• WTI原油は97ドル下回って終了、国債利回りは上昇-円は159円台前半
  • トランプ氏、決裂なら攻撃再開と示唆-協議開始前にイランをけん制

Rita Nazareth

10日の米株式市場ではS&P500種株価指数が小反落。米国とイランの協議を控えて、原油価格が乱高下する中、株式は不安定な動きとなった。交渉の行方が、脆弱な停戦の先行きを左右するとみられている。

  S&P500種は週間ベースでは昨年11月以来の大幅高となった。ただ、7日続伸の後を受けて上昇の勢いがなくなった。序盤の上昇は、予想通りとなったインフレ指標に支えられていた。変動の激しい取引の中で、ニューヨーク原油先物は1バレル=97ドルを下回って終了。米国債利回りは上昇し、ドルはもみ合いに終始した。

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数6816.89-7.77-0.11%
ダウ工業株30種平均47916.57-269.23-0.56%
ナスダック総合指数22902.8980.470.35%
Nasdaq 100 Sinks Into Correction As Big Tech Keeps Falling
S&P500種は小反落Source: Bloomberg

  トランプ米大統領はパキスタンで週末に予定されている米・イランの直接協議を前に、脆弱(ぜいじゃく)な停戦を恒久的な和平に転換しようと、イランへの圧力を強める姿勢を示した。同氏はニューヨーク・ポスト(NYP)紙に対し、協議が決裂した場合に新たな攻撃を仕掛けるため、米国の艦船に「最高の弾薬」を補充していると発言した。

  2週間の停戦合意は中東全域でおおむね維持されているが、ホルムズ海峡の封鎖継続や、レバノンでの親イラン民兵組織ヒズボラとイスラエルの戦闘が協議を複雑化させる可能性がある。

  ベテランのストラテジスト、ルイス・ナベリエ氏は「短期的な焦点は引き続きイランで何が起きるかだ。事態が再び悪化し、ミサイル攻撃が再開されれば、再び下方向での荒い値動きに見舞われるだろう」と語った。

  イラン戦争によるエネルギー高騰を反映した最初のインフレ統計である消費者物価指数(CPI)は前月比で2022年以来の大幅な伸びとなったものの、食品とエネルギーを除くコアインフレは比較的落ち着いた水準にとどまった。

  アネックス・ウェルス・マネジメントのブライアン・ジェイコブセン氏は「エネルギー価格の高騰がコアインフレに波及している兆候はまだ見られない。当面、企業が衝撃の大部分を吸収するため、その影響が表れるには時間がかかるかもしれない」と述べた。

  トレードステーションのデービッド・ラッセル氏は、世界的な情勢や堅調な利益成長を踏まえ、現在のインフレ指標を管理可能な範囲と受け止め、エネルギー価格の圧力も和らぐと見込む投資家もいるかもしれないと指摘。「ただ、改善にはホルムズ海峡を巡る危機の解決が鍵となる」と付け加えた。

  ベッセント米財務長官とパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は、アンソロピックの最新人工知能(AI)モデルを巡り、米銀大手の最高経営責任者(CEO)を招集して緊急会合を開催した。

外為

  外国為替市場ではドルが下落。コアCPIの前年同月比での上昇率が予想を下回り、連邦準備制度理事会(FRB)への金融引き締め圧力が和らいだことを受けてドル売りが優勢になった。ドル指数は週間では1月23日終了週以来の大幅安となった。

  円は対ドルで下落。おおむね1ドル=159円台前半で推移したが、CPI発表直後に158円94銭まで上げる場面もあった。

為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1198.77-0.83-0.07%
ドル/円¥159.28¥0.320.20%
ユーロ/ドル$1.1730$0.00310.26%
米東部時間16時43分

  クレディ・アグリコルのバレンティン・マリノフ氏はドルについて、「イラン戦争の開始以降、全般的に名目金利面で不利な状況にある」と指摘し、「この日のCPI統計がその状況をさらに悪化させる可能性がある」と述べた。

  さらに「為替市場の値動きは、週末に予定されている米国とイランの協議がなお全てだ」と話した。

  三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の外為ストラテジスト、リー・ハードマン氏はリポートで、中東で攻撃が続いていることは「長期的な和平合意への道のりにはなお大きな障害があり、ホルムズ海峡を通るエネルギー供給がどの程度の速さで再開されるかもまだ明確ではないとのリスクを浮き彫りにしている」と指摘「こうした不確実性が残る中では、高ベータ通貨の短期的な一段の上昇が抑えられる可能性がある」と語った。

米国債

  米国債相場は下落。イラン戦争に起因するインフレ加速と、さらなるエスカレーションの可能性を背景に、年内の米利下げ観測が後退し、売りが出た。

  CPI発表後から利回りは上昇。トランプ大統領が週末の協議が不調に終われば戦争をエスカレートさせる可能性に言及すると、さらに上昇した。

国債直近値前営業日比(bp)変化率
米30年債利回り4.91%2.60.54%
米10年債利回り4.32%4.00.93%
米2年債利回り3.80%3.10.81%
米東部時間16時43分

  8日の停戦合意をきっかけに原油価格が数年ぶりの高値近辺から下落。これを背景に米国債は週間ベースで上昇したが、この日の下げにより上げ幅を縮小した。

  短期金利先物市場では、年内に0.25ポイントの利下げが実施される確率は4分の1未満と、CPI発表前に比べてやや低下した。一方、消費者マインド指数の悪化はインフレ指標の影響を相殺した。

  アリアンツ・インベストメント・マネジメントのポートフォリオマネジャー、チャーリー・リプリー氏は「FRBは年内、金利を維持するとみているが、ホルムズ海峡での商業輸送の再開やエネルギー価格の低下が見られなければ、短期的にはインフレ圧力がより大きな問題になるだろう」と述べた。

原油

  原油先物は下落。米国とイランの直接交渉を控え、商いが低調な中で不安定な値動きとなった。

  米ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物5月限は前日比1.30ドル(1.3%)安の1バレル=96.57ドルで終了。北海ブレント先物6月限は前日比0.72ドル(0.75%)安の1バレル=95.20ドルで終えた。いずれも週間では約13%下落した。

  原油相場はイラン戦争開始以降、極めて不安定な状態が続いており、価格は依然として戦争前の水準を30%余り上回っている。市場の関心は停戦がどの程度持続するか、ホルムズ海峡の再開につながるような恒久的な和平が実現するかに移りつつある。海上輸送の要衝である同海峡の通航は今も、イランに関連する船舶にほぼ限られている。

  CIBCプライベート・ウェルス・グループのシニア・エネルギー・トレーダー、レベッカ・バビン氏は「ホルムズ海峡経由の供給量に関する現実が再び意識されている。依然として正常化からは程遠く、短期間で急回復する公算は小さい」と述べた。

  また、すでにタンカーに積み込まれたロシア産原油の購入を容認する制裁免除措置を米国が延長するかどうかにも注目が集まっている。事情に詳しい関係者によると、燃料不足が顕在化しているインドやフィリピンなど複数のアジア諸国が、免除措置の更新を米財務省に求めている。現在の措置は11日に期限を迎える。

  金スポット相場はもみ合い。週末に米国とイランの直接協議を控えるなか、脆弱(ぜいじゃく)な停戦合意の行方を巡って売り買いが交錯した。

  週間では3週連続のプラスで、約1.8%上昇した。

  足元では、世界有数の金購入主体が保有を積み増している兆候が出ており、相場を支えている。ポーランド中央銀行の総裁は金準備を700トンまで引き上げる目標を維持していると明らかにした。中国も価格下落を好機と捉え、3月に約5トンを追加購入。月間の購入額としては約1年ぶりの大きさとなった。

  ANZ銀行は最近の調整局面がさらなる積み増しを促すとみており、今年の中銀による購入は約850トンに達すると予想している。

  スポット価格はニューヨーク時間午後1時57分現在、前日比5.84ドル安の1オンス=4761.05ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物6月限は、前日比30.60ドル(0.6%)安の4787.40ドルで引けた。

原題:US Stocks Halt Rally at End of Best Week in 2026: Markets Wrap(抜粋)

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