【平壌時事】北朝鮮は9日、建国70年を迎え、平壌の金日成広場で軍事パレードを行った。6月の米朝首脳会談以降、最初の軍事パレードとなった。ただし今回は、過去のパレードで「核抑止力」として誇示していた大陸間弾道ミサイル(ICBM)などは公開せず、非核化交渉を続けるトランプ米政権に配慮を示した。

軍事パレードには、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長や中国共産党序列3位の栗戦書全国人民代表大会(全人代)常務委員長(国会議長)らが出席。手を取り合って聴衆の前に姿を現し、「後ろ盾」とされる中国との友好関係を印象付けた。

注目された正恩氏の発言はなく、北朝鮮序列2位の金永南最高人民会議常任委員長が演説し、「金正恩同志の指導により、政治と軍事、経済や文化など全ての分野で大変革を成し遂げ、偉大な繁栄の時代を迎えた」と明言。対米批判や核・ミサイル開発には言及することなく、正恩氏が重視する「経済建設」を進めていく考えを強く訴えた。

北朝鮮は2月、創設70年を記念した朝鮮人民軍創建日(建軍節)に軍事パレードを実施。この時は、昨年11月に発射し、「米本土全域を攻撃できる」と主張する新型ICBM「火星15」や日本上空を通過した中距離弾道ミサイル「火星12」などを公開した。

北朝鮮建国70年を迎え、金日成広場で行われた軍事パレード=9日、平壌

だが、今回は各種弾道ミサイルは姿を見せなかった。米国との対決姿勢を控えた形で、非核化交渉への影響や国際社会でのイメージ悪化を考慮したとみられる。国営の朝鮮中央テレビはパレードの生中継をしなかった。

9日夜には平壌市内のメーデースタジアムで「輝く祖国」と題し、5年ぶりとなる大規模なマスゲーム・芸術公演を開催。正恩氏も李雪主夫人を伴い、栗氏らとともに観覧した。この公演でも対米批判や核開発に絡む内容は封印され、4月の南北首脳会談で正恩氏と文在寅韓国大統領が握手をした映像が流されるなど融和ムードを前面に押し出した演出となった。