米関係者の間で懸念材料となっていたプライベートクレジット(ノンバンク金融)市場で、金融不安の兆候が拡大している。業界大手のアレス・マネジメントとアポロ・グローバル・マネジメントが投資家からの資金引き出し要請に対し、支払いを半分未満に制限する措置に乗り出したのだ。同市場の規模は1兆8000億ドル(約286兆円)にのぼるが、専業大手2社の緊急措置発表で、業界ならびに金融市場に緊張が高まっている。米国の金融危機といえば、2008年に突発したサブプライムローン危機が頭に浮かぶ。イラン戦争でインフレ危機が叫ばれているが、米国の足元には同時進行でプライベートクレジット危機も忍び寄っている。Bloombergは今日、「プライベートクレジットの巨人、クリフウォーター率いる親子に試練」と題した長文の記事を掲載している。米国に迫り来る危機は、どうやらイラン戦争だけではないようだ。
プライベートクレジットといってもこの分野には多様な金融手段が存在している。金融機関の非上場の企業に対する直接融資や、ノンバンクが行う融資、そうした融資を集めて投資するプライベートクレジットファンド、さらにはファンドがファンドに投資したり融資したりする形態まである。非上場企業が対象ということもあり、投資家は機関投資家や企業が大半。ディスクロージャーの義務も株式や公開ファンドに比べてかなり緩くなっている。市場に参入する金融機関やノンバンクにとっては参入しやすい市場だ。いつの間にか市場規模は2兆ドルに近づいている。プライベートクレジット関連の金融業務を手掛ける金融機関やノンバンクにとっては堅調な米国経済と、スタートアップを含めた非上場企業はリスクが小さく、かつ、収益性の高いビジネスだった。ところが米経済に先行きの不透明感が広がると同時に、プライベイトクレジット市場で資金の流出が始まる。大袈裟にいえば資金の流入が止まった途端に、危機が顕在化し始めたのである。かつてのサブプライムローンに似ている。
アポロ、アレスの業界大手2社は苦肉の策として解約に上限を設けるという非常手段に打って出た。こうした対抗策が発表されると、さらに解約が膨らむ。金融不安が始まるいつものパターンだ。アレスは解約請求は「当社の2万人超の株主全体の1%未満にすぎない」と強調する。だがアリの一穴は止まらない。Bloombergは「プライベートクレジットの巨人、クリフウォーター率いる親子に試練」と題した読み物を掲載した。巨大なファンドを築き上げて注目を集める米投資顧問会社クリフウォーターに強烈な逆風が吹き始めているというストーリーだ。「不安を募らせた投資家が資金の払い戻しを求め続け、(会社が)が現金確保に走らざるを得なくなり、解約と評価損の悪循環を招いている」と現状報告している。専門家は「サブプライムほどの危機にはならない」と指摘している。イラン戦争、インフレ、財政危機が米経済に陰を落とす中でプライベートクレジット市場、先行きはどうなるのだろうか。