• 米海兵隊員らは強襲揚陸艦で米中央軍の管轄区域に到着した
  • 米国防総省が数週間に及ぶ地上作戦を準備しているとWAPO紙が報道

Dana KhraicheKateryna KadabashyArsalan Shahla

イラン戦争は29日に開戦から5週目に突入した。イエメンの親イラン武装組織フーシ派が28日、イスラエルに対し弾道ミサイルを発射し、戦闘に加わる一方、米軍の強襲揚陸艦が中東に到着した。

  イスラエル軍もテヘランのミサイル製造・貯蔵施設などへの空爆を継続し、サウジアラビアはイランからのドローン十数機を迎撃した。国際貿易とエネルギー市場の混乱が続き、死者は既に数千人に上る。

  米中央軍は、米海兵隊員ら約3500人が強襲揚陸艦で同軍の管轄区域に入ったと発表。米国防総省が数週間に及ぶイランでの地上作戦を準備していると米紙ワシントン・ポストが報じた。ペルシャ湾の原油積み出し拠点、カーグ島占拠という選択肢が政権内で言及されたという。

  同紙によれば、地上作戦が実施されるとしても本格的な侵攻ではなく、特殊部隊と在来型歩兵を組み合わせ強襲を行う可能性がある。戦争を新たな局面にエスカレートさせる恐れがあるが、国防総省のプランの全体ないし一部をトランプ大統領が承認するかどうかは、28日時点で不明という。

  複数のメディアによれば、イラン側も周辺国への攻撃を強め、サウジの基地では十数人の米軍関係者が負傷した。さらに米空中早期警戒管制機(AWACS)「E-3セントリー」が破壊されるなど、複数の軍用機に被害が出た。

  主要なアルミ供給国、アラブ首長国連邦(UAE)最大の金属プラントを運営するエミレーツ・グローバル・アルミニウム(EGA)のタウィーラ製錬所と、 単一拠点としては世界最大のアルミ製錬所を傘下に置くアルミニウム・バーレーンの施設もイランの標的となった。

31st MEU | Lima Company conducts live fire deck shoot
米国の強襲揚陸艦「トリポリ」艦上、実弾演習を行う海兵隊員ら(米海兵隊が提供した3月16日撮影の写真)Photographer: Lance Cpl. Gerardo Mendez/US Marines

  フーシ派はイランのほか、レバノンの親イラン民兵組織ヒズボラなど代理勢力に対する米国とイスラエルの攻撃が停止するまで作戦を継続すると表明した。

  イスラエル軍はイエメンから発射されたミサイルを確認したと発表。この飛翔(ひしょう)体が迎撃されたかどうかについては現時点で明らかにしていない。

  フーシ派の動きはイラン戦争に新たな戦線を開くものであり、原油市場には新たなリスクが加わった。

  同組織は紅海南部や、紅海とアデン湾を結ぶ要衝バベルマンデブ海峡を通過するタンカーなどを攻撃するとは明言していないが、その能力は持っている。2023年のガザ戦争開始後には、西側の船舶の多くに対して同海域を事実上封鎖した経緯がある。

  また、事実上封鎖されたホルムズ海峡を回避するため、サウジが石油輸出で利用しているヤンブー港も、フーシ派のミサイル射程内にある。

  政治コンサルティング会社ユーラシア・グループはフーシ派について、サウジの石油施設を標的とすることは当面避ける可能性が高いとの見方をリポートで示した。

  フーシ派は2022年にサウジと停戦で合意しており、この合意はおおむね維持されてきた。フーシ派の支配地域にサウジ政府が一定の資金を提供することも合意に含まれている。

  フィラス・マクサド氏らユーラシア・グループのアナリストは28日、フーシ派は「戦争への関与を示す必要がある一方、さらに関与することに伴う不利益を最小限に抑え、サウジとの暗黙の了解を維持する姿勢も強い」と指摘した。

  その上で、「事態が一段と激化した場合はイランから圧力を受け、サウジの石油輸出を標的とする可能性はある」と述べた。

イランが報復

  一方、イランは米国とイスラエルによる27日の核関連施設や製鉄所への空爆の報復として、湾岸アラブ諸国やイスラエルに対する攻撃を実施したと発表した。

  アラブ首長国連邦(UAE)は28日、弾道ミサイル迎撃後にアブダビ首長国のケザド工業地区付近で火災が発生し、少なくとも6人が負傷したと報告。

  中東最大のアルミニウム生産企業であるエミレーツ・グローバル・アルミニウムは、イランによるドローンとミサイルの攻撃を同日に受け、主要拠点が「重大な被害」を受けたと明らかにした

  AP通信によると、サウジのプリンス・スルタン空軍基地へのイランの攻撃で、少なくとも15人の米兵が負傷。うち5人が重傷となっているほか、複数の空中給油機が損傷した。

