• 株価やファンド、投資信託のポジションは金融株敬遠の継続示唆
  • 長年の超低金利政策も大きく影響か、テクノロジー株の後塵拝する

あらゆる傷は時がたてば癒えるものかもしれないが、米リーマン・ブラザーズ・ホールディングスの破綻から10年が過ぎても、銀行に対する投資家の信頼感は十分に回復したとは言えない。

世界金融危機の引き金になったと広く信じられているリーマン破綻から、ちょうど10年となる今週。株価やファンドのポジションのデータは、金融セクターを敬遠する傾向が消えていない状況を示唆する。

S&P500種株価指数を構成する主要業種別指数で、弱気相場から完全な立ち直りを見せていない唯一の指数が金融株だ。2007年の高値を約8%下回っている。6月末時点でヘッジファンドに最も嫌われた業種だったほか、投資信託も持ち分を5年ぶり低水準まで減らした。ゴールドマン・サックスのデータが示した。

ファースト・アメリカン・トラストのジェリー・ブラークマン最高投資責任者(CIO)は、「センチメントに関して言えば、銀行にとって失われた10年だろう」と話した。

S&P500種が値上がりし、07年の高値を約80%上回って取引される現在、かつて市場全体の時価総額の5分の1余りを占め一大セクターだった金融株が、今はテクノロジー株の後塵を拝している。高リスクの事業を削減し流動性に富む資産の保有を求める規制強化により金融機関はショックへの耐性に優れるようになったが、利益は落ち込み、融資も伸び悩み、政策金利は過去最低付近で推移と、弱気派には敬遠する理由がそろう。

「ここまでひどい状況になるとは思っていなかった」と語るのは、フェデレーテッド・インベスターズのチーフ株式ストラテジスト、 フィリップ・オーランド氏だ。「米金融当局が政策を正常化させるのにこれほど時間がかかるとは思っていなかった。当局による異例の低金利政策が金融機関の利益を生み出す能力を恐らく損ねた」と付け加えた。

ゴールドマンのデータによると、第3四半期(7-9月)初めの時点でヘッジファンドが金融株に振り向けていた資産の割合は10%と、ベンチマークでの比率を4.5ポイント下回った。昨年は銀行株を選好した投資信託も売りに回り、ポートフォリオに占める金融株の比重は第2四半期に平均して1.1ポイント低下と、11セクター中で最大の落ち込みを示した。

減税による恩恵もあり、銀行や保険会社は今年、利益が26%伸びると予想される。この見通しはS&P500種企業の予想におおむね沿っているが、収入は4.8%増の見込みで、公益や生活必需品を除く全ての業種を下回っている。ブル-ムバーグがまとめたアナリスト予想が示した。

株価収益率(PER)が約16倍で1株当たり純資産倍率(PBR)は1.6倍と、金融株はS&P500種のセクター別で最下位。成長が大ブームの今、投資家にとって割安であるというだけでは十分でない。

サスケハナ・インターナショナル・グループの銀行アナリスト、ジャック・ミシェンコ氏は「金融業は名声を失った」とし、経営大学院の卒業生も「10年から15年前と比べ、ウォール街よりテクノロジー企業を選択する。それと同じだ」と述べた。

原題:A Decade After Lehman Collapse, Investors Still Shun Bank Stocks (抜粋)