• パウエル議長、中・長期のインフレ見通しは抑制されていると指摘
  • 株は続落、金には押し目買いーWTI原油先物は100ドル超で引ける
ニューヨーク証券取引所の外(3月20日)
ニューヨーク証券取引所の外(3月20日)Photographer: Michael Nagle/Bloomberg

Rita Nazareth

30日の米金融市場では米国債相場が反発。パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長の発言で、エネルギー価格高騰が直ちにインフレに影響するとの不安が和らぎ、市場では年内利下げ観測が復活した。調整相場入りが目前に迫っていたS&P500種株価指数は、この日は小幅続落。ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)原油先物は100ドル超で引けた。

国債直近値前営業日比(bp)変化率
米30年債利回り4.91%-5.9-1.20%
米10年債利回り4.35%-8.2-1.84%
米2年債利回り3.83%-7.8-1.99%
米東部時間16時37分

  10年債利回りは一時、2月上旬以来の大幅低下となった。パウエル氏は中・長期のインフレ見通しは抑制されているようだと発言。これを受けて市場からは年内利上げの観測が消えた。

  パウエル氏はインフレ期待が「短期を超えてしっかり安定しているようだ」と、ハーバード大学で開かれたイベントで発言。紛争の影響に対応する必要が生じる可能性はあるが、現時点ではその段階には至っていないと付け加えた。

  エバコアのクリシュナ・グーハ氏は「パウエル氏の落ち着いた口調と、原油価格の高騰長期化による成長リスクに市場がようやく注目するようになったことが、金利見通しの転換を後押しした」と述べた。「少なくとも1度は利下げがある確率は、利上げの確率を大きく上回った」と続けた。

  中東での戦争は世界市場を一変させ、インフレ高進と同時に景気が減速するスタグフレーションへの懸念を引き起こした。紛争はエネルギー供給に不可欠な輸送ルートを寸断し、原油価格は高騰し、3月の株式市場は2022年以来の軟調に向かっている。

  トランプ米大統領はホルムズ海峡が再開されないなら、イランの発電所と油田、カーグ島、淡水化プラントを破壊すると脅した。前日には停戦条件15項目の「大半」にイランが同意したと記者団に語っていた  

  エドワード・ジョーンズのジェームズ・マッキャン氏は「市場がポジティブなモメンタムを維持するには、合意に向けて交渉が着実に進んでいると、もっと明確に示唆されなくてはならないだろう」と述べた。

  フォレックス・ドット・コムのファワド・ラザクザダ氏は「停戦についてもっと具体的な成果や外交面での進展がない限り、支配的なトレンドに反する短期的な変動は慎重に扱うべきだ」と述べた。

外為

  外国為替市場では円が対ドルで堅調を維持。片山さつき財務相の発言後、円は一時1ドル=159円33銭まで上げた。片山財務相は原油先物市場の変動が為替に波及しているとした上で、強い緊張感を持って立ち向かうとの見解を示した。

為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1222.403.230.26%
ドル/円¥159.70-¥0.61-0.38%
ユーロ/ドル$1.1459-$0.0049-0.43%
米東部時間16時37分

  日本時間には円が対ドルで一時160円46銭まで下げ、2024年7月以来の安値を付けた。三村淳財務官は円のさらなる下落を抑えるため「断固たる措置」が必要になると述べ、市場をけん制した。

  みずほ銀行のシニアストラテジスト、中島將行氏は「日本の通貨当局は一貫して、画一的な法則性を避け、その時その時の市場の状況に応じて裁量的に判断することを好む方針だ。予測可能性を意図的に抑えるスタンスを取っている」とリポートで説明した。

  ドル指数は上昇し、月間ベースで3%近い値上がり。中東の紛争に起因するエネルギー価格ショックが背景にある。

  主要10通貨に対するドルの動きを示すブルームバーグ・ドル・スポット指数は、このままで行けば月間ベースで2022年9月以来の上昇率になる。ドルは月末および四半期末の資金フローにも支えられた。

  スペクトラマーケッツのブレント・ドネリー社長はドル相場について「ユーロ・ドルと豪ドル・米ドルがもう一度売りを浴びるのを見届けてから、すべて利益を確定するつもりだ」と話す。「月末のドル需要がある程度あるとは思うが、それがドルの天井になる可能性もある」と続けた。

米国株

  株式相場は続落。先週までは戦争起因の売り浴びせで、週間ベースで2022年以来の長期連続安だった。米軍部隊がイランに到着し、戦争が激しさを増すとの警戒が広がった。

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数6343.72-25.13-0.39%
ダウ工業株30種平均45216.1449.500.11%
ナスダック総合指数20794.64-153.72-0.73%

