• 「米国に大きく譲歩する可能性は極めて低い」-シンクタンクの分析
  • 大統領選に複数回落選、テヘラン市長時代に男女分離政策で住民反発
ガリバフイラン国会議長
ガリバフイラン国会議長Photographer: Courtney Bonneau/AFP/Getty Images

Golnar Motevalli

トランプ米大統領が戦争終結に向けた進展を強調するイランとの交渉。その交渉相手としてイラン国会議長で元テヘラン市長、元革命防衛隊(IRGC)司令官のモハンマド・ガリバフ氏の名前が浮上している。反体制への強硬姿勢で知られ、戦時指導部の中核を担ってきたガリバフ氏は、米国の要求に屈する可能性が低いことが、過去の言動からうかがわれる。

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  約50年続く神権体制を強固に擁護する要人として、同氏はエネルギー市場の混乱を通じてトランプ氏に圧力をかけ、戦争に勝利しつつあると示唆している。ガリバフ氏の経歴と人物像は、中東情勢の先行きを見極める上で重要なポイントとなっている。

  ガリバフ氏(64)は、故最高指導者ハメネイ師の下で形成された、不安定で時に熾烈(しれつ)な政界を渡り歩いてきた経験豊富な体制内部の人物だ。複数回の大統領選敗北を経て、2020年から国会議長を務めている。

  IRGCや国家警察での経歴も長く、政治だけでなく安全保障・軍事機構にも深く関与してきた。

  「ガリバフ氏は野心的で実務的な内部関係者だが、イスラム体制への忠誠心から、ワシントンに大きく譲歩する可能性は極めて低い」と、非営利シンクタンクのインターナショナル・クライシス・グループでイラン・プロジェクトを担当するディレクター、アリ・バエス氏は分析する。「イランは米国とイスラエルの行動に激怒し、両国への不信感も深いため、本格的な合意に向けた余地や意欲はほとんどない」と述べた。

IRAN-TEHRAN-DESTROYED BUILDINGS
空爆で破壊されたテヘランの集合住宅(3月23日)Source: Xinhua News Agency

  トランプ氏は交渉の進展を強調する一方で、米軍には約2000人の中東派遣を命じており、軍事的な緊張は続いている。湾岸のアラブ諸国も、情勢が悪化した場合に備え、参戦を検討している。

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  ガリバフ氏は25日、X(旧ツイッター)に「地域における米国の動き、とりわけ部隊配備を注視している」と投稿。「われわれが自国を防衛する決意を試してはならない」と述べた。

  ガリバフ氏は故ハメネイ師の息子で最高指導者を後継したモジタバ・ハメネイ師と近い関係にあり、1988年に終結したイラン・イラク戦争で共に戦ったことがある。トランプ氏は23日、モジタバ師は交渉に関与していないと述べている。新たな最高指導者は就任後、公の場に姿を見せておらず、重傷を負っている可能性があるというのが米国の見解だ。

  ガリバフ氏はIRGC司令官時代、航空宇宙部門や建設部門を率いた。その後は国家警察の指揮官を長年務めた。2005年にはテヘラン市長に選出され、10年以上もの間、イラン最大の都市を運営した。

政治的な野心

  イラン大統領を目指した過去の試みから、ガリバフ氏は打算的な野心家との印象を持たれているが、有権者に支持を広げるには至っていない。

  生放送された2013年のテレビ討論で、強硬かつ攻撃的な姿勢を国民に見せつけただけでなく、学生デモの弾圧など強硬な保守的価値観により、教育水準の高い中間層からの支持を失っている。

  このテレビ討論でガリバフ氏は、抗議活動鎮圧における暴力的手法について、穏健派のロウハニ氏に繰り返し批判された。同年の選挙ではロウハニ氏が当選し、大統領に就任した。

  ガリバフ氏は自己顕示的な行動を好む傾向がある。2024年にヒズボラの指導者ナスララ師がイスラエルに暗殺された後、自ら航空機を操縦してベイルートに向かう動画を公開した。その年に開かれたBRICs首脳会議ではイラン代表として、ロシアのプーチン大統領とも会談している。

男女分離と暴力

  イスラム的価値観を重視する同氏は、テヘラン市長時代に職場での男女分離を進めるなどの政策を打ち出した。2014年には歩道の男女分離を提案し、反発を招いた。

  市長時代には汚職の疑惑も持ち上がった。不動産を廉価で市議会議員に提供した疑惑などが報じられたほか、国民が経済危機で苦しむ中、家族による海外不動産取得にも関与したとの疑惑が持たれた。同氏は一貫して疑惑を否定している。

  1999年には当時のハタミ大統領に宛てた共同書簡で、学生デモの鎮圧を求めた。同氏は後に、オートバイに乗りながら警棒でデモ隊を殴打したと語っており、その様子が記録されている。その後も一連の改革派メディア閉鎖や記者・活動家の拘束に関与したとされる。

  こうした強権的指導者としての側面は、イスラム共和国としてのイランに強い忠誠を持つ有権者からは支持されている。

  「ガリバフ氏は強権的な指導者であり、体制の旧守派の一員として、重要な人脈と革命防衛隊の支持を得ている」と、ブルームバーグ・エコノミクスのアナリスト、ディナ・エスファンディアリー氏は述べた。

原題:Iran’s Potential Peace Negotiator Known for Strongman Approach(抜粋)