- NY原油が95ドルを下回って終了、年内の米利下げ観測が再浮上
- 円は一時157円89銭まで上昇、停戦違反とのイランの主張で伸び悩む

Rita Nazareth
8日の米金融市場では、株式が上昇する一方で原油は約6年ぶりの大幅下落となった。米国とイランが停戦合意に達したことを受け、楽観ムードが広がった。
リスク選好の急速な回復により、S&P500種株価指数は2.5%上昇した。ニューヨーク原油相場が1バレル=95ドルを下回って終えたことでエネルギー危機への懸念が和らぎ、年内の米利下げ観測が再浮上した。米国債は方向感に欠ける動きとなった。安全資産としての需要が後退する中、ドル指数は年初来の上昇分を失った。
| 株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
|---|---|---|---|
| S&P500種株価指数 | 6782.81 | 165.96 | 2.51% |
| ダウ工業株30種平均 | 47909.92 | 1325.46 | 2.85% |
| ナスダック総合指数 | 22634.99 | 617.14 | 2.80% |

米株式市場の「恐怖指数」として知られるシカゴ・オプション取引所(Cboe)ボラティリティー指数(VIX)はイラン戦争前の水準に低下した。燃料価格急騰への懸念から売り込まれていた航空株は急騰した。
トランプ米大統領がイランに対し停戦とホルムズ海峡の再開を求めた期限の約90分前に、2週間の停戦が発表された。地域的な戦闘が続いているとの報道もあるが、この合意は世界的な景気悪化への懸念を和らげる効果をもたらした。
フォレックス・ドット・コムのファワド・ラザクザダ氏は「マクロ経済の典型的な動きだった。リスク資産には買いが入り、原油は下落し、ドルは安全資産としてのプレミアムのかなりの部分を失った」と指摘した。
ホワイトハウスはパキスタンの首都イスラマバードで開催されるイランとの協議について、バンス米副大統領が代表団を率いると発表した。
イランの準国営ファルス通信は、イスラエルによるレバノン攻撃を受け、ホルムズ海峡の石油タンカー航行が停止されたと報じた。ただ、米国株は底堅く推移した。
ラザクザダ氏は「原油価格がさらに落ち着き、ホルムズ海峡が再び開通して、2週間の停戦期間後も開いた状態が続くことを投資家は期待している」と述べた。

ネーションワイドのマーク・ハケット氏は「停戦は明確な好材料だが、問題が解決したわけではなく、不確実性が消えたわけでもない」と指摘。「注目すべきは、圧力が和らぐと相場がいかに急速に反転したかだ。ポジションがこれほど偏ると、ちょっとしたきっかけで反転が起きる」と述べた。
エマニュエル・コー氏率いるバークレイズのストラテジストは、戦争がエスカレートするリスクに備えていたヘッジファンドが持ち高を解消する中、株式市場は「強力なショートスクイーズ」に見舞われる可能性が高いと指摘した。
ゴールドマン・サックスのトレーディング部門によると、ヘッジファンドは米国株に対する弱気の持ち高を解消する動きを急いでおり、それは2020年3月のコロナ禍による急落後に反発した局面以来の速いペースとなっている。
CFRAリサーチのサム・ストーバル氏によると、一時的な停戦により、世界の投資家は長期的な戦闘停止を見越してポートフォリオの再構築やけん引セクターの変更を検討し始めることが可能になった。
同氏は、1990年のイラクによるクウェート侵攻に伴うリセッション(景気後退)と弱気相場の後に市場が示した反応が参考になる可能性があると語った。原油価格がピークをつけてから3カ月後に、S&P500種は12.4%上昇した。
ストーバル氏は、その際「主導するセクターがディフェンシブ銘柄から景気敏感株へと移った」と指摘。「停戦が維持されれば、今回も同様のローテーションが起こる可能性がある」と述べた。
米連邦準備制度理事会(FRB)が午後に公表した3月17-18日開催分の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨によると、大部分の当局者は戦争が労働市場に悪影響を及ぼし、利下げが必要となる可能性を懸念していた。一方で、多くの当局者がいずれ利上げが必要となり得るインフレリスクに言及した。
外為
外国為替市場ではドルが下落。年初来の上昇分を失った。イランと米国の間で停戦が成立し、原油価格が急落、安全通貨としての地位が弱まった。
ブルームバーグ・ドル・スポット指数は一時1.1%下落し、1月以来の大幅な下げとなった。ドルは主要16通貨すべてに対して下落した。
円は対ドルで一時、1ドル=157円89銭まで上昇した。ただ、イラン側が米国との停戦合意が破られたと主張するなど状況は不安定で、円は158円台後半まで伸び悩んだ。
| 為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
|---|---|---|---|
| ブルームバーグ・ドル指数 | 1201.40 | -9.23 | -0.76% |
| ドル/円 | ¥158.60 | -¥1.02 | -0.64% |
| ユーロ/ドル | $1.1661 | $0.0066 | 0.57% |
| 米東部時間 | 16時49分 |
今回の動きにより、ドルが戦時下で積み上げてきた上昇分の大半が失われた。ドルは比較的安全な資産としての魅力に加え、米国が石油の純輸出国であることからエネルギーショックに対して経済が相対的に強いとの認識に支えられていた。
ロード・アベットのポートフォリオマネジャー、リア・トラウブ氏は、「今回は純粋な安心感による上昇であり、特に先週初めに(中東情勢が)エスカレートした後ではなおさらだ」と述べた。「戦争やエネルギーショックが偏って影響を及ぼしていることを踏まえれば、米国以外の市場で相場がより大きく上昇しているのは十分に理解できる」と指摘した。