  S&P500種は朝方には一時0.9%上昇していた。昨年8月以来の安値で引け、調整相場入りとされる水準まで1%未満に迫った。

  モルガン・スタンレーのマイケル・ウィルソン氏はリセッション(景気後退)や利上げを伴わなかった過去の「成長懸念」の事例を挙げ、株価下落は「終盤に近づきつつある」ことを示す証拠が増えていると指摘した。

  Eトレード・ファイナンシャルのクリス・ラーキン氏は過去の例に基づき、地政学的なショックが市場に与える打撃は比較的短い期間に限られる傾向があると指摘。しかしながら戦争の出口が不透明な状況では、現在のボラティリティーの先に何があるか見極めるのは難しいと述べた。

  ウルフ・リサーチのクリス・セニェック氏は「市場は引き続きニュースの見出しに振り回されている。イラン戦争の緊張緩和と緊張激化に関し、トランプ政権からは相反するメッセージが発信されている」と指摘。「従って、われわれはディフェンシブな姿勢を維持している」と述べた。

  米株式市場の投資エクスポージャーが先週縮小されたため、短期的な見通しの分布は改善したとゴールドマン・サックス・グループのストラテジストチームは分析。4月中旬に発表が本格化する1-3月(第1四半期)決算で、見通しに透明性が加わるほか、中東での紛争が与える影響もはっきりしてくるだろうと続けた。

  同チームを率いるベン・スナイダー氏は、S&P500種採用企業が今年、12%増益という好成績を上げると予想しているが、深刻な波乱が長期化しないことを前提としている。

Powell Sees Tension Currently Between Fed’s Two Mandates0:58動画:ハーバード大学のイベントで登壇したパウエルFRB議長

原油

  原油相場は3営業日続伸。WTI先物が1バレル=100ドルを上回って取引を終えた。米国とイスラエルがイランを攻撃した後、終値でこの大台を超えたのは初めて。

  WTI先物5月限は前週末比3.24ドル(3.25%)高の102.88ドルと、2022年7月以来の高値で引けた。100ドルはトレーダーら市場参加者が心理的節目とみる水準だ。

  エンベラスの石油・ガスアナリスト、カール・ラリー氏は「石油トレーダーが和平協議の有無にかかわらず、上昇方向のみを見据えていることを示唆している可能性がある」と指摘。

  「市場では下方向より上方向のリスクの方が大きいとの認識が広がっており、短期的には原油相場が下落に転じるのを見込む前に、最悪のシナリオを織り込む展開となっている」と述べた。

  トランプ大統領は中東での紛争終結に向けて合意に達する可能性があるとする一方、イランのエネルギーインフラを攻撃すると示唆した。  

  北海ブレント先物は変動の大きい展開で、5月限は21セント(0.2%)高の112.78ドルで終了。日中は小幅安に転じる場面もあった。ただ、5月限は31日に期限を迎える。中心限月の6月限は3日続伸で引けた。  

  マーティン・ラッツ氏らモルガン・スタンレーのアナリストは「ホルムズ海峡が事実上封鎖されている影響は、戦争開始から4週間が経過し、石油市場全体に波及しつつある」と指摘。「累積的な供給損失は、最終需要市場にも影響を及ぼすほどの大きさになっている」と述べた。

  金スポット相場は続伸。中東紛争がいつまで続くか明確な見通しを待つムードではあるが、押し目買いが相場を支えた。

  スポット価格は一時、前週末比1.9%上昇し、1オンス=4580ドルを超えた。原油価格の上昇が続く中でも堅調さを示した。

  イラン戦争に伴うインフレ懸念の高まりを背景に、金相場はこの1カ月、大幅に下げていた。しかし、現在の価格水準に妙味があるとみて、一部の投資家は買いに入った。

  パウエルFRB議長の発言を受けて、年内利下げ観測が再び市場に織り込まれたことも金相場を支えた。利息の付かない金にとっては高金利環境が逆風となる。

Source: Bloomberg

  過去数年にわたり、各国の中央銀行による金購入の拡大が、金相場の上昇を支える一因となってきたが、トルコ中銀はイラン戦争開始後の2週間で約60トンに上る金を売却・スワップし、こうした流れに逆行した。同中銀の最新データで分かったもので、減少分は80億ドル(約1兆2800億円)余りに相当する。

  ヘレウス・プレシャス・メタルズのトレーダー、マーク・ローファート氏は金相場について、「ごく短期的な値動きは米外交政策に関する発表に左右される可能性がある。だが、1月に史上最高値まで急騰した後の値固め局面にあることから、当面のトレンドは弱気のままだろう」とリポートに記した。

  金スポット価格はニューヨーク時間午後2時24分現在、前週末比21.01ドル(0.5%)高の1オンス=4515.10ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物6月限は同33.20ドル(0.7%)高の4557.50ドルで終了した。 

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