  イランは同基地を弾道ミサイル6発とドローン約30機で攻撃したと、APは匿名の当局者を引用して報じた。米軍はこれまでのところ公式なコメントを出していない。

  クウェートは28日に国内の空港が複数のドローン攻撃を受け、レーダーシステムに重大な損傷が生じたと明らかにした。オマーンはサラーラ港が複数のドローンによる標的となり、操業を停止したと発表。1人が負傷したという。

Tehran
イスラエルの攻撃を受けた建物で活動するイランの救急隊員(27日、テヘラン)Photographer: Vahid Salemi/AP Photo

  イスラエルの救急当局によると、イランによるテルアビブへの攻撃で1人が死亡。さらに、イスラエル軍は27日にレバノン南部で兵士9人が負傷し、少なくとも1人が重傷を負ったと発表した。

  米中央軍は28日、戦争開始以降に1万1000以上の標的に攻撃を加え、150隻を超えるイランの船舶を破壊したとXで説明した。

戦争の長期化懸念

  緊張の激化に伴い、イラン戦争が長期化するとの懸念が高まっている。トランプ大統領は今週、交渉を促したものの、イランと米国が近く和平協議を行う兆しは乏しい。トランプ氏は、ホルムズ海峡の再開にイランが応じなければ発電所を攻撃するとしていた期限を4月6日まで延期した。

  イランは、主要な核施設の解体やミサイル戦力の削減、ホルムズ海峡の再開と引き換えに制裁緩和を提示するトランプ氏の15項目の提案を拒否。同海峡は通常、世界の原油・液化天然ガス(LNG)供給の約5分の1が通過する要衝だが、米国とイスラエルが2月28日に攻撃を開始して以降、ほぼ封鎖状態にある。

  一方、イランは戦争賠償やホルムズ海峡に対する一定の支配権の承認、米国とイスラエルが今後攻撃しない保証などを求めている。

  サウジとトルコ、エジプトの外相は3月29、30両日にパキスタンの首都イスラマバードを訪問し、地域の緊張緩和に向けた対応を協議する予定だ。

  パキスタンのシャリフ首相は28日、イランのペゼシュキアン大統領と1時間余りにわたり電話会談を行った。首相府が声明で明らかにした。継続中の戦闘や和平に向けた取り組みについて幅広く協議したという。

  声明によると、ペゼシュキアン大統領は交渉や仲介を進めるには信頼構築が必要だと強調した。

  パキスタンのダール外相は、イランがパキスタン船籍の船20隻のホルムズ海峡通過を認め、今後は1日当たり2隻の通航を許可することで合意したとXに投稿。「平和の兆しだ」と述べた。

原油高

  短期的な停戦期待は後退しており、原油価格は上昇傾向にある。北海ブレントは27日に1バレル=112ドル超で取引を終え、紛争開始以降の上昇率は55%を超えた。

  イラン戦争は、世界経済に燃料不足やスタグフレーションへの懸念をもたらしている。

  複数の政府や非政府機関によると、これまでに4500人超が死亡。その約4分の3をイランが占める。レバノンでは約1100人が死亡し、100万人余りが避難を余儀なくされている。イスラエルや湾岸諸国でも数十人が死亡している。

  イラン国営メディアの報道によると、米国とイスラエルは27日、アラク原子力施設の一部である研究用重水炉、ヤズド州のイエローケーキ(ウラン精鉱)生産工場、国内最大規模の製鉄所2カ所を攻撃対象とした。

残る標的

  トランプ氏は27日、フロリダ州マイアミで記者団に対し、「彼らは今、交渉している。合意したがっている」と主張。「イランは壊滅的な打撃を受けている」と述べた。

  その後のイベントでも軍事作戦について言及し、「残る標的は3554あるが、それもかなり速やかに完了するだろう」と発言した。

  事情に詳しい関係者によると、ルビオ米国務長官は27日、主要7カ国(G7)の外相に対し、戦争は数カ月ではなく数週間で終結するとの見通しを示した。

  トランプ氏が期限を4月6日まで延長したことで、米国は中東地域に部隊を集める時間を確保することが可能で、地上部隊投入が近いとの観測も強まっている。

  一方、トランプ政権は中東に数千人規模の兵力を展開しているものの、イランへの地上攻撃を直ちに計画しているわけではないとの姿勢を同盟国に示している。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。

原題:Strikes Continue as Houthis Join Iran War and US Troops ArriveIran-Backed Houthis Join War as More US Troops Reach Region (1)Houthis Say They Launched Missiles, Drones Targeting IsraelPakistan PM Sharif, Iran President Pezeshkian Discuss Conflict(抜粋)