NHKの日曜討論を見た。安倍首相と石破候補が向き合って45分間お互いの政策を述べ合った。時間が短かったためか、双方の主張は概要を述べた程度。だがそれが逆に政策の濃度を映す形になり、ある程度は双方の主張が読み取れる格好になっていた。個人的には政策至上主義者である石破氏に期待しているのだが、気になる点がいくつかあった。一つは石破氏が野党のような主張を行っていること。もう一つはあまりにも情緒的な理念にこだわっていること。経済政策でアベノミクスを批判することは当然だとしても、地方創生に軸を起きすぎていて政策のダイナミズムが小さすぎるように感じることだ。一言で言えば与党内で総裁の座を争うにしては大局観が見えない。

 

テレビだから細かいことまで頭に残っているわけではない。テレビの常だが印象しか残らない。そこでNHKのサイトで確認してみたが、個人的に注目していた部分はほとんどカットされている。NHKデスクのニュース判断と私の確認したいことが噛み合っていない。ということで、生放送の時に受けた印象を改めて確認することはできなかった。一方、そうだったのかと改めて確認できたこともあった。ロシアのプーチン大統領の“思いつき発言”についての安倍首相は以下の発言をしている。「プーチン大統領がなぜ、ああいう発言をしたかというと、たまたま中国の習近平国家主席がそばにいたので、かつて中国との領土問題については、平和協定を先に結んで解決したことを思い出したからだ。しかし、『自分は必ずこの問題は解決していく』ということを言っていた。11月、12月の首脳会談は重要な会談になっていく」と。これは現職の総理だから言えること。現職の強みが遺憾なく発揮されている。

 

石破氏はこれに対して「プーチン大統領は周到に計算してあのような発言をしたはず」と言っている。個人的にはこの見解に賛同するが、事実はたしてどうか。問題は「友情と国益とは別」と暗にトランプ大統領との関係を批判したことに対して安倍氏が、「友情があるから批判もできる」と切り返されたことだ。トランプ氏と面識のない石破氏はこういうことを言うべきではなかった。それから、「国民の納得と共感がある政権」「国民の立場に立って、何がいちばんよいのか考えていく」とも言っている。当たり前のことだが政権というのは時に、国民の反対を押し切ってでもやらなければならないことがある。石破氏にその覚悟はあるのだろうか。この主張はあまりにも野党的だ。与党内野党であるとはいえ、本物の野党になる必要はない。地方創生の重要性は否定しないが、もっと具体的で大胆で、次の総裁にふさわしい大局観のある政策を語ってほしい。