佐川宣寿前理財局長の証人喚問が実施された。結果はきょうの朝刊各紙が詳しく報じている。全部目を通したわけではないが、個人的には想定通りの結果だった。これに対して毎日新聞は「『真相解明ほど遠い』財務省内からも佐川氏批判」と、佐川氏の証言に批判的な記事を書いている。中身に多少違いはあるものの、朝日新聞や日経新聞も地検の捜査を理由とした佐川氏の証言拒否に批判的だ。一方、産経新聞は「喚問前と状況変わらず 真相解明は検察に」(産経ニュース)と国会の調査に限界があることを認め、検察の捜査に真相解明を委ねるべきだとのトーンをにじませている。読売新聞は「『追及の場』なく野党に焦り…予算成立の見通し」とやや野党に批判的な色合いをにじませている。新聞各紙は微妙なところで立ち位置が異なっている。

評論家や学識経験者、コメンテーターの談話も新聞各紙に掲載されている。こちらは圧倒的に佐川氏の証言拒否を批判する論調が多い。西部邁氏ではないが「空気が支配する」マス(大衆)の世界に身を投じた論者は、世論に迎合しない限り自分の立場を維持できないのだろう。世論は圧倒的に佐川氏に非があると見立てている。佐川氏の発言を擁護する論調は全くない。与党が「証言で新しい事実はなかった」と間接的に佐川氏の立場に理解を示した程度である。法律によって証言拒否が担保されているにもかかわらず、証言拒否をなじる資格は一体どこにあるのだろうか。佐川喚問が不発に終わって野党は早速昭恵夫人や昭恵氏付の職員だった谷査恵子氏の証人喚問を求めている。野党の立場も分からないわけではないが、せめて森友問題だけでなく山積するいろいろな問題と同時並行的に処理してもらいたいと願うばかりだ。

証人喚問について筆者は3月18日付けの「今週のポイント」で以下のように書いた。「大胆に予測すれば佐川証人は『大阪地検が捜査中であり、かつ、私自身が検察当局に起訴される可能性があるため、その件に関する答弁は控えさせていただきます』を連発。野党が求める真相の解明はまたもや“不発”。国会の機能不全という“デジャブー”が再現されるだけだろう。出るのは諦めとため息ばかりか」。この予想通りの結果になった。証人喚問に期待する識者の認識がどこかでずれている気がする。それ以上にマスに寄り添うことだけを狙いとした昨今のメディアの論調に大いなる疑問を感じている。今朝目が覚めたら中国の習近平主席と北朝鮮の金正恩委員長の首脳会談が行われたことを中国が認めた。時代は激しく動いている。“忖度”に固執する政治とメディアの方が異常に思える。