー船主がいつホルムズ海峡を通航する意思を示すかに大きく左右されるとみられる。

  ラボバンクのエネルギーストラテジスト、フローレンス・シュミット氏は「これでホルムズ海峡が再開されるわけではなく、エネルギー市場は依然として供給制約に直面する。時間を稼ぐ一方で、供給再開はさらに先送りされる」と語った。

株式

  米国株は3指数そろって反発した。

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数6581.0074.521.15%
ダウ工業株30種平均46208.47631.001.38%
ナスダック総合指数21946.76299.151.38%

  ただ、原油市場への打撃は、外交的な打開が実現したとしても長期化する可能性がある。イランがどのように対応するかも依然として不透明だ。

  仮に協議がうまくいっても、ホルムズ海峡がすぐに再開されることは想定しにくい。海上ルートの混乱は続き、エネルギー市場では供給の不確実性が長期化するとの見方が織り込まれる公算が大きい。

  エドワード・ジョーンズのブロック・ワイマー氏は「発言の変化は前向きなものではあるが、実質的な緊張緩和を最も明確に示すのは、ホルムズ海峡を通過する原油の流れが回復するかどうかだ」と述べた。

  フリーダム・キャピタル・マーケッツのジェイ・ウッズ氏は、市場が「売られ過ぎ」の状態にあったことを考えれば、攻撃延期で株式市場で買いが優勢になったことに驚きはないと述べた。

  シタデル・セキュリティーズのスコット・ルブナー氏は「地政学的な緊張が和らげば、上昇相場の条件は十分に整っている。米国株に対するショートポジションが過去最大級の水準にあるためだ」と述べた。

  エバコアのクリシュナ・グーハ氏は「これが戦争の出口に向けた真の進展を示すものなのか、それともトランプ氏が時間を稼ぎ、原油が150ドルに向けて急騰するのを防ぐための『ジグザグ』の対応なのかは判断できない」と指摘した。

  「ただ、少なくとも金利には一時的な安堵(あんど)感をもたらすはずだ。それ以上の好影響もあるかもしれない」と述べた。

外為

   ニューヨーク外国為替市場でドル指数は下落した。イランのエネルギー関連インフラへの攻撃延期を巡るトランプ氏の発言が材料。円は対ドルで上昇。一時約0.8%高の1ドル=158円02銭を付けた。

為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1205.77-5.16-0.43%
ドル/円¥158.43-¥0.80-0.50%
ユーロ/ドル$1.1610$0.00380.33%
米東部時間16時55分

  中東での緊張激化への懸念を背景に、ブルームバーグ・ドル・スポット指数は一時0.5%上昇し、昨年12月以来の高値を付けた。その後、トランプ氏の発言が伝わり、0.7%安まで下げた。

  ウェルズ・ファーゴのストラテジスト、アループ・チャタジー氏は「市場は絶望から希望へと振れているようだ」と指摘。その上で、「確かな根拠に基づいた動きかどうかは明確でない」と述べた。

  ゴールドマンのストラテジストらは「ここ数日、緊張の激化と緩和を報じるニュースの見出しが次々と流れ、日中の相場の動きを左右している。このことは、先行きにかなりの不確実性があることを示している」とリポートで指摘した。 

  TDセキュリティーズの外為戦略責任者、ジャヤティ・バラドワジ氏は「示唆されているように、戦争の出口が今後数週間で見えてくれば、ドルには再び売り圧力がかかると予想している」と述べた。

  ポンドも対ドルで上昇。一時は1%高の1ポンド=1.3479ドルを付けた。短期金融市場でイングランド銀行(英中央銀行)による年内1ポイントの利上げが初めて完全に織り込まれた。イラン情勢が引き続きインフレ圧力を強めている。

  資源国通貨であるノルウェー・クローネは主要通貨の中で特に下げが大きくなった。

米国債

  米国債相場は上昇(利回り低下)。原油価格の下落が材料となった。

国債直近値前営業日比(bp)変化率
米30年債利回り4.91%-2.4-0.48%
米10年債利回り4.34%-3.8-0.86%
米2年債利回り3.85%-5.0-1.29%
米東部時間16時55分

  2年債利回りは早い時間帯の取引で一時4%を上回り、昨年6月以来の高水準を付けたが、トランプ氏がイランのエネルギー関連インフラへの攻撃延期を表明したことを受けて急低下。

  30年債利回りは一時上昇して5%に迫る場面があったが、4.91%に低下した。

  アメリベット・セキュリティーズの米金利責任者、グレゴリー・ファラネロ氏は「原油価格の上昇は、トランプ政権にとって問題だ」と指摘。「米国債は原油価格に連動しており、それが見られた」と述べた。

  シカゴ連銀のグールズビー総裁はこの日、「インフレが落ち着けば、今年中に複数回の利下げを行う状況に戻る可能性もある。もし状況が異なる方向に進み、インフレが制御不能になった場合、利上げが必要になる状況も想定できる」とCNBCのインタビューで語った

  リチャード・バーンスタイン・アドバイザーズのマイケル・コントプロス副最高投資責任者(CIO)は「年内にFRBが利上げに踏み切る可能性は非常に高い」と、ブルームバーグテレビジョンで発言。

  FRBが「インフレを抑制するために需要を冷やす」必要性に直面する可能性があると述べた。

  金スポット価格は下げ幅を縮める展開。アジア時間には大幅安となっていたが、ニューヨーク時間の朝方にトランプ氏がイラン発電所への攻撃計画を5日間延期すると述べると、持ち直した。

  シティグループのアナリストは23日のリポートで「金は現在、リスク資産のように取引されている。過去20年の多くのリスクオフ局面でも同様の動きが見られた」と指摘。「こうした値動きのサイクルは、過去6カ月に見られた強いモメンタムと個人投資家の買いの大きさを踏まえると、とりわけ顕著だ」と語った。

  イラン戦争期間中の金価格の低迷の一因は、投資家が比較的流動性の高い資産を手放す現金への逃避にある。金利上昇やドル高への期待も、押し下げ要因となっている。

  戦争開始以来、エネルギー価格の高騰により、米連邦準備制度理事会(FRB)や他の中央銀行による利上げの期待が高まっている。金利が高止まりしている状況では、利回りのない金地金は魅力が薄れる。2022年に始まったロシアのウクライナ侵攻の際も、同様の動きが見られ、金価格は当初安全資産として急騰したものの、エネルギー価格ショックが市場に波及しインフレ圧力が強まってからは、数カ月にわたり下落が続いた。

   BNPパリバのコモディティ戦略ディレクター、デビッド・ウィルソン氏は、「2008年、2020年、2022年の過去3回の経済ショックサイクルを振り返ると、ニュースの流れに反応し、投資家が米ドルを得るために資産を売却し、金価格は当初下落している」と指摘した。その後は持続的な上昇が続いたという。

  また、複数のアナリストは、今回の戦争を受けて中央銀行が金の売却に動く、あるいは少なくとも購入ペースを鈍らせる可能性を指摘している。各国・地域の中銀は2022年以降、大規模な買い越しを続けてきたが、そのペースは今年に入る前からすでに減速していた。

  ナティクシスのアナリスト、バーナード・ダダ氏は「一部の中央銀行が通貨防衛やエネルギー購入の資金確保のために金を売却している可能性が高い」と指摘。これが23日早い時間の金価格急落の背景だとの見方を示した。

  金スポット相場はニューヨーク時間午後2時現在、前営業日比67.93ドル(1.5%)安の1オンス=4424.49ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物6月限は同170.10ドル(3.7%)安の4439.50ドルで終了した。  

原題:Oil Dives as Trump Backs Off Iran Threats, Says Talks Underway(抜粋)

Stocks Rise, Oil Falls as Trump Eases Iran Threats: Markets Wrap

Dollar Drops as Trump Claims Iran Talks Underway: Inside G-10

Dollar Declines as Trump Says Talks With Iran Underway (4)

Treasury Yields Fall From Highs as Trump Talk Spurs Slide in Oil

Gold Pares Dramatic Losses as Trump Backs Off From Iran Threat