「現役世代の手取りを増やす」。国民民主党が一昨年の総選挙以来掲げてきたスロガーガンには、閉塞感に陥っていた日本の現状を打破する力があった。103万円の壁突破や、ガソリン暫定税率の廃止、大胆な投資減税に自動車の環境性能割を恒久的に廃止する。こういった政策は国民の支持を得た。個人的には個別具体的な政策の推進が、健全財政重視の自民党政治に風穴を開ける力になったと思う。だから国民民主党に対する期待感が、すべからく国民の間に浸透したのだ。ところが、1月総選挙で自民党が大勝した途端、国民民主党と玉木代表の影響力が、大袈裟に言えば影も形もなくどこかえ吹っ飛んで消えてしまったように見える。どしてだろうか。玉木代表は挨拶で次のように述べている。「従来の自民党ではできなかった政策を高市内閣が取り入れたことで政策の同質化が進み、少数与党と交渉して政策を実現していく手法に限界が出た」と。ここに個人的には玉木代表の限界を感じるのだ。

確かに自民党は衆議院で316議席とというとんでもない勢力に膨らんだ。数の上では敵の勢力の影すら見えない一強になった。しかしこれは表面上の数字でしかない。高市政権が掲げる「責任ある積極財政」は自民党を中心とした政権の基盤勢力の中で依然として少数派に過ぎない。高市政権は実質的には少数派政権であるといっても言い過ぎではに気がする。その証拠に政権基盤の中核的存在である財務省は水面下で、食料品にかかる消費税減税の廃止に向けて動き始めているととの説も、一部で囁かれている。事実かどうか定かではないが、日経新聞が食料品にかかる消費税減税について経営者は66%が反対との調査結果を発表している。これは大企業経営者100人を対象に行ったアンケート調査だが、消費税反対の印象操作が動きはじめたことを意味している。これはほんの一例に過ぎない。水面下では国民会議の出席者を対象に財務省の、懇切丁寧な“ご進講”も始まっている。国民民主党の政策は高市政権の誕生によってたまたま実現したに過ぎない。

自民党内中道派や官僚、主要メディア、学者、評論家など日本の政治を司る主流派は依然として健全財政派が多数を占めている。「責任ある積極財政」の推進は少数派が多数派に挑む命懸けの政策推進でもある。ここを玉木氏は誤解しているようだ。だから今後の活動方針として「最優先の目標として、来年の統一地方選挙終了までに、現在約340名の地方議員を700名へ倍増させます」とぶち上げる。地方議員の増強に力を入れるのが悪いといっているわけではない。手取りを増やす政策を実現するためにも、積極財政に対する評価を明確にすべきだと言いたいのだ。「国民民主党は結党から6年目に入りました。この節目に、改めて、国民民主党は、何のために存在するのか。誰のために政治をするのかを見つめ直します」と表明する。そのために「未来先取りチーム」を立ち上げると宣言する。もどかしい限りだ。玉木代表はまず代表個人として積極財政に是か非か、個人の見解を明確にすべきではないか。「年内を目途に、党の綱領と政策を総点検してアップデートする」ともいう。アップデートが必要なのは玉木氏個人のような気がするのだ。