短期金融市場では、米連邦準備制度理事会(FRB)が今後数カ月で利下げに踏み切るとの見方が強まった。利下げ観測は中東情勢を巡るインフレ懸念によって一度は後退していた。現在、年内に0.25ポイントの利下げが実施される確率はおよそ3割強となっている。
こうした期待は、原油価格の下落が続けばさらに強まる可能性がある。
マネックスの外為トレーダー、アンドリュー・ハズレット氏は「停戦のニュースに加え、エネルギー危機への懸念後退を受けて、ドルには強い下押し圧力がかかっている」と述べた。「今後数日間の最大の焦点は、『ホルムズ海峡を通じた海運がどの程度回復するのか、そしてそれが持続的な緊張緩和につながるのかどうか』という点だ」と指摘した。
米国債
米国債相場は上昇後に伸び悩む展開。日中を通じて米国とイランの停戦を巡る楽観が後退する中で上値が重くなった。イラン当局者が停戦合意が破られたと主張した後、その動きは一段と加速した。
| 国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
|---|---|---|---|
| 米30年債利回り | 4.89% | 2.1 | 0.44% |
| 米10年債利回り | 4.30% | 0.6 | 0.14% |
| 米2年債利回り | 3.79% | 0.4 | 0.11% |
| 米東部時間 | 16時49分 |
10年債入札では需要が改善し、中東での戦争を背景に外国勢が米国債を回避しているとの懸念が和らいだ。
落札利回りは入札前取引の水準をわずかに上回り、需要がおおむね予想通りだったことを示した。7日の3年債入札でも強い需要があり、戦争によって買いが手控えられ、借り入れコストが押し上げられるとの懸念は後退した。今週は30年債の入札も控えている。
3月前半に実施された3、10、30年債の入札では、外国勢の落札比率が低下した。米連邦準備制度理事会(FRB)のデータによると、外国の公的機関や国際機関向けに保管されている米国債残高は2月中旬以降に減少している。この両方が考慮され、戦争が海外からの米国債需要を損なったとの見方が強まっている。これは直接的な影響か、あるいは戦争によって引き起こされた原油価格の上昇を通じた間接的な影響による可能性がある。
ナティクシスの米金利戦略責任者、ジョン・ブリッグス氏は「3月の入札データは1カ月分に過ぎず、この説を裏付けることも否定することもできないが、外国向け保管残高の減少は、その可能性を示唆している」と指摘した。さらに、今週の入札結果から結論を導くのは時期尚早だと付け加えた。

原油
原油先物相場は大幅安。米国とイランが2週間の停戦で合意したのに続き、ホワイトハウスが米国とイランが直接協議を行うと発表したことが背景にある。
ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物5月限は前日比18.54ドル(約16%)安の1バレル=94.41ドルで終了。北海ブレント先物6月限は14.52ドル(約13%)安の94.75ドルで引けた。
現時点で米・イラン停戦合意後もホルムズ海峡の実質封鎖は続いているもようだ。午前の取引では、イスラエルによるレバノン攻撃を受け、ホルムズ海峡の石油タンカー航行が停止されたと、イラン準国営ファルス通信が報道。これを受けて、相場は下げ幅を縮めた。
市場関係者は海上輸送の要衝である同海峡がどの程度迅速に再開されるのかに注目している。
戦争終結への期待が高まる一方で、中東では散発的な戦闘が続いている。イスラエルがレバノンで軍事作戦を継続しているほか、イランによる湾岸諸国への攻撃も止まっていない。
停戦合意の対象にレバノンが含まれるかを巡っては、イランと米・イスラエル側の間で見解の相違がある。またイランのガリバフ国会議長は、停戦合意の3項目で違反があったとXに投稿した。
英ロイズ市場協会の海運・航空部門責任者、ニール・ロバーツ氏は停戦は歓迎されるものの、「ペルシャ湾岸地域の貿易がすぐに再開される可能性は極めて低い」と指摘。「根本的な緊張が何一つ解消されておらず、この地域は依然として高いリスクにさらされている」と述べた。
一方、米エネルギー情報局(EIA)の週間統計によると、石油製品在庫は主要カテゴリー全てで大幅に減少した。メキシコ湾岸の留出油在庫は2024年9月以来の低水準となり、ガソリン在庫も約16年ぶりの水準に落ち込んだ。中東産石油の供給混乱による影響を相殺するため、足元では米国の供給に対して期待が高まっている。

金
金スポット価格は上昇。ただ、イランのガリバフ国会議長が米国との停戦合意が破られたと主張し、上げ幅を削った。
アジア時間には一時3.2%上昇の1オンス=4856.81ドルまで買われたが、発言を受けて下げに転じる場面もあった。
この日はイラン戦争開始以降、金相場と連動している米国株が大幅高となったほか、原油急落に歩調を合わせるようにドルが下落。ドル建てで取引される金の割高感が薄れた。原油下落でインフレ懸念が和らぎ、年内の米利下げ観測が再び高まった。金は利息を生まないため、金利低下は追い風となる。
スポット価格はニューヨーク時間午後3時27分現在、前日比3.69ドル高の1オンス=4710.20ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物6月限は、前日比92.50ドル(2%)高の4777.20ドルで引けた。

原題:Stocks Gain as US-Iran Truce Deal Spurs Oil Plunge: Markets Wrap(抜粋)
Dollar Erases 2026 Gains as Iran Ceasefire Saps Haven Demand (2)
April’s First US Treasury Auctions See Improved Demand (1)
Treasuries Drift Lower Over US Session, Wipe Out Overnight Gains
Bond Rally Fades as Iranian Official Says Ceasefire Violated
Oil and Gas Prices Plunge After US, Iran Agree to Ceasefire Deal
Gold Pares Gains After Iran Says Ceasefire Deal With US Violated