昨日の大相撲、休場していた御嶽海が再出場して横綱白鵬に完勝した。立会いから一気に押し切った御嶽海の完勝。「一瞬相手を見てしまった」と反省する白鵬も、相手の気迫になすすべもなく土俵を割った。その前に行われた貴景勝と北勝富士の取り組みも、押し相撲同士が真っ向からぶつかりあう迫真の相撲だった。結果は貴景勝の勝ちだったが、負けた北勝富士にも拍手を送りたい。両取り組みとも、これぞ大相撲という醍醐味がふんだんに詰め込まれた密度の高い相撲だった。こういう相撲を取っていれば大相撲の人気は自然に盛り上がるだろう。そんな気がした。ここまではいいことづくめ。だが、問題は力士個人の努力の裏に隠れて見えない相撲協会の怠慢だ。
個人的に気になるのは御嶽海だ。ヤフーニュースによると、今場所は初日から5連勝と絶好調。それが一転、「6日目、妙義龍戦で左膝付近を負傷した。車いすに乗せられ、病院行き。『左大腿(だいたい)四頭筋腱部分損傷で2週間の安静加療』と診断された。『正直やばい』と本人も覚悟するほどの重傷だったが、驚異の回復力で土俵に戻って来た」とある。名古屋場所で初優勝し、大関がかかった先場所は負け越した。今場所も負け越せば三役である小結陥落となる。大関取りは白紙の状態に逆戻りする。そんな場所である。無理を押して再出場したい気持ちはわかる。昨日勝って勝ち越しまであと2勝。傷が癒えないまま今日も明日も相撲を取るのだろう。横綱に勝ったあと付け人の肩を借り、ビッコを引きながら支度部屋に戻っていく姿が痛々しかった。
相撲協会というのは力士を人間とは見ていないようだ。目先の人気が盛り上がれば力士生命などどうでもいいのだろう。横綱稀勢の里はなぜ引退したのか。過去の教訓は全く生かされていない。相撲界の明日を背負って立つ御嶽海である。再出場したい力士の気持ちを理解した上で止めるべきではないのか。診断は「2週間の安静加療」である。なんとも薄情な協会だ。アジアカップを戦っているサッカー。体調を崩した大黒柱の大迫を3試合連続で休ませている。テニスの全豪オープン。ベスト4入りを目指した錦織は前の試合の激闘が尾を引き途中棄権した。長い目で選手生命を考えれば当然の決断だろう。対する相撲協会。御嶽海の再出場をだれも止めなかった。相撲界は力士を守らず時代に取り残された国技の“幻影”を守ろうとしている。相撲協会に取って相撲はスポーツではないのだろう。力士が可哀想だ。
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