[ワシントン 5日 ロイター] – トランプ米大統領は5日夜、上下両院合同会議で一般教書演説を行った。不法移民の問題は差し迫った国家の危機だと述べ、国境沿いの壁建設を実現すると強調したほか、「党派心によるばかげた調査」を目指す民主党の動きは米国の繁栄に悪影響を及ぼすとけん制した。 

大統領は国境警備を巡り非常事態を宣言することは控え、2月15日の期限までに妥協案で合意するよう与野党双方に呼びかけた。 

「この部屋の大半の人々は過去に壁建設に賛成票を投じたが、適切な壁は一度も建設されなかった。私が実現する」と表明。「単純に言って、壁は機能する。壁は命を救う。協力して妥協し、米国を真に安全にする方法で合意しよう」と訴えた。 トランプ氏が求めている壁建設費用の予算計上には議会民主党が反対してきた。 

大統領は、政権に対する調査を目指す民主党の動きや国外の戦争に米国が関与する可能性などが米経済を脅かすとも警告し、「米国では経済的奇跡が起きている。それを止め得るのは、ばかげた戦争や政治、理不尽な調査だ」と述べた。 

トランプ政権を巡っては、下院の過半数を獲得した民主党が一連の調査を計画しているほか、モラー特別検察官は2016年大統領選へのロシアの介入疑惑やトランプ陣営との共謀の可能性を捜査している。 

トランプ氏は演説で失業率の低さや製造業の雇用増など経済面での実績を強調したが、一段の成長加速に向けた新たな政策には乏しい内容となった。 

また、処方薬の値下げやインフラ改修への1兆ドル拠出などで民主党に譲歩する構えも見せたが、互いに主張を譲らないこれまでの姿勢や2020年米大統領選への警戒感を踏まえると、実際に歩み寄ることが可能かどうかは不明だ。 

トランプ氏は、中国など諸外国との貿易関係をより米国に有利な条件に見直す取り組みをしてきたことも強調。中国との合意は「不公平な通商慣行を終わらせ、米国の慢性的な貿易赤字を削減するとともに、米国民の雇用を守る実質的かつ構造的な改革を盛り込んだものでなければならない」と述べた。 

このほか外交政策では、ベネズエラのマドゥロ大統領の退陣に向けた取り組みを支持する立場を表明したほか、過激派組織「イスラム国」(IS)はほぼ掃討されたとの認識を示